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015 少しは妻として
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グラスに持ってきた大きな氷を一つずつ入れ、その後に果実酢を半分。
さらに少し水を入れたら、飲みやすいジュースの出来上がり。
トレーに載せたままランドに差し出すと、一瞬何か考えた後すんなりグラスを受け取った。
「美味しいとは思うのですが、なにぶん好みでもありますからね。美味しくなかったら飲まなくても大丈夫ですよ?」
「いや、君が作ったモノなら何でも美味しいはずさ」
そう言いながらランドは果実酢を飲み干す。
ああ、本当は炭酸で割るともっと爽やかなんだけどなぁ。この世界にはないのよね。
プシュー、プハー。ぅぅぅぅぅー。
炭酸ジュースもビールも飲みたすぎる。
って、何もかも懐かしい過去なのよね。
最も、アレも太る素なんだけど。
「これは……」
「どうですか? 美味しくはなかったですか?」
「ビネガーとは思えないほどのおいしさだね。びっくりしたよ。こんなに爽やかでのど越しのいい飲み物は初めてだ」
「本当ですか? ありがとうございます」
果実も氷砂糖も結構入っているし、氷と水で割ってるからマズくはないと思ったのよね。
でも所詮ビネガーはビネガーだし、お酢自体が嫌いな人にはキツイかなって。
「ミレイヌは天才だね。こんなにおいしいものを作れるなんて」
「天才だなんて言いすぎですわ、ランド様」
「いや、ホントにそうだよ」
「ふふふ。気に入ってもらえて良かったです。これは疲労回復の効果もありますので、良かったら皆さんも飲んで下さいね」
遠巻きに見ていた騎士たちがランドの反応で急に集まり出した。
しかしランドが振り返ると、なぜか騎士たちがぴたりと止まる。
えええ。やっぱり不味かったのかしら。
それで変な顔でもしてるの?
慌ててランドの顔を覗き込もうとすると、ランドはこちらに向き直った。
んんん? いつもの顔だけど、どういうことかしら。
マズイならマズイって遠慮せずに言ってくれた方が私はいいんだけど。
味覚の違い何て人それぞれなんだから、そんなこと気にしないのになぁ。
もしかして私の初手作りだから、遠慮したのかしら。
「ランド様、美味しくなかったですか? 無理なさらなくても良いのですよ?」
「いやそうではなくて……。どうしてうちの妻の手作りを、他の奴らにまで渡さなければならないのかと思ってね」
「え?」
んと、それってつまり……嫉妬してくれてるってことなのかな。
ちょっと、いい感じじゃない?
まだ外身ほぼ白豚さんだけど、ペットじゃなくって妻として見てくれてるってことでしょう?
えへへ。
面と向かって妻、だなんて。
ランドがそんなことを言ってくれたのは初めてかもしれない。
愛されてる自覚はあっても、それは妻としてじゃなくてずっとペットとしてだったし。
やっぱり人というか女として見てもらえるって、こんなにも嬉しいものなのね。
頑張って作ったかいがあったなぁ。
痩せてないけど。そう現実はほぼ痩せてないけど。
大事なことなので二回言いました、ハイ。
くぅぅぅぅ、現実て世知辛いわ。
「大丈夫ですよ、まだ家にもたくさんありますし。ランド様のは別に家にとってありますから。むしろいつもお世話になっている騎士団の方たちにも飲んでもらいたかったんです」
戦が終わってからもランドはココへ通い続けてる。
仕事ではなく、本人が体を鍛えるためだなんて言ってたけど、役職としては鍛える必要性はないんだけど。
いつまた何時あのようなことが繰り返されやしないか、まだ不安なのかな。
騎士団の人たちも国を守るためにまだまだ頑張ってくれているし、私にはこんなことしか出来ないけどね。
でもこの飲み物が少し広まってくれたらいいなって思った。
さらに少し水を入れたら、飲みやすいジュースの出来上がり。
トレーに載せたままランドに差し出すと、一瞬何か考えた後すんなりグラスを受け取った。
「美味しいとは思うのですが、なにぶん好みでもありますからね。美味しくなかったら飲まなくても大丈夫ですよ?」
「いや、君が作ったモノなら何でも美味しいはずさ」
そう言いながらランドは果実酢を飲み干す。
ああ、本当は炭酸で割るともっと爽やかなんだけどなぁ。この世界にはないのよね。
プシュー、プハー。ぅぅぅぅぅー。
炭酸ジュースもビールも飲みたすぎる。
って、何もかも懐かしい過去なのよね。
最も、アレも太る素なんだけど。
「これは……」
「どうですか? 美味しくはなかったですか?」
「ビネガーとは思えないほどのおいしさだね。びっくりしたよ。こんなに爽やかでのど越しのいい飲み物は初めてだ」
「本当ですか? ありがとうございます」
果実も氷砂糖も結構入っているし、氷と水で割ってるからマズくはないと思ったのよね。
でも所詮ビネガーはビネガーだし、お酢自体が嫌いな人にはキツイかなって。
「ミレイヌは天才だね。こんなにおいしいものを作れるなんて」
「天才だなんて言いすぎですわ、ランド様」
「いや、ホントにそうだよ」
「ふふふ。気に入ってもらえて良かったです。これは疲労回復の効果もありますので、良かったら皆さんも飲んで下さいね」
遠巻きに見ていた騎士たちがランドの反応で急に集まり出した。
しかしランドが振り返ると、なぜか騎士たちがぴたりと止まる。
えええ。やっぱり不味かったのかしら。
それで変な顔でもしてるの?
慌ててランドの顔を覗き込もうとすると、ランドはこちらに向き直った。
んんん? いつもの顔だけど、どういうことかしら。
マズイならマズイって遠慮せずに言ってくれた方が私はいいんだけど。
味覚の違い何て人それぞれなんだから、そんなこと気にしないのになぁ。
もしかして私の初手作りだから、遠慮したのかしら。
「ランド様、美味しくなかったですか? 無理なさらなくても良いのですよ?」
「いやそうではなくて……。どうしてうちの妻の手作りを、他の奴らにまで渡さなければならないのかと思ってね」
「え?」
んと、それってつまり……嫉妬してくれてるってことなのかな。
ちょっと、いい感じじゃない?
まだ外身ほぼ白豚さんだけど、ペットじゃなくって妻として見てくれてるってことでしょう?
えへへ。
面と向かって妻、だなんて。
ランドがそんなことを言ってくれたのは初めてかもしれない。
愛されてる自覚はあっても、それは妻としてじゃなくてずっとペットとしてだったし。
やっぱり人というか女として見てもらえるって、こんなにも嬉しいものなのね。
頑張って作ったかいがあったなぁ。
痩せてないけど。そう現実はほぼ痩せてないけど。
大事なことなので二回言いました、ハイ。
くぅぅぅぅ、現実て世知辛いわ。
「大丈夫ですよ、まだ家にもたくさんありますし。ランド様のは別に家にとってありますから。むしろいつもお世話になっている騎士団の方たちにも飲んでもらいたかったんです」
戦が終わってからもランドはココへ通い続けてる。
仕事ではなく、本人が体を鍛えるためだなんて言ってたけど、役職としては鍛える必要性はないんだけど。
いつまた何時あのようなことが繰り返されやしないか、まだ不安なのかな。
騎士団の人たちも国を守るためにまだまだ頑張ってくれているし、私にはこんなことしか出来ないけどね。
でもこの飲み物が少し広まってくれたらいいなって思った。
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