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「王妃様に今回、出版のお話をお受けしていただきありがとうございました」
ペンと紙を持った一人の女性記者がやや興奮しながら、前のめりになって私に声をかけた。
ここは宮殿のある庭だ。
色とりどりの花たちに囲まれたここで、お茶を飲みながら私は彼女から取材を受けている。
「いいのよ。どうせ私も退屈していたところだから」
貴族たちの恋物語が本になるという最近の流行りに乗って、どうしてもと私のところにも話が来たのが数日前だ。
本来は王妃の恋物語など公にするものではないとは分かっていたが、今回の私の逆襲の締め括りにはこれがぴったりだと思ったのだ。
「それにしてもこんな刺激的なお話を聞かせていただけるなど、思ってもみませんでしたわ。それにしても王妃様は素敵ですわ」
「ふふふ。ありがとう」
あの後、殿下はすぐに隣国の姫君との仮婚約を破棄し、私と婚姻を結んだのだ。
でも殿下は知らない。私の心の内を。
現実、私にべた惚れのあの人は頭が上がらないでいた。
そして次期国王であるこの子を産んだ私には、大臣やほかの者すらも最早頭は上がらない。
そう、すべては計画通り。
父が望んだ結果ではなく、私が望んだ結果のまま。
この国すらも、私の手の中に……。
「まーた母上は、そんなウソ教えてるんですかー?」
不意に私と記者とのお茶会を邪魔するように、声がかかる。
父親似の青い瞳をした今年十二歳になる私の自慢の息子だ。
私は父が望むように男の子を産むことが出来た。
ただ父が望んだ相手ではないということだけ。
しかし息子はとても意地悪そうな顔をしながら、お茶会に乱入してくる。
「う、嘘など付いてないですけど?」
「途中までは、でしょお母上」
「え、え、え、お、王妃さま!?」
私はむくれた顔を隠すために、扇を広げ口元を隠す。
まったくタイミングがいいというか、なんというか。
「ちゃんと真実を言わないとダメですよ、母上」
「どーせ物語なのですから、全てを真実で埋めなくてもいいでしょ」
「えっと……王妃様?」
困惑した記者を横目に、息子は満面の笑みだ。
まったく、せっかく綺麗にお話がまとまっていたというのに。
しかも私好み、に。
もう。これでは台無しだわ。
「記者さん、本当は母が父の部屋に行った夜、母を見た父が母に一目惚れしたんですよ」
「ま、まぁ。さすが王妃様。本当にお美しいですものね」
「で、その場で父が猛烈に口説き落として、他で決まっていた婚約を破棄させて母に結婚を申し込んだんです」
そう。真実は息子の言う通りだ。
部屋に入った瞬間からすぐに手を握られ、熱烈に殿下から口説かれてしまった。
私の計画では誘惑して、寝取るというのが計画だったのに。
その中、全部思い通りにはならないものね。
だいたい、物語としてなら絶対にさっき話した方がかっこいいと思う。
むーーーーー。
あと少しだったのに。
「でも素敵じゃないですかー。国王様が王妃様にぞっこんだなんて」
「それではダメなのよ。だって私のシナリオとは違うのだもの」
私はぷいっと横に顔を向けた。
せっかくの刺激的ないいお話だったのに、最後の最後が溺愛だなんて。
まぁ、実際悪くはないのも確かだけど……。
「えー、ダメなのですか? 王妃様。とても良いお話だと思うのですが」
「あはははは。母は、照れてるんですよ。自分で一生懸命計画を立てて、堕とそうとしていた父に溺愛されて甘やかされてるってことがバレるのが」
「な、べ、別に私は……」
そう否定したものの、耳まで赤くなっているだろう私の顔を見れば一目瞭然だろう。
もう。だから言いたくなかったのに。
せっかくクールでカッコいい王妃のイメージが台無しよ。
「お、王妃様かわいい」
「も、もう。私は知りません」
「えー。ちゃんと本にさせて下さいよ、王妃様」
「勝手になさい」
ざまぁからの国寝取りの話が、家族にただ従順に従うだけの可哀相な令嬢が国王に溺愛され見初められた話に切り替わったのはもっと後のことだ。
ペンと紙を持った一人の女性記者がやや興奮しながら、前のめりになって私に声をかけた。
ここは宮殿のある庭だ。
色とりどりの花たちに囲まれたここで、お茶を飲みながら私は彼女から取材を受けている。
「いいのよ。どうせ私も退屈していたところだから」
貴族たちの恋物語が本になるという最近の流行りに乗って、どうしてもと私のところにも話が来たのが数日前だ。
本来は王妃の恋物語など公にするものではないとは分かっていたが、今回の私の逆襲の締め括りにはこれがぴったりだと思ったのだ。
「それにしてもこんな刺激的なお話を聞かせていただけるなど、思ってもみませんでしたわ。それにしても王妃様は素敵ですわ」
「ふふふ。ありがとう」
あの後、殿下はすぐに隣国の姫君との仮婚約を破棄し、私と婚姻を結んだのだ。
でも殿下は知らない。私の心の内を。
現実、私にべた惚れのあの人は頭が上がらないでいた。
そして次期国王であるこの子を産んだ私には、大臣やほかの者すらも最早頭は上がらない。
そう、すべては計画通り。
父が望んだ結果ではなく、私が望んだ結果のまま。
この国すらも、私の手の中に……。
「まーた母上は、そんなウソ教えてるんですかー?」
不意に私と記者とのお茶会を邪魔するように、声がかかる。
父親似の青い瞳をした今年十二歳になる私の自慢の息子だ。
私は父が望むように男の子を産むことが出来た。
ただ父が望んだ相手ではないということだけ。
しかし息子はとても意地悪そうな顔をしながら、お茶会に乱入してくる。
「う、嘘など付いてないですけど?」
「途中までは、でしょお母上」
「え、え、え、お、王妃さま!?」
私はむくれた顔を隠すために、扇を広げ口元を隠す。
まったくタイミングがいいというか、なんというか。
「ちゃんと真実を言わないとダメですよ、母上」
「どーせ物語なのですから、全てを真実で埋めなくてもいいでしょ」
「えっと……王妃様?」
困惑した記者を横目に、息子は満面の笑みだ。
まったく、せっかく綺麗にお話がまとまっていたというのに。
しかも私好み、に。
もう。これでは台無しだわ。
「記者さん、本当は母が父の部屋に行った夜、母を見た父が母に一目惚れしたんですよ」
「ま、まぁ。さすが王妃様。本当にお美しいですものね」
「で、その場で父が猛烈に口説き落として、他で決まっていた婚約を破棄させて母に結婚を申し込んだんです」
そう。真実は息子の言う通りだ。
部屋に入った瞬間からすぐに手を握られ、熱烈に殿下から口説かれてしまった。
私の計画では誘惑して、寝取るというのが計画だったのに。
その中、全部思い通りにはならないものね。
だいたい、物語としてなら絶対にさっき話した方がかっこいいと思う。
むーーーーー。
あと少しだったのに。
「でも素敵じゃないですかー。国王様が王妃様にぞっこんだなんて」
「それではダメなのよ。だって私のシナリオとは違うのだもの」
私はぷいっと横に顔を向けた。
せっかくの刺激的ないいお話だったのに、最後の最後が溺愛だなんて。
まぁ、実際悪くはないのも確かだけど……。
「えー、ダメなのですか? 王妃様。とても良いお話だと思うのですが」
「あはははは。母は、照れてるんですよ。自分で一生懸命計画を立てて、堕とそうとしていた父に溺愛されて甘やかされてるってことがバレるのが」
「な、べ、別に私は……」
そう否定したものの、耳まで赤くなっているだろう私の顔を見れば一目瞭然だろう。
もう。だから言いたくなかったのに。
せっかくクールでカッコいい王妃のイメージが台無しよ。
「お、王妃様かわいい」
「も、もう。私は知りません」
「えー。ちゃんと本にさせて下さいよ、王妃様」
「勝手になさい」
ざまぁからの国寝取りの話が、家族にただ従順に従うだけの可哀相な令嬢が国王に溺愛され見初められた話に切り替わったのはもっと後のことだ。
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