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第五章
第七十六話 ほくそ笑むその裏で
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誰よりも煌びやかに。
この国の誰よりも贅を尽くして。
そんな言葉が王妃には本当に似合っていた。
手紙を出してすぐの訪問と言え、書かれていた内容がよほどお気に召したのか、王妃はすぐに面会を許してくれた。
この前お茶会を開いたのと同じ中庭にテーブルを並べ、王妃は侍女たちを背後に立たせ座っていた。
「急なご面会に関わらず、お目通りを叶えて下さいましてありがとうございます」
「いいのよ。あなたのたっての願いだもの。こんなことぐらい、簡単なことよ」
私が深々と頭を下げると微笑みながら、王妃は手に持った扇をあおいだ。
扇の裏に隠れた顔は、まさにご満悦といった感じ。
ご自分の計画が全て上手くいって、さぞかし気持ちのいいことでしょうね。
ため息も、冷ややかになりそうな顔も、全て泣き出しそうな仮面で覆いつくす。
「そんな顔をせずに、まずは座りなさい」
「はい、王妃様」
「今回はずいぶん大変だったようね」
「……はい」
「まさか自分の妹に毒を盛られるなんて」
「……。精霊の力がなかったらと思うと今頃私はきっと……」
「本当にねぇ。死んでいたかもしれないわね」
分かっていてやっていたのならば、本当に救いようがないわね。
この言葉が出てくる以上、王妃はあの毒の効能を知っていた。
そして私がどうなるか、も。
「でも私は……それでも……」
「さっきの手紙にもそう書かれていたわね」
「はい。例えどんな仕打ちをされても、妹は妹なのです」
「姉妹愛ね」
「あの子は私のことをどう思ってこんなコトをしたのか未だに分かってはいませんが……、それでも大切な妹なのです。だからどうか王妃様、お力を貸していただけないでしょうか? 私はあの子のためになら、どんなことでもいたしますから……」
そう。
王妃へと出した手紙にも同じことを書いたのだ。
どんなことでもするから、妹を助けるために力を貸して欲しい。
きっとこれならばすぐに食いついてくると思ったのよね。
元々、チェリーに罪を擦り付けて殺したかった私を殺すことは出来なかった王妃はずっとイライラしていたはず。
しかもチェリーも罪を認めてはいない。
揚げ足を取ることも出来ない状態で、いわば王妃の計画は八方ふさがりだった。
「そんな、どんなこともだなんて」
「いえ、王妃様のお力を借りて、どうか妹に恩赦を……」
チェリーに罪を被せたまま、邪魔者の私を味方につけることも出来る。
私の提案はそう、王妃にとって一挙両得以上の価値があるのだ。
だからこそ、今の王妃の心のうちなど手に取る様にわかる。
きっと私になにを頼もうか。
どう自分のために活用しようか。
心の底でほくそ笑んでいるのでしょうね。
人は自分が優位に立てば立つほど、足元が見えなくなるもんですよ。
実際にそんな王妃を見て、私がニヤリと思っているなんて、王妃は思いもよらないと思うけど。
「そうねぇ……あなたが、わたくしの力となってくれるなら」
「もちろんです、王妃様。私でよければどんなことでもお力となります。なんなりとおっしゃって下さい。ああ、でも……」
「でも?」
「私ごときが王妃様のお力になど、なれるのでしょうか?」
「ごとき、だなんて。あなたは次期王妃候補ではないの」
「そ……それは……」
「そうでしょう?」
「妹がこんなことを起こして、元より辞退しようと思っていたんです」
「そうなの?」
「元々、次期宰相であるグレン様が私を次期王妃候補に推薦していたのです」
「まぁ、そうなの!」
まぁ、嘘はついていない。
むしろここぞとばかりに、グレンのせいにしておこう。
たまにはいいわよね。
いつも悪だくみばっかりしてるんだから。
この国の誰よりも贅を尽くして。
そんな言葉が王妃には本当に似合っていた。
手紙を出してすぐの訪問と言え、書かれていた内容がよほどお気に召したのか、王妃はすぐに面会を許してくれた。
この前お茶会を開いたのと同じ中庭にテーブルを並べ、王妃は侍女たちを背後に立たせ座っていた。
「急なご面会に関わらず、お目通りを叶えて下さいましてありがとうございます」
「いいのよ。あなたのたっての願いだもの。こんなことぐらい、簡単なことよ」
私が深々と頭を下げると微笑みながら、王妃は手に持った扇をあおいだ。
扇の裏に隠れた顔は、まさにご満悦といった感じ。
ご自分の計画が全て上手くいって、さぞかし気持ちのいいことでしょうね。
ため息も、冷ややかになりそうな顔も、全て泣き出しそうな仮面で覆いつくす。
「そんな顔をせずに、まずは座りなさい」
「はい、王妃様」
「今回はずいぶん大変だったようね」
「……はい」
「まさか自分の妹に毒を盛られるなんて」
「……。精霊の力がなかったらと思うと今頃私はきっと……」
「本当にねぇ。死んでいたかもしれないわね」
分かっていてやっていたのならば、本当に救いようがないわね。
この言葉が出てくる以上、王妃はあの毒の効能を知っていた。
そして私がどうなるか、も。
「でも私は……それでも……」
「さっきの手紙にもそう書かれていたわね」
「はい。例えどんな仕打ちをされても、妹は妹なのです」
「姉妹愛ね」
「あの子は私のことをどう思ってこんなコトをしたのか未だに分かってはいませんが……、それでも大切な妹なのです。だからどうか王妃様、お力を貸していただけないでしょうか? 私はあの子のためになら、どんなことでもいたしますから……」
そう。
王妃へと出した手紙にも同じことを書いたのだ。
どんなことでもするから、妹を助けるために力を貸して欲しい。
きっとこれならばすぐに食いついてくると思ったのよね。
元々、チェリーに罪を擦り付けて殺したかった私を殺すことは出来なかった王妃はずっとイライラしていたはず。
しかもチェリーも罪を認めてはいない。
揚げ足を取ることも出来ない状態で、いわば王妃の計画は八方ふさがりだった。
「そんな、どんなこともだなんて」
「いえ、王妃様のお力を借りて、どうか妹に恩赦を……」
チェリーに罪を被せたまま、邪魔者の私を味方につけることも出来る。
私の提案はそう、王妃にとって一挙両得以上の価値があるのだ。
だからこそ、今の王妃の心のうちなど手に取る様にわかる。
きっと私になにを頼もうか。
どう自分のために活用しようか。
心の底でほくそ笑んでいるのでしょうね。
人は自分が優位に立てば立つほど、足元が見えなくなるもんですよ。
実際にそんな王妃を見て、私がニヤリと思っているなんて、王妃は思いもよらないと思うけど。
「そうねぇ……あなたが、わたくしの力となってくれるなら」
「もちろんです、王妃様。私でよければどんなことでもお力となります。なんなりとおっしゃって下さい。ああ、でも……」
「でも?」
「私ごときが王妃様のお力になど、なれるのでしょうか?」
「ごとき、だなんて。あなたは次期王妃候補ではないの」
「そ……それは……」
「そうでしょう?」
「妹がこんなことを起こして、元より辞退しようと思っていたんです」
「そうなの?」
「元々、次期宰相であるグレン様が私を次期王妃候補に推薦していたのです」
「まぁ、そうなの!」
まぁ、嘘はついていない。
むしろここぞとばかりに、グレンのせいにしておこう。
たまにはいいわよね。
いつも悪だくみばっかりしてるんだから。
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