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第五章
第七十五話 ご退場願います
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「は?」
自分で出しておいて、なんとも間抜けな声が口をついた。
王妃が退位した後に、また王妃になる。
んんん?
全然意味が分かんないんだけど。
王妃は今の国王様の妻であって、たとえ離縁したところで次の王妃になんてなれないんじゃないの?
「え、つまりキース様と再婚なさりたいってことなんですの?」
「ああ、そうらしい」
「えええ。本気なのですか?」
「当の本人はそのつもりらしい」
「でも現実問題として、無理ではないですか。次期王妃ともなる人が、離婚歴があるなんて。だいたい、キース様と国王様はご兄弟でもあられるし。そんなこと許されるのですか?」
「難しい問題ではあるが、王族は白い結婚のみ離縁を認めることが出来るんだ」
白い結婚。つまりは男女関係がなく、初夜を共に過ごしていないということ。
「国王様と王妃様は……」
「ああ、白い結婚だ。元々、退位が決まった時に、その話は兄から聞いている。もし王妃が望むのならば、兄は離縁に応じるつもりだったんだ」
「ですが二人は仲睦まじいと有名だったではないですか」
「そうだな。兄は王妃に惚れていたからな。だからこそ、病弱な自分のことが嫌になったなら離縁をしてあげようと決めていたようだ」
ある意味、これも愛の形なのだろうか。
ただそれを逆手にとって、キースと再婚を目論み、他の貴族女性を傷つけてきたその罪は決して許されることじゃないだろう。
さすがにこれは呆れてしまいう。
言い方は悪いが、そんなことのために。
王妃の欲望のためだけに、どれほどの令嬢たちが傷ついてきたのだろう。
あの馬車での事故も、今回の毒でもそう。
たまたま、死者が出なかったというだけ。
あくまでもそれは結果論であって、王妃にとってみれば死者が出てもいとわなかったということ。
呆れるレベルではないわね。
殺人を犯してまでも、その地位を守りたいなんて。
狂ってるって言われてもおかしくないわ。
「キース様はどうするおつもりだったのですか?」
「ここまで大きな話になっているとは思わなかったというのが本心だ。こんなことになる前に、対処しておけば良かった。全ては俺が浅慮だった」
「お断りしていたは、いたのですよね?」
「ああ、そうだ。さすがに義姉だった人と再婚する気はないさ。元々きちんと王妃候補を見つけ、王妃にはご退場願う予定だった。しかし他家にまでスパイを入り込ませてなどど」
「大がかりもいいところですね」
「ああ。あの人が王妃に固執する気持ちは、分からなくもない。ただそうであっても、決してこれは許されることではない」
キースがきっぱりと言い放つ。
その言葉に、私は少しほっとした。
心のどこかで、異性としてや家族として、思う心がまだあるのではないかと心配していたから。
だから良かったと本当に思う。
「だが、この後はどうする予定なんだ? こんな末端を吐かせたといえど、証拠がない以上シラを切るのは目に見えてる」
「そうですね。今、私たちの手元には証拠はない。なので、自白でもしてもらいましょう」
この侍女を捕まえてもらったのは、王妃の悪行の裏を取るため。
やっぱり悪いことをした人には痛い目にあってもらって、しっかり反省してもらわないとね。
「コレを使うんです。もちろん、あなたにも協力してもらうわ」
「そ、それは!」
侍女の部屋から差し押さえた茶葉を私は侍女に見せる。
これを盛った人間が、一番その効果を知っているはずだ。
「王妃様を毒殺するなんて」
「誰も毒殺するなんて言ってはないわ。それにあなたが、私にこれを盛ったのよ? 次期王妃には出来て、廃退される王妃には出来ないっていうのは少し違うんじゃない?」
「そ、それはそうですが。ですが、ですが」
「ま、あなたにコレを盛れなんて言わないわ。ただあなたは後から出てきてくれればいいの」
「それは、どういう意味だアイリス」
「ふふふ。やってみれば、すぐ分かりますよ」
私はキースにただそう告げると、静かにほほ笑んだ。
そしてただ簡単に役割と動きだけ説明すると、私たちは計画を実行に移した。
自分で出しておいて、なんとも間抜けな声が口をついた。
王妃が退位した後に、また王妃になる。
んんん?
全然意味が分かんないんだけど。
王妃は今の国王様の妻であって、たとえ離縁したところで次の王妃になんてなれないんじゃないの?
「え、つまりキース様と再婚なさりたいってことなんですの?」
「ああ、そうらしい」
「えええ。本気なのですか?」
「当の本人はそのつもりらしい」
「でも現実問題として、無理ではないですか。次期王妃ともなる人が、離婚歴があるなんて。だいたい、キース様と国王様はご兄弟でもあられるし。そんなこと許されるのですか?」
「難しい問題ではあるが、王族は白い結婚のみ離縁を認めることが出来るんだ」
白い結婚。つまりは男女関係がなく、初夜を共に過ごしていないということ。
「国王様と王妃様は……」
「ああ、白い結婚だ。元々、退位が決まった時に、その話は兄から聞いている。もし王妃が望むのならば、兄は離縁に応じるつもりだったんだ」
「ですが二人は仲睦まじいと有名だったではないですか」
「そうだな。兄は王妃に惚れていたからな。だからこそ、病弱な自分のことが嫌になったなら離縁をしてあげようと決めていたようだ」
ある意味、これも愛の形なのだろうか。
ただそれを逆手にとって、キースと再婚を目論み、他の貴族女性を傷つけてきたその罪は決して許されることじゃないだろう。
さすがにこれは呆れてしまいう。
言い方は悪いが、そんなことのために。
王妃の欲望のためだけに、どれほどの令嬢たちが傷ついてきたのだろう。
あの馬車での事故も、今回の毒でもそう。
たまたま、死者が出なかったというだけ。
あくまでもそれは結果論であって、王妃にとってみれば死者が出てもいとわなかったということ。
呆れるレベルではないわね。
殺人を犯してまでも、その地位を守りたいなんて。
狂ってるって言われてもおかしくないわ。
「キース様はどうするおつもりだったのですか?」
「ここまで大きな話になっているとは思わなかったというのが本心だ。こんなことになる前に、対処しておけば良かった。全ては俺が浅慮だった」
「お断りしていたは、いたのですよね?」
「ああ、そうだ。さすがに義姉だった人と再婚する気はないさ。元々きちんと王妃候補を見つけ、王妃にはご退場願う予定だった。しかし他家にまでスパイを入り込ませてなどど」
「大がかりもいいところですね」
「ああ。あの人が王妃に固執する気持ちは、分からなくもない。ただそうであっても、決してこれは許されることではない」
キースがきっぱりと言い放つ。
その言葉に、私は少しほっとした。
心のどこかで、異性としてや家族として、思う心がまだあるのではないかと心配していたから。
だから良かったと本当に思う。
「だが、この後はどうする予定なんだ? こんな末端を吐かせたといえど、証拠がない以上シラを切るのは目に見えてる」
「そうですね。今、私たちの手元には証拠はない。なので、自白でもしてもらいましょう」
この侍女を捕まえてもらったのは、王妃の悪行の裏を取るため。
やっぱり悪いことをした人には痛い目にあってもらって、しっかり反省してもらわないとね。
「コレを使うんです。もちろん、あなたにも協力してもらうわ」
「そ、それは!」
侍女の部屋から差し押さえた茶葉を私は侍女に見せる。
これを盛った人間が、一番その効果を知っているはずだ。
「王妃様を毒殺するなんて」
「誰も毒殺するなんて言ってはないわ。それにあなたが、私にこれを盛ったのよ? 次期王妃には出来て、廃退される王妃には出来ないっていうのは少し違うんじゃない?」
「そ、それはそうですが。ですが、ですが」
「ま、あなたにコレを盛れなんて言わないわ。ただあなたは後から出てきてくれればいいの」
「それは、どういう意味だアイリス」
「ふふふ。やってみれば、すぐ分かりますよ」
私はキースにただそう告げると、静かにほほ笑んだ。
そしてただ簡単に役割と動きだけ説明すると、私たちは計画を実行に移した。
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