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みかの場合 1
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「結婚式のプランどうする?」
「んー?」
「ねぇ、聞いてる? ちょっとこっちで一緒に見てよ」
並べられたたくさんのパンフレットを広げながら、私はソファーに寝転びながらスマホのゲームに熱中する彼に声をかけた。
付き合って三年。同棲して半年。
私たちは次の秋に挙式と同時に入籍をする予定だ。
「んぁ、俺はなんでもいいよー」
「何でもいいってさぁ。そうじゃないじゃない」
「ほら、そういうのは女のあこがれなんだろ? 好きにすればいいさ~」
そう言って彼は私が集めて来たパンフレットには見向きもしない。
確かに結婚式は私のあこがれであり、私がやりたいって言いだしたんだけど。
でも式は二人一緒にあげるものなのに。
こうもあからさまに興味がないと腹が立ってくる。
「ゲームばっかりで全然協力してくれないじゃない。二人で挙げることなのに」
「だって俺が口出したら、好きなのにならないだろ。それにお前さ、俺がコレがいいんじゃねって言うと、すぐにえーとか言うし」
「そうかもしれないけど、私はちゃんとあなたと会話して決めたいの。一生に一度なのよ」
「ちゃんとって、そんなんちゃんとでもないだろ。好きなようにすればなんでもいいじゃねーか」
話し合いをする前から、全然会話する気もないし。
なんだろう。いつからだったかな。彼が私のことに興味を示さなくなってきたのは。
「……もういいよ。勝手に決めるから」
「おう。そうしてくれ、そうしてくれ~」
そう言いながらも、彼はゲームをする手を止めようとはしない。
「それより今日の夕飯はどうするの? どこか食べに行く?」
「外食なんてめんどくさいだけだし~。あ、そうだ! せっかくの休みだし、妹ちゃん呼べよ!」
「はぁ? なんでせっかくの休みに、私の妹をここに呼ばなきゃいけないわけ?」
「なんでって、みんなで飯食った方がうまいだろ」
「でもその食事を作るのは、私よね?」
私も休みを満喫したいんですけど?
朝からずっとあなたはそうやってゴロゴロゲームしていただけでしょうけど、私は平日に溜まっていた家事を全部終わらせたとこなのよ。
それなのに、今度は他人のためにご飯まで作れですって。
冗談じゃない。
「いいだろ。お前さぁ、そういうとこが人間関係だめにするんだぞ。俺の親にだって好意的じゃないし」
「私がご飯をつくることと、それは関係なくない?」
「いや、あるだろう。美味しい飯を囲んで、楽しい話をするのが家族だろ。人間関係の構築はまずそこからだろうが」
「べつに私はそういうの望んでないし」
「だからダメなんだよ。その性格直した方がいいぞ。可愛くない」
「!」
なんで私がここまで言われなけれないけないの?
自分に対して好意的ではない人と、好意的に出来るほど私は人間出来てはいない。
でもそれってそんなに悪いこと?
むしろ普通じゃないの?
彼のお義母さんも、私妹も基本的にそういう類の人間なのだ。
だから極力関わりたくない。
明らかに敵意まではないにしても、こっちがどれだけ親しくしようと思っていても、相手がそう思っていないのならば意味がないと思う。
彼はお義母さんが私のことを学歴から就職先から何から何までケチつけても、素知らぬ顔だった。
私がきつくて泣きそうになってたって、気にしすぎだってしか言ってもくれなかったのに。
そんな人間と、上手くやれ?
冗談じゃない。彼の親でなかったら、絶対に関わりたくないくらいよ。
「呼ぶなら勝手に呼べば?」
「そうやってすぐ怒る。だから人間関係が円満にできないんだよ」
「怒るも何も、私のこと少しは考えてる?」
「当たり前だろう。家族が仲がいい方がいいにきまってるじゃないか。だからこうやって機会を作ってやってるっていうのに」
「でも私が妹を嫌いな理由言ったよね?」
「そんなの子どもの頃の話だろ。いつまで引きづってるんだよ、いい年した大人が」
トラウマに年齢なんて関係あるんだろうか。
彼の中では家族は、なんでも明け透けなく自分の意見を好きなだけ言い張れるモノなのかもしれないけど、それを私に押し付けてくるのは違うと思う。
だって私はそういう世界では生きてはこなかったし、だいたい妹の関係はその群を抜いて最悪だ。
なんでも欲しがる妹とはよく言ったもので、私の持つすべてのものを欲しがるような子だった。
実際、高校を卒業して家を出るまでは、なんでもお姉さんなんだからと妹に盗られても我慢させられてきた。
母親、ぬいぐるみ、絵本、服、そして友達に彼氏も……。
だからそこ、疎遠になってきたというのに。
偶然、彼のやるゲームを通して二人が仲良くなったのをきっかけに、また妹が私に急接近してきた。
正直、いい予感など何もしない。
だからこの家にも呼びたくはなかったのに。
「あなたには分からないわよ」
「そう拗ねるなよ。なんだ嫉妬か? 妹ちゃんにも彼氏いるんだから気にしすぎだろ」
もちろんそうであって欲しい。
もう私たちも大人だもん。あの子も変わったって思いたい。
でも、二人の関係性を見ていると、とてもそんな感じがいつもしないのだった。
「んー?」
「ねぇ、聞いてる? ちょっとこっちで一緒に見てよ」
並べられたたくさんのパンフレットを広げながら、私はソファーに寝転びながらスマホのゲームに熱中する彼に声をかけた。
付き合って三年。同棲して半年。
私たちは次の秋に挙式と同時に入籍をする予定だ。
「んぁ、俺はなんでもいいよー」
「何でもいいってさぁ。そうじゃないじゃない」
「ほら、そういうのは女のあこがれなんだろ? 好きにすればいいさ~」
そう言って彼は私が集めて来たパンフレットには見向きもしない。
確かに結婚式は私のあこがれであり、私がやりたいって言いだしたんだけど。
でも式は二人一緒にあげるものなのに。
こうもあからさまに興味がないと腹が立ってくる。
「ゲームばっかりで全然協力してくれないじゃない。二人で挙げることなのに」
「だって俺が口出したら、好きなのにならないだろ。それにお前さ、俺がコレがいいんじゃねって言うと、すぐにえーとか言うし」
「そうかもしれないけど、私はちゃんとあなたと会話して決めたいの。一生に一度なのよ」
「ちゃんとって、そんなんちゃんとでもないだろ。好きなようにすればなんでもいいじゃねーか」
話し合いをする前から、全然会話する気もないし。
なんだろう。いつからだったかな。彼が私のことに興味を示さなくなってきたのは。
「……もういいよ。勝手に決めるから」
「おう。そうしてくれ、そうしてくれ~」
そう言いながらも、彼はゲームをする手を止めようとはしない。
「それより今日の夕飯はどうするの? どこか食べに行く?」
「外食なんてめんどくさいだけだし~。あ、そうだ! せっかくの休みだし、妹ちゃん呼べよ!」
「はぁ? なんでせっかくの休みに、私の妹をここに呼ばなきゃいけないわけ?」
「なんでって、みんなで飯食った方がうまいだろ」
「でもその食事を作るのは、私よね?」
私も休みを満喫したいんですけど?
朝からずっとあなたはそうやってゴロゴロゲームしていただけでしょうけど、私は平日に溜まっていた家事を全部終わらせたとこなのよ。
それなのに、今度は他人のためにご飯まで作れですって。
冗談じゃない。
「いいだろ。お前さぁ、そういうとこが人間関係だめにするんだぞ。俺の親にだって好意的じゃないし」
「私がご飯をつくることと、それは関係なくない?」
「いや、あるだろう。美味しい飯を囲んで、楽しい話をするのが家族だろ。人間関係の構築はまずそこからだろうが」
「べつに私はそういうの望んでないし」
「だからダメなんだよ。その性格直した方がいいぞ。可愛くない」
「!」
なんで私がここまで言われなけれないけないの?
自分に対して好意的ではない人と、好意的に出来るほど私は人間出来てはいない。
でもそれってそんなに悪いこと?
むしろ普通じゃないの?
彼のお義母さんも、私妹も基本的にそういう類の人間なのだ。
だから極力関わりたくない。
明らかに敵意まではないにしても、こっちがどれだけ親しくしようと思っていても、相手がそう思っていないのならば意味がないと思う。
彼はお義母さんが私のことを学歴から就職先から何から何までケチつけても、素知らぬ顔だった。
私がきつくて泣きそうになってたって、気にしすぎだってしか言ってもくれなかったのに。
そんな人間と、上手くやれ?
冗談じゃない。彼の親でなかったら、絶対に関わりたくないくらいよ。
「呼ぶなら勝手に呼べば?」
「そうやってすぐ怒る。だから人間関係が円満にできないんだよ」
「怒るも何も、私のこと少しは考えてる?」
「当たり前だろう。家族が仲がいい方がいいにきまってるじゃないか。だからこうやって機会を作ってやってるっていうのに」
「でも私が妹を嫌いな理由言ったよね?」
「そんなの子どもの頃の話だろ。いつまで引きづってるんだよ、いい年した大人が」
トラウマに年齢なんて関係あるんだろうか。
彼の中では家族は、なんでも明け透けなく自分の意見を好きなだけ言い張れるモノなのかもしれないけど、それを私に押し付けてくるのは違うと思う。
だって私はそういう世界では生きてはこなかったし、だいたい妹の関係はその群を抜いて最悪だ。
なんでも欲しがる妹とはよく言ったもので、私の持つすべてのものを欲しがるような子だった。
実際、高校を卒業して家を出るまでは、なんでもお姉さんなんだからと妹に盗られても我慢させられてきた。
母親、ぬいぐるみ、絵本、服、そして友達に彼氏も……。
だからそこ、疎遠になってきたというのに。
偶然、彼のやるゲームを通して二人が仲良くなったのをきっかけに、また妹が私に急接近してきた。
正直、いい予感など何もしない。
だからこの家にも呼びたくはなかったのに。
「あなたには分からないわよ」
「そう拗ねるなよ。なんだ嫉妬か? 妹ちゃんにも彼氏いるんだから気にしすぎだろ」
もちろんそうであって欲しい。
もう私たちも大人だもん。あの子も変わったって思いたい。
でも、二人の関係性を見ていると、とてもそんな感じがいつもしないのだった。
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