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017 決意の濃い味

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 王都の中央には、噴水を囲むようにたくさんの市場が立ち並んでいた。
 野菜や肉、花などだけではなくその場ですぐに食べれるような屋台のようなものまで数多くある。

 市民や旅行客がそこで買い物をしていき、どこまでも賑わっている。
 特に何か肉のようなモノが焼ける匂いのする店は、行列が出来ていた。

「もうさぁ、ダイエッターにはコレきついよ」
「ダメですよ、買い食いなんて。だいたいダイエットしていなくても貴族がこんなところで買い食いなんてみっともないですからね」
「分かってる。分かってるけどさぁ」

 そうは言っても、この匂いは反則だわ。
 肉焼ける匂いというよりも、何かのソースの匂いなのよね。

 ニンニクもそうだけど、香ばしくそれでいてややフルーティーさもある匂いを嗅ぐと、喉が勝手に鳴った。

 あああああ。ダイエット中じゃなければ、思う存分食べれたのに。

 まずは痩せないと、痩せないと。ぅーーー。
 すでに挫折寸前だわ。

「ねぇ、これだけ歩いてるから1つくらいダメかな?」

 そう言いつつ、チラリとシェナの顔色を伺えば、心底嫌そうな顔をしていた。
 分かってるわよ。さっきの言葉はどこ行ったんだお前って、今思ってるんでしょう?

 自分でも分かってるけど、お腹が空くんだもん。

「そんな目で見ないでよぅ。ちゃんと分かってるからぁ……。あー、でもココにお好み焼きがあったら完璧なのになぁ。食べたいなぁ」
「お好み焼き? それはどういう食べ物なんですか?」
「美味しいよ?」
「そーではなくって」

 屋台といったら、お好み焼きかたこ焼きが好きだったのよね。
 でもこの世界にソースもマヨネーズもない。

 お好み焼きは作れるだろうけど、ソースが無理なのよね。
 アレは作り方が全くわからないもの。

「分かってる、分かってる。んとね、もちもちした生地の中にキャベツとかの野菜とお肉とか玉子を入れて焦げ目がつくまで焼いてソースとかを塗るんだけど……」
「ソースですか?」
「うん。この世界のソースとは、ちょっと違うのよね。香ばしくて甘辛くて濃厚な感じ。色は茶色でドロっとしてるの。再現はさすがに少し無理かなぁ」

 でも一度食べたいと思ってしまうと、あっちの政界の食べ物をなんか作りたくなるのよね。
 昔の味が恋しくなったのは、少し前から自分で料理をするようになってからかもしれない。

 それまでは前の記憶はあっても、特に思い出したいと思ったこともなかったのに。

「あー、でもお好み焼きは無理でも似たものは作れるのかなぁ」
「それはダイエット向きなのですか?」
「んー。どうだろう。結局、食べ物だけで全部調整は難しいのよね」
「まぁ、そうでしょうね」

 分かりきってはいるけど、ただ食べる量を減らしただけでは摂取カロリーが減るだけ。
 そこに消費カロリーが多ければ痩せるんだけど、脂肪体質のこの体は中々カロリーを燃やすことが出来ない。

 少しずつ筋肉をつけていくしかないのだけど、筋肉つける前に脂肪が多すぎるのよね。
 散歩を取り入れ1日結構歩いているつもりだけど、それぐらいでは大した効果は出てないし。

「とりあえず今日から寝る前にストレッチを取り入れるわ」
「体を動かすのはいいとこです」
「そうね。あとは……食事だけど、どうしようかな」
「せっかく来たので、なにか買われますか?」

 シェナの言葉に少し考えたあと、私は辺りを見渡した。
 今食べるものはさすがに太るからダメだけど、食材は買って損はないのよね。
 いつも厨房の食材を使ってしまうことにも気が引けていたし。

「そうね。野菜をいくつかと……あ、マヨネーズなら作れるかなぁ」

 ソースは無理でもマヨネーズは、何となく作り方がわかるかも。
 そうよ。マヨネーズとケチャップさえあれば、食は豊かになるはず。

「目が輝くミレイヌ様を見ていると、デブの素を見つけたような気しかしないのですが?」
「ききき、気のせいよ! やだなぁ。調味料の一種だってば」

 せめて濃い味を。
 私が大量の玉子とトマトもどきをこのあと購入したのは言うまでもなかった。

 もちろん、シェナにひどい目で視られながら……。
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