20 / 38
019 マヨネーズ怖い
しおりを挟む
「ウマァァァ」
自分でもびっくりするほど大きな声が、厨房の中に響き渡った。
そして私の反応に、見ていたシェフもシェナも喉をならす。
「ミレイヌ様、はしたないですよ」
「だってシェナ、これすごく美味しいんだもの。やだ、涙が出るくらい美味しい」
一度食べ始めると、ぱくぱくと野菜スティックたちは私の胃袋へと収納されていく。
こうなった原因は、他でもなく今作ったばかりのマヨネーズのせいだ。
「こんなに簡単なんだから、もっと早く作っておけば良かったわ」
「それ、ですか?」
「そうそう。マヨネーズよ。調味料の一種ね」
この世界のドレッシングって、油と塩みたいな簡単で少し味気ないものしかない。
確かにそれだと野菜本来の味はしっかりしていて、不味いわけではないのだけど。
それでも昔を思い出すと、いろんなドレッシングが恋しくなる。
ただそんな中でも簡単にレシピなく作れるのが、このマヨネーズだっただけ。
「みんなも食べてみて? あー、でも付けすぎちゃダメよ。辛くなっちゃうから」
私はスティックとなったきゅうりのような野菜の先にちょんちょんとマヨネーズを付ける。
そしてそれを頬張れば、濃厚な旨みと酸味、そしてきゅうりの瑞々しさが口の中に広がっていった。
マヨネーズを付けると、きゅうり特有の青臭さなど全く感じられない。
むしろ瑞々しさがいっそう引き立つように感じられた。
「やっぱりウマー」
「ミレイヌ様、言葉」
「あ、ハイ。すみません……。でもさぁ、本当に美味しいんだよ?」
「それでも言葉はキチンとして下さい。一応、この侯爵夫人なのですから」
「一応って言わないでよー。気にしてるんだから」
「だったら余計に、です」
「……ぅん」
小言を言いつつも、シェナはすでにスティックとなったきゅうりやにんじんたちを口に入れて行く。
見渡せば、シェフたちもいろんな野菜をマヨネーズで試しているようだった。
うんうん。
良かったわ。初めての味でも、中々これを嫌いな人って少ないのよね。
概ねの反応の良さに、私は一人頷いた。
「奥様、これは本当に先ほどのモノたちを混ぜただけですか?」
ただ混ぜただけということに驚きを隠せない料理長が、興奮しながら近づいてきた。
料理長は最近私が作るものたちに、興味津々ね。
まぁ、この世界になかったものを勝手に作ってしまってるのだから、そうもなるか。
「ええ。見てたとは思うけど、卵の黄身と塩、ビネガーを入れてもったりするまで混ぜてから油を少し入れただけよ」
「それだけでこんなに濃厚なソース……マヨネーズなるものが出来るのですね」
「そうそう。簡単でしょう?」
「簡単なのにとても美味しくて驚きました」
小皿に入れたマヨネーズを、料理長はじっと見ていた。
ただ混ぜただけで出来ることなのだけど、作り方や材料がわからないと作れないものね。
料理長が不思議に思うのも無理はないわ。
「美味しいけど、カロリーは高めだから大量には食べちゃダメよ? あとは新鮮ではない卵は生で食べると危ないからそれも注意ね」
取れたてだとしても保管方法などが悪いと、卵は危ないからなぁ。
さすがに私が作ったもので中毒を起こされても困るし。
管理などは徹底してもらわないとね。
「奥様は次から次へと、見たコトもないものばかり作られますが天才なのですね」
「天才だなんて……。ただ食べるのが好きなだけよ」
それに何より、前世の知識があるからね。
ある意味、こういうのってチートって言うのかしら。
そういう用語って、難しくてよく知らないけど。
「おだててもダメですよ料理長。それに奥様。話ながら食べ過ぎです」
シェナに言われて初めて、私はいまだにぱくぱくと食べ続けていることに気づいた。
マヨネーズも自分の食欲も、こわっ。
いくら野菜スティックだからって、マヨネーズ大量に食べてたら本末転倒だわ。
その日、さらに散歩の距離が追加になったのは言うまでもなかった。
自分でもびっくりするほど大きな声が、厨房の中に響き渡った。
そして私の反応に、見ていたシェフもシェナも喉をならす。
「ミレイヌ様、はしたないですよ」
「だってシェナ、これすごく美味しいんだもの。やだ、涙が出るくらい美味しい」
一度食べ始めると、ぱくぱくと野菜スティックたちは私の胃袋へと収納されていく。
こうなった原因は、他でもなく今作ったばかりのマヨネーズのせいだ。
「こんなに簡単なんだから、もっと早く作っておけば良かったわ」
「それ、ですか?」
「そうそう。マヨネーズよ。調味料の一種ね」
この世界のドレッシングって、油と塩みたいな簡単で少し味気ないものしかない。
確かにそれだと野菜本来の味はしっかりしていて、不味いわけではないのだけど。
それでも昔を思い出すと、いろんなドレッシングが恋しくなる。
ただそんな中でも簡単にレシピなく作れるのが、このマヨネーズだっただけ。
「みんなも食べてみて? あー、でも付けすぎちゃダメよ。辛くなっちゃうから」
私はスティックとなったきゅうりのような野菜の先にちょんちょんとマヨネーズを付ける。
そしてそれを頬張れば、濃厚な旨みと酸味、そしてきゅうりの瑞々しさが口の中に広がっていった。
マヨネーズを付けると、きゅうり特有の青臭さなど全く感じられない。
むしろ瑞々しさがいっそう引き立つように感じられた。
「やっぱりウマー」
「ミレイヌ様、言葉」
「あ、ハイ。すみません……。でもさぁ、本当に美味しいんだよ?」
「それでも言葉はキチンとして下さい。一応、この侯爵夫人なのですから」
「一応って言わないでよー。気にしてるんだから」
「だったら余計に、です」
「……ぅん」
小言を言いつつも、シェナはすでにスティックとなったきゅうりやにんじんたちを口に入れて行く。
見渡せば、シェフたちもいろんな野菜をマヨネーズで試しているようだった。
うんうん。
良かったわ。初めての味でも、中々これを嫌いな人って少ないのよね。
概ねの反応の良さに、私は一人頷いた。
「奥様、これは本当に先ほどのモノたちを混ぜただけですか?」
ただ混ぜただけということに驚きを隠せない料理長が、興奮しながら近づいてきた。
料理長は最近私が作るものたちに、興味津々ね。
まぁ、この世界になかったものを勝手に作ってしまってるのだから、そうもなるか。
「ええ。見てたとは思うけど、卵の黄身と塩、ビネガーを入れてもったりするまで混ぜてから油を少し入れただけよ」
「それだけでこんなに濃厚なソース……マヨネーズなるものが出来るのですね」
「そうそう。簡単でしょう?」
「簡単なのにとても美味しくて驚きました」
小皿に入れたマヨネーズを、料理長はじっと見ていた。
ただ混ぜただけで出来ることなのだけど、作り方や材料がわからないと作れないものね。
料理長が不思議に思うのも無理はないわ。
「美味しいけど、カロリーは高めだから大量には食べちゃダメよ? あとは新鮮ではない卵は生で食べると危ないからそれも注意ね」
取れたてだとしても保管方法などが悪いと、卵は危ないからなぁ。
さすがに私が作ったもので中毒を起こされても困るし。
管理などは徹底してもらわないとね。
「奥様は次から次へと、見たコトもないものばかり作られますが天才なのですね」
「天才だなんて……。ただ食べるのが好きなだけよ」
それに何より、前世の知識があるからね。
ある意味、こういうのってチートって言うのかしら。
そういう用語って、難しくてよく知らないけど。
「おだててもダメですよ料理長。それに奥様。話ながら食べ過ぎです」
シェナに言われて初めて、私はいまだにぱくぱくと食べ続けていることに気づいた。
マヨネーズも自分の食欲も、こわっ。
いくら野菜スティックだからって、マヨネーズ大量に食べてたら本末転倒だわ。
その日、さらに散歩の距離が追加になったのは言うまでもなかった。
38
お気に入りに追加
291
あなたにおすすめの小説
仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結済】姿を偽った黒髪令嬢は、女嫌いな公爵様のお世話係をしているうちに溺愛されていたみたいです
鳴宮野々花@初書籍発売中【二度婚約破棄】
恋愛
王国の片田舎にある小さな町から、八歳の時に母方の縁戚であるエヴェリー伯爵家に引き取られたミシェル。彼女は伯爵一家に疎まれ、美しい髪を黒く染めて使用人として生活するよう強いられた。以来エヴェリー一家に虐げられて育つ。
十年後。ミシェルは同い年でエヴェリー伯爵家の一人娘であるパドマの婚約者に嵌められ、伯爵家を身一つで追い出されることに。ボロボロの格好で人気のない場所を彷徨っていたミシェルは、空腹のあまりふらつき倒れそうになる。
そこへ馬で通りがかった男性と、危うくぶつかりそうになり──────
※いつもの独自の世界のゆる設定なお話です。何もかもファンタジーです。よろしくお願いします。
※この作品はカクヨム、小説家になろう、ベリーズカフェにも投稿しています。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
【完結】公爵令嬢に転生したので両親の決めた相手と結婚して幸せになります!
永倉伊織
恋愛
ヘンリー・フォルティエス公爵の二女として生まれたフィオナ(14歳)は、両親が決めた相手
ルーファウス・ブルーム公爵と結婚する事になった。
だがしかし
フィオナには『昭和・平成・令和』の3つの時代を生きた日本人だった前世の記憶があった。
貴族の両親に逆らっても良い事が無いと悟ったフィオナは、前世の記憶を駆使してルーファウスとの幸せな結婚生活を模索する。
【完結】夜会で借り物競争をしたら、イケメン王子に借りられました。
櫻野くるみ
恋愛
公爵令嬢のセラフィーナには生まれつき前世の記憶があったが、覚えているのはくだらないことばかり。
そのどうでもいい知識が一番重宝されるのが、余興好きの国王が主催する夜会だった。
毎年余興の企画を頼まれるセラフィーナが今回提案したのは、なんと「借り物競争」。
もちろん生まれて初めての借り物競争に参加をする貴族たちだったが、夜会は大いに盛り上がり……。
気付けばセラフィーナはイケメン王太子、アレクシスに借りられて、共にゴールにたどり着いていた。
果たしてアレクシスの引いたカードに書かれていた内容とは?
意味もなく異世界転生したセラフィーナが、特に使命や運命に翻弄されることもなく、王太子と結ばれるお話。
とにかくツッコミどころ満載のゆるい、ハッピーエンドの短編なので、気軽に読んでいただければ嬉しいです。
完結しました。
小説家になろう様にも投稿しています。
小説家になろう様への投稿時から、タイトルを『借り物(人)競争』からただの『借り物競争』へ変更いたしました。
好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】
皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」
「っ――――!!」
「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」
クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。
******
・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる