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ゆうの場合 3
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朝までの時間はたっぷりとある。
私はまず彼のデスクにあるパソコンにアクセスした。
パスワードは前もって知っている。
そのまま彼のアカウントにアクセスし、先ほどの写真を乗せて拡散。
彼のアカウントには彼の友だちから会社関係の人までがフォロしている。
きっとこれを見た人はびっくりすることだろう。
彼女の下着姿と、その後ろで寝る彼の写真。
しかも明らかに場所はホテルだ。
「ん-。でも、まだ足りない」
そう。まだ足りない。
私が孤独だった分。悲しくて泣いた分。そしてこの浮気をされた分。
まだまだまだまだ全然足りない。
こんなにもあの人のことを愛しているのに、私にはかれしかいなかったのに。
なーんにも伝わらなかったみたいだから。
「ああ。そうだ。拡散ってやっぱりネットだけじゃ足りないよね」
私は先ほどの写真を印刷にかける。
そしてネットから彼の会社、彼女の会社、そして二人の母校にFAXを送信した。
でもでもでもでもまだ足りない。
「うん。もっとかなぁ」
コピー機からは次々にカラーで印刷が出てくる。
私の伝わらなかった気持ちを表してくれているように。
そしてそれを手に持つと、私は再び外に出た。
田舎のいいとことは、いたるとことに掲示板やら何やらがたくさんあること。
一枚、また一枚と掲示板や電柱、ごみの集積場、そして最後は彼の車の窓に貼り付けた。
「ふふふ。これできっと分かってくれるわよね」
全部の紙を貼り終わると、私は家に帰った。
そして全てのアクセスやログイン履歴を削除する。
彼はもちろん、私がパソコンのパスワードを知っているとは思っていない。
だからきっと、私だとは思わないだろう。
だいたい、まずあの写真を撮って載せたのは彼女なんだから。
数時間後、真っ青な顔をした彼が家に帰ってきた。
ある意味、十分酔いは醒めたようだった。
「なにも覚えてないんだ」
「そう」
「本当だ。本当に飲んでて記憶がなくなって……」
「そう」
玄関で崩れ落ちるように私に土下座をしながら、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
そうしている間にも、彼の電話にはひっきりなしに通話やメールなどの通知が鳴り響いている。
「私も見たわ」
「本当に俺は何もしてないんだ」
「でも覚えてないんでしょう?」
「それは……」
「覚えてなければ、何をしたのかも分からなし、何もしてないことにはならないわ。しかもあんな写真」
「あれは! あいつが勝手に撮って拡散したんだ」
「そうでしょうね。私からあなたを奪いたかったのかな」
彼の中では彼女が拡散したことになっている。
まぁそうでしょうね。
普通は被害者である私がこんな風に拡散するとは、中々想像がつかないかもしれないわ。
しかも今彼は、混乱の真っただ中だもの。
「あなたの会社やいろんなとこからも、うちに連絡がきてるわ」
「誰かが面白がって、町中に貼り出したり、会社にまで連絡したみたいなんだ」
「まぁ自業自得ね」
「もう終わりだ……こんな小さな町でこんなことが広がってしまって、もう俺は生きていけない」
「……」
私は微笑みたくなる気持ちをぐっと抑え、彼に手を差し伸べた。
すると彼はやっと、私の顔を見る。
あたなには、もう私しかいないのよ。
だってこんなことになっても、手を差し伸べてあげているんだから。
「いいのか?」
「ええ。だって愛してるもの、あなたのこと。だから……一緒に逝きましょう?」
「ああ、行こう」
彼の言葉と私の言葉が違っても、私は気にならなかった。
だって行く先は同じだから。
そう。二人だけ、一緒に。
私はまず彼のデスクにあるパソコンにアクセスした。
パスワードは前もって知っている。
そのまま彼のアカウントにアクセスし、先ほどの写真を乗せて拡散。
彼のアカウントには彼の友だちから会社関係の人までがフォロしている。
きっとこれを見た人はびっくりすることだろう。
彼女の下着姿と、その後ろで寝る彼の写真。
しかも明らかに場所はホテルだ。
「ん-。でも、まだ足りない」
そう。まだ足りない。
私が孤独だった分。悲しくて泣いた分。そしてこの浮気をされた分。
まだまだまだまだ全然足りない。
こんなにもあの人のことを愛しているのに、私にはかれしかいなかったのに。
なーんにも伝わらなかったみたいだから。
「ああ。そうだ。拡散ってやっぱりネットだけじゃ足りないよね」
私は先ほどの写真を印刷にかける。
そしてネットから彼の会社、彼女の会社、そして二人の母校にFAXを送信した。
でもでもでもでもまだ足りない。
「うん。もっとかなぁ」
コピー機からは次々にカラーで印刷が出てくる。
私の伝わらなかった気持ちを表してくれているように。
そしてそれを手に持つと、私は再び外に出た。
田舎のいいとことは、いたるとことに掲示板やら何やらがたくさんあること。
一枚、また一枚と掲示板や電柱、ごみの集積場、そして最後は彼の車の窓に貼り付けた。
「ふふふ。これできっと分かってくれるわよね」
全部の紙を貼り終わると、私は家に帰った。
そして全てのアクセスやログイン履歴を削除する。
彼はもちろん、私がパソコンのパスワードを知っているとは思っていない。
だからきっと、私だとは思わないだろう。
だいたい、まずあの写真を撮って載せたのは彼女なんだから。
数時間後、真っ青な顔をした彼が家に帰ってきた。
ある意味、十分酔いは醒めたようだった。
「なにも覚えてないんだ」
「そう」
「本当だ。本当に飲んでて記憶がなくなって……」
「そう」
玄関で崩れ落ちるように私に土下座をしながら、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
そうしている間にも、彼の電話にはひっきりなしに通話やメールなどの通知が鳴り響いている。
「私も見たわ」
「本当に俺は何もしてないんだ」
「でも覚えてないんでしょう?」
「それは……」
「覚えてなければ、何をしたのかも分からなし、何もしてないことにはならないわ。しかもあんな写真」
「あれは! あいつが勝手に撮って拡散したんだ」
「そうでしょうね。私からあなたを奪いたかったのかな」
彼の中では彼女が拡散したことになっている。
まぁそうでしょうね。
普通は被害者である私がこんな風に拡散するとは、中々想像がつかないかもしれないわ。
しかも今彼は、混乱の真っただ中だもの。
「あなたの会社やいろんなとこからも、うちに連絡がきてるわ」
「誰かが面白がって、町中に貼り出したり、会社にまで連絡したみたいなんだ」
「まぁ自業自得ね」
「もう終わりだ……こんな小さな町でこんなことが広がってしまって、もう俺は生きていけない」
「……」
私は微笑みたくなる気持ちをぐっと抑え、彼に手を差し伸べた。
すると彼はやっと、私の顔を見る。
あたなには、もう私しかいないのよ。
だってこんなことになっても、手を差し伸べてあげているんだから。
「いいのか?」
「ええ。だって愛してるもの、あなたのこと。だから……一緒に逝きましょう?」
「ああ、行こう」
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だって行く先は同じだから。
そう。二人だけ、一緒に。
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