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「そ、それはそうだけど」
「ではこちらには落ち度はないはずですね?」
「親切ではなさすぎよ!」
「なぜ私が親切にすると思っているのですか?」
「そ、それは、あなたは所詮侍女じゃないの!!」
「そうですね。私は、あくまでも殿下の侍女にございます。あなたたちの侍女でもなければ、言葉の通じない令嬢たちの子守りは業務に含まれておりません」
「な、あんた!」
よほど腹に据えかねたのか、令嬢の一人が手を振り上げた。
しかし私はその場から一歩下がる。
すると令嬢の手は空を切り、その場によろけてしゃがみ込んだ。
手を出されなかっただけ、マシだと思って欲しいわ。
まったく、最近の令嬢ときたら躾がなってなさすぎね。
私はしゃがみ込んだ令嬢に寄り添うかのようにしゃがみこみ、小さな声で囁きかける。
「貴族令嬢ともあろう方がはしたないですよ? それに、私はこれでも侯爵家の令嬢なんです。こんなことが公になって困るのは、あなたがたのお父様たちではないんですかねぇ。貴族間の暴力事件は、即幽閉ですし」
「な、な、な……」
「さぁ、掃除の邪魔なので、とっとと出て行ってもらえます? お家ごと王都から追い出されたくなければ」
私が侯爵家の令嬢だということも知らなかったのだろう。
ただ、殿下付の侍女であるという時点で身分を考えないというのも、なんと頭が悪い。
底が知れてるというものだ。
「なによ、なんなのよ」
「はぁ」
令嬢はそのまま地べたを這いつくばるように数歩下がった後立ち上がり、泣きながら走り出す。
「ま、待ってください」
つられるように残っていた令嬢たちも、走り出した。
絵面は私がいじめたように見えるが、殿下は基本私には寛容だ。
むしろ先ほどのような令嬢たちを殿下は毛嫌いしている。
だからこそ隣国の姫君との仮婚約が大臣たちのゴリ押しで決まったが、先日から殿下はかなり気乗りしていない。
何せ、騒ぐ令嬢も高飛車な姫君も、みんな殿下の好みではないのだ。
「まったく、君が数時間いないだけで酷い騒ぎだな」
「これは殿下……申し訳ありません」
「いや、シアラのせいではないだろう」
騒ぎが治まったのを見計らった殿下が、私の方へ歩いてきた。
やれやれと言ったように、あまり機嫌が良くないのが見て取れる。
「どうしてこうも令嬢という生き物はうるさいのかな。せっかく君が半休を取っていたというのに」
「私でしたら大丈夫です。いつでも殿下の側に控えさせていただきます」
そう言いながら殿下を見上げれば、殿下は大きなブルーの瞳を細めて嬉しそうに微笑み返してくれた。
「まったく同じ貴族令嬢だと言うのに、こうも違うものとは」
「ふふふ。光栄にございます」
「ところで、父上殿の話とやらは大丈夫だったのかい?」
殿下も父の性格を重々承知している。
どうせまた思い付きでなにかを言われたコトなどお察しだ。
「それが……」
「どうした?」
私はわざと殿下から視線を逸らし、やや視線を落とす。
そしてあくまでもその表情は泣き出しそうな、苦悶を浮かべた表情で。
「シアラ?」
「……殿下……、あの……その件で、夜少しでいいので私にお時間を下さいませんか?」
意を決したように殿下を上目遣い見つめ、手を前で組む。
今までどんなコトがあっても私は殿下に弱音を吐いたり、お願いをしてきたコトなどない。
だからこそ、これは効果的だ。
「もちろんだ。公務が終わる時間に来なさい」
「ありがとうございます、殿下」
本当にありがとうございます、殿下。
そうこれが第一歩。
殿下の性格上、夜まで気になって私のことを考えていてくれるでしょう。
全ては計画通り。小細工もとい、下準備はこれで完璧ね。
「ではこちらには落ち度はないはずですね?」
「親切ではなさすぎよ!」
「なぜ私が親切にすると思っているのですか?」
「そ、それは、あなたは所詮侍女じゃないの!!」
「そうですね。私は、あくまでも殿下の侍女にございます。あなたたちの侍女でもなければ、言葉の通じない令嬢たちの子守りは業務に含まれておりません」
「な、あんた!」
よほど腹に据えかねたのか、令嬢の一人が手を振り上げた。
しかし私はその場から一歩下がる。
すると令嬢の手は空を切り、その場によろけてしゃがみ込んだ。
手を出されなかっただけ、マシだと思って欲しいわ。
まったく、最近の令嬢ときたら躾がなってなさすぎね。
私はしゃがみ込んだ令嬢に寄り添うかのようにしゃがみこみ、小さな声で囁きかける。
「貴族令嬢ともあろう方がはしたないですよ? それに、私はこれでも侯爵家の令嬢なんです。こんなことが公になって困るのは、あなたがたのお父様たちではないんですかねぇ。貴族間の暴力事件は、即幽閉ですし」
「な、な、な……」
「さぁ、掃除の邪魔なので、とっとと出て行ってもらえます? お家ごと王都から追い出されたくなければ」
私が侯爵家の令嬢だということも知らなかったのだろう。
ただ、殿下付の侍女であるという時点で身分を考えないというのも、なんと頭が悪い。
底が知れてるというものだ。
「なによ、なんなのよ」
「はぁ」
令嬢はそのまま地べたを這いつくばるように数歩下がった後立ち上がり、泣きながら走り出す。
「ま、待ってください」
つられるように残っていた令嬢たちも、走り出した。
絵面は私がいじめたように見えるが、殿下は基本私には寛容だ。
むしろ先ほどのような令嬢たちを殿下は毛嫌いしている。
だからこそ隣国の姫君との仮婚約が大臣たちのゴリ押しで決まったが、先日から殿下はかなり気乗りしていない。
何せ、騒ぐ令嬢も高飛車な姫君も、みんな殿下の好みではないのだ。
「まったく、君が数時間いないだけで酷い騒ぎだな」
「これは殿下……申し訳ありません」
「いや、シアラのせいではないだろう」
騒ぎが治まったのを見計らった殿下が、私の方へ歩いてきた。
やれやれと言ったように、あまり機嫌が良くないのが見て取れる。
「どうしてこうも令嬢という生き物はうるさいのかな。せっかく君が半休を取っていたというのに」
「私でしたら大丈夫です。いつでも殿下の側に控えさせていただきます」
そう言いながら殿下を見上げれば、殿下は大きなブルーの瞳を細めて嬉しそうに微笑み返してくれた。
「まったく同じ貴族令嬢だと言うのに、こうも違うものとは」
「ふふふ。光栄にございます」
「ところで、父上殿の話とやらは大丈夫だったのかい?」
殿下も父の性格を重々承知している。
どうせまた思い付きでなにかを言われたコトなどお察しだ。
「それが……」
「どうした?」
私はわざと殿下から視線を逸らし、やや視線を落とす。
そしてあくまでもその表情は泣き出しそうな、苦悶を浮かべた表情で。
「シアラ?」
「……殿下……、あの……その件で、夜少しでいいので私にお時間を下さいませんか?」
意を決したように殿下を上目遣い見つめ、手を前で組む。
今までどんなコトがあっても私は殿下に弱音を吐いたり、お願いをしてきたコトなどない。
だからこそ、これは効果的だ。
「もちろんだ。公務が終わる時間に来なさい」
「ありがとうございます、殿下」
本当にありがとうございます、殿下。
そうこれが第一歩。
殿下の性格上、夜まで気になって私のことを考えていてくれるでしょう。
全ては計画通り。小細工もとい、下準備はこれで完璧ね。
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