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「まだ言うか」

「何度だって言うわ! これが最後だと知ってるから。みんなだって知ってるでしょ? むしろ被害者は私なのに。どうして妹に婚約相手を盗られて、なおかつしてもいないいじめで悪者扱いされなきゃいけないのよ」


 いい加減にして。

 何度このやり取りを繰り返すの。

 頭がおかしくなってしまいそうよ。

 だいたい、私との婚約が不服だったら解消すればよかったじゃないの。

 どうしてわざわざ二股なんてするの?

 その上、都合が悪くなったら私を悪者にするなんて……。

 いつだって、この馬鹿げた劇を起こさないために、私は証人となる親族と共に過ごしてきた。

 しかしこの場において辺りを見渡しても、皆私から顔を背けるだけ。

 関わり合いたくない。

 そうでしょうね。

 信也の家からの援助をうちの一族がもらっているのも知っているわ。

 私がダメになっても、愛理とうまくいけばいい。

 そのためになら、私のことなどどうでもいい。

 知ってたよ。ずっとそうだから。


「もういい加減失望した。がっかりよ、なにもかも。結局誰も助けてくれない。私はこの檻の中から抜け出すことも出来ない」

「檻? なにを言っているんだ?」


 信也の言葉が終わる前に、私は隠し持っていたナイフを彼の胸に突き立てた。

 みんなが固まって誰も動けないでいる。


「きゃぁぁぁぁぁ」


 誰の声なのか、叫び声がこの広にへ響き渡った。

 しかし私は気にすることなく、更に隣で愕然とする愛理にもナイフを刺す。


「あははははは! あー、すっきり。だってこれ、夢なのでしょ?」


 死ぬことがどれだけ苦しくて痛いのか。

 これでわかったでしょう?

 いつも私だけが感じる苦痛など、どうして許せるのだろうか。

 今日この日のためにいろいろ全部準備してきた。


「ねぇ、みんなも同じに逝きましょう? だって私だけを見殺にしてきたんだもの。ずっと、ずーーーーーとだからね、私から死の痛みと恐怖をプレゼントしてあげる」


 無限ループから抜け出せないのなら、私も自分の好きにさせてもらうわ。

 どうせ死ぬのなら、みんな一緒に。

 私は辺り一面に火を付けた。

 幾度死んでも、何をしても、助けてくれない世界など私にはもう必要はない。


「夢の中でずっと殺してあげる。夢じゃない? そんなこと知らないわ。あはははは。次も楽しみ~」


 そう、これが私の今回の答え。
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