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みかの場合 3
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もやもやする気持ちを抱えたまま、私は耳を塞ぎ眠りについた。
何時間たったのだろうか。
ドアの隙間からは、薄い光が漏れている。
まだゲームやってるのかしら。
それにしては、いつものあのうるさい声は聞こえてこない。
私はなんだか不安になる胸を押さえつつ、ゆっくりと静かにドアに近づいた。
そしてその隙間から、向こう側を伺う。
「ねぇ、バレたら大変だょ?」
「そう言いながら、ノリノリのくせに」
こそこそと話す二人の声。
そしてあり得ないくらい密着する体。
二人は現実世界のココでもゲームを楽しむかのように、スリルを貪っていた。
ココは私の家であり、今目の前にいるのは私の彼氏と妹。
私は自分の口を押さえたまま、ただゆっくりと後退りした。
これが彼らの言う、面白くない人間の結末というものなのか……。
そんな答えなど知りたくもなかった。
ただそう、ゲームの中でも現実でもスリルを味わいたいのなら、勝手にして欲しかった。
私の関係のないところで。
でも彼らにとって私は、スリルを味わうための小道具にすぎないのだろう。
だったらそれに仕返しされるのは、どんな気持ちなのかしら。
加速する心を、私はもう押さえ込む気などなかった。
◇ ◇ ◇
次の週末。
私は妹が大好きなお香に良く似た、お香を部屋で炊いた。
そして妹が来るのを待って、私は二人に声をかける。
「私、ちょっと仕事でトラブルがあったから一回会社に行ってくるね」
「えー。お姉ちゃん出てっちゃうの?」
「うん。少し遅くなると思う」
「何時くらいになるんだ?」
「その後、ご飯食べてから帰るから夜10時くらいになるかな」
「おう。ゲームやってるし、腹減ったらなんかとるか~」
「ああ、作って冷蔵庫に入れてあるからチンすればすぐ食べれるから」
「さすがお姉ちゃん。彼氏さんのことは任せておいて~。あたしがちゃんとしておくから」
「そう。ありがとう」
私が知らないと思って、いい気なものよね。
馬鹿にしすぎよ。
「おまえにしては今日は上出来じゃないか」
「ふふふ、そう? ありがとう。じゃ、二人で楽しんでてね」
手を振る二人に微笑み返すと、私は部屋を出た。
そう。これで準備は万端。
部屋から出ずに、あのお香が部屋の中に充満していく。
密室で、しかも激しい運動をすればすぐに回るだろう。
あのお香はね、同じニオイでも成分が違うの。
幻覚作用が出る、とても特殊な……ある意味違法なもの。
購入する時に妹名義で買ったからもちろん足も付かない。
ゲームに熱中し、ゲームの世界にいるうちに幻覚作用ってどういう風に出るかしらね。
良くて、意識混濁。悪ければ錯乱。
そのまま勝手に二人で殺し合ってくれることを想像すれば、なんだか私もゲームをしているような高揚感に襲われた。
「ゲーム楽しいかも」
ただし、命をかけたリアルなゲームが、ね。
何時間たったのだろうか。
ドアの隙間からは、薄い光が漏れている。
まだゲームやってるのかしら。
それにしては、いつものあのうるさい声は聞こえてこない。
私はなんだか不安になる胸を押さえつつ、ゆっくりと静かにドアに近づいた。
そしてその隙間から、向こう側を伺う。
「ねぇ、バレたら大変だょ?」
「そう言いながら、ノリノリのくせに」
こそこそと話す二人の声。
そしてあり得ないくらい密着する体。
二人は現実世界のココでもゲームを楽しむかのように、スリルを貪っていた。
ココは私の家であり、今目の前にいるのは私の彼氏と妹。
私は自分の口を押さえたまま、ただゆっくりと後退りした。
これが彼らの言う、面白くない人間の結末というものなのか……。
そんな答えなど知りたくもなかった。
ただそう、ゲームの中でも現実でもスリルを味わいたいのなら、勝手にして欲しかった。
私の関係のないところで。
でも彼らにとって私は、スリルを味わうための小道具にすぎないのだろう。
だったらそれに仕返しされるのは、どんな気持ちなのかしら。
加速する心を、私はもう押さえ込む気などなかった。
◇ ◇ ◇
次の週末。
私は妹が大好きなお香に良く似た、お香を部屋で炊いた。
そして妹が来るのを待って、私は二人に声をかける。
「私、ちょっと仕事でトラブルがあったから一回会社に行ってくるね」
「えー。お姉ちゃん出てっちゃうの?」
「うん。少し遅くなると思う」
「何時くらいになるんだ?」
「その後、ご飯食べてから帰るから夜10時くらいになるかな」
「おう。ゲームやってるし、腹減ったらなんかとるか~」
「ああ、作って冷蔵庫に入れてあるからチンすればすぐ食べれるから」
「さすがお姉ちゃん。彼氏さんのことは任せておいて~。あたしがちゃんとしておくから」
「そう。ありがとう」
私が知らないと思って、いい気なものよね。
馬鹿にしすぎよ。
「おまえにしては今日は上出来じゃないか」
「ふふふ、そう? ありがとう。じゃ、二人で楽しんでてね」
手を振る二人に微笑み返すと、私は部屋を出た。
そう。これで準備は万端。
部屋から出ずに、あのお香が部屋の中に充満していく。
密室で、しかも激しい運動をすればすぐに回るだろう。
あのお香はね、同じニオイでも成分が違うの。
幻覚作用が出る、とても特殊な……ある意味違法なもの。
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ゲームに熱中し、ゲームの世界にいるうちに幻覚作用ってどういう風に出るかしらね。
良くて、意識混濁。悪ければ錯乱。
そのまま勝手に二人で殺し合ってくれることを想像すれば、なんだか私もゲームをしているような高揚感に襲われた。
「ゲーム楽しいかも」
ただし、命をかけたリアルなゲームが、ね。
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