73 / 89
第四章
閑話休題 決意②(キース視点)
しおりを挟む
チェリーとの買い物のあと、帰宅するとにグレンからの小言攻撃をくらった。
人様の婚約者と、というのは確かに理解できた。
婚約者に許可を取らずに行ったというのは、不味かったとは思う。
ただ本来の問題点はそこではなかったのだ。
どうしてあの時気づかなかったんだろう。
あの店の位置は、冒険者ギルドから目と鼻の先にある。
もしチェリーがアイリスの行動を把握していたのなら、全ては彼女の計画通りだったのか。
あの日、アイリスはギルドの中にいた。
そしてすぐに、装飾店の前に停めた侯爵家の馬車を見つけただろう。
そうして店に近づけば、中にいる俺たちのことを見ることになる。
グレンの言うように、姉妹仲は芳しくないというよりはこれはすこし異常だ。
どうしてそこまで姉に固執するのか。
「私がいけないの? 私が……」
「アイリス」
ベッドに横たわったまま、宙を彷徨うアイリスの手を握った。
その手はまるで氷のように冷たい。
贈り物を届けた遣いからアイリスが倒れたとの報せを受け、すぐにグレンと共に侯爵家へと向かったのだ。
この贈り物のいきさつを聞いていたのか、侯爵は開口一番に帰ってくれと言い放った。
無理もない。全ては俺のせいなのだから。
でもだからこそ、こうなってしまったこと全てを心から謝罪したいと侯爵には素直に話した。
王族がとか、そんなものはどうでもいい。
全ては自分が招いた結果であり、アイリスにはきちんと顔を見て謝罪がしたかった。
その上で婚約が立ち消えするのならば、それでもいい。
こんな情けない、好きになった人間を傷つける人間など愛想をつかされても仕方がないから。
「アイリス、目を覚ましてくれ。悪いのは君じゃない。全ては僕のせいだ」
強く手を握ると、数時間ぶりにアイリスがその瞳を開ける。
しかしアイリスの意識はまだ朦朧としているようで、手を握った俺を見たがその視線は定まらない。
「……母さんはいつもあの子だけを可愛がった。二人で手を繋いで、楽しそうに歩くの。私はいつでも置いてきぼりで、構ってもらえなくて……。だからずっと褒めてほしくて、私は一人でもがんばったの」
「アイリス? それは何の」
まるで昔話をするように、アイリスが横を向いて話し始めた。
「父さんは家を全く顧みない人で、私たちを可愛がることはなかった。でも私がすれば怒るようなことでも、父さんはあの子には怒らなかった」
「……」
「私たちは同じなのに。同じなのに、何が違うの? 顔だって声だって全く同じなのに、なんであの子はみんなに愛されて、なんで私は一人ぼっちなの?」
「アイリス、記憶が」
「学校だって、いつもあの子が中心で……」
話を聞いているうちに、どこかその話がおかしなことに気付く。
同じとは、何を指すのだろう。
アイリスとチェリーでは髪の色も瞳の色も全く違う。
声も多少は似てはいても、同じではないのだ。
そして何より、チェリーはアイリスが通っていた王立の学園には通っていない。
一つのことがおかしいと思うと、その話全てがおかしく思えてくる。
侯爵夫人はとても子煩悩だと有名で、学園に入りたいと行ったアイリスの後押しをしたと聞いたことがある。
それに前にカフェに来ていた時も、とても仲の良い親子そのものだった。
侯爵は確かに仕事人間で職業柄、家に帰る時間は少ないかもしれない。
しかし娘のことは溺愛していて、相手が王族であっても俺の求婚を断るくらいの人だ。
「どうしてあの子は、いつでも私が欲しいと思うものを奪っていくの……。私がいけないの? いけなかったの? ちゃんと欲しいものは欲しいと……言わなかったから」
悲痛なアイリスの叫び。
その内容が分からなくても、今まで彼女がどれだけ傷ついてきたのかは想像がつく。
「違う。そんなことない。アイリスは何にも悪くない。そんな寂しい思いをしているアイリスのことを思ってやらなかった奴やが悪いんだ。どうして家族なのに、君が一人で悲しい思いをしなければいけないんだ。そんなのおかしいだろう」
思わす反論すると、アイリスは今まで見たどの笑顔よりも、幸せそうに笑った。
「キースは私のために怒ってくれるのね」
「俺だけじゃなくても、グレンだってそんなこと聞いたら、怒るさ。さあ、もう少し眠るんだ。俺はどこにも行かないよ。ずっとアイリスの側にいる。俺はアイリスだけのものだよ」
「ふふふ。最後の最後に、ずいぶん都合の良い夢だわ。でもそうね、それならきっと私は今度こそ幸せね」
開いているもう片方の手でアイリスの頬に触れた。
アイリスは目を細め、視線を一度こちらに向けた後、再び眠りについた。
先ほどの苦しそうに歪む顔とは違い、その顔はとても穏やかで小さな寝息を立てている。
「グレン、さっきのアイリスの話どう思う?」
「過去の話でしょう。おそらく、アイリスになる以前の」
「お前の言う、前世というやつか」
「ええ、おそらくは」
「どれだけお前の話を聞いてもずっと半信半疑だったんだけどな。でもアイリスの口から言われると、いよいよ現実なんだと思い知らされるよ」
前世の記憶があるというのは、一体どんな感覚なのか想像も付かないが、その過去が悲しみに溢れていたことだけはよく分かった。
それならば、今俺がアイリスにしてあげられることは何だろう。
アイリスがもう二度と、悲しみに泣き暮れないように出来ることは。
「それにしてもアイリスの言葉の中に何度か出てきた、同じというのは何だと思う?」
「先ほどから僕もそれを考えていたんですよ。これはまだ憶測でしかないのですが、双子という可能性はないですかね」
「そうか、同じ顔に同じ声。前世ではアイリスは双子だったということか。それなら確かに、先ほどの話の意味が通じるな」
「ええ。そしておそらく、その双子の片割れは……」
「もしかして、それがチェリー嬢か。まさか、そんな偶然があるのか」
だが、もしグレンの言うことが当たっているとしたら、神のいたずらにしては質が悪すぎるだろう。
ただ、なんとなく漠然としていたものがパズルのピースのように当てはまっていく気がした。
「最悪だな」
アイリスがそんな風に思っている相手と買い物をし、それをアイリスに渡してしまうなど。
本当に最悪で、最低な行為だ。
状況を考えもせず、そしてアイリスの気持ちを考えることもなく。
俺はなんて浅慮だったのだろう。
ただ彼女が喜ぶ顔が見たかった。
そのためにも妹から好みを聞いて、彼女が喜ぶものが贈りたかったというのに。
逆効果どころか、彼女をこんな風に追い詰めて苦しめてしまった。
どうすれば許されるのだろう。
謝罪だけではなく、彼女の望むすべてを叶えよう。
たとえそれが、俺にとっては望まない結果だとしても。
そう一人、心に決めた。
人様の婚約者と、というのは確かに理解できた。
婚約者に許可を取らずに行ったというのは、不味かったとは思う。
ただ本来の問題点はそこではなかったのだ。
どうしてあの時気づかなかったんだろう。
あの店の位置は、冒険者ギルドから目と鼻の先にある。
もしチェリーがアイリスの行動を把握していたのなら、全ては彼女の計画通りだったのか。
あの日、アイリスはギルドの中にいた。
そしてすぐに、装飾店の前に停めた侯爵家の馬車を見つけただろう。
そうして店に近づけば、中にいる俺たちのことを見ることになる。
グレンの言うように、姉妹仲は芳しくないというよりはこれはすこし異常だ。
どうしてそこまで姉に固執するのか。
「私がいけないの? 私が……」
「アイリス」
ベッドに横たわったまま、宙を彷徨うアイリスの手を握った。
その手はまるで氷のように冷たい。
贈り物を届けた遣いからアイリスが倒れたとの報せを受け、すぐにグレンと共に侯爵家へと向かったのだ。
この贈り物のいきさつを聞いていたのか、侯爵は開口一番に帰ってくれと言い放った。
無理もない。全ては俺のせいなのだから。
でもだからこそ、こうなってしまったこと全てを心から謝罪したいと侯爵には素直に話した。
王族がとか、そんなものはどうでもいい。
全ては自分が招いた結果であり、アイリスにはきちんと顔を見て謝罪がしたかった。
その上で婚約が立ち消えするのならば、それでもいい。
こんな情けない、好きになった人間を傷つける人間など愛想をつかされても仕方がないから。
「アイリス、目を覚ましてくれ。悪いのは君じゃない。全ては僕のせいだ」
強く手を握ると、数時間ぶりにアイリスがその瞳を開ける。
しかしアイリスの意識はまだ朦朧としているようで、手を握った俺を見たがその視線は定まらない。
「……母さんはいつもあの子だけを可愛がった。二人で手を繋いで、楽しそうに歩くの。私はいつでも置いてきぼりで、構ってもらえなくて……。だからずっと褒めてほしくて、私は一人でもがんばったの」
「アイリス? それは何の」
まるで昔話をするように、アイリスが横を向いて話し始めた。
「父さんは家を全く顧みない人で、私たちを可愛がることはなかった。でも私がすれば怒るようなことでも、父さんはあの子には怒らなかった」
「……」
「私たちは同じなのに。同じなのに、何が違うの? 顔だって声だって全く同じなのに、なんであの子はみんなに愛されて、なんで私は一人ぼっちなの?」
「アイリス、記憶が」
「学校だって、いつもあの子が中心で……」
話を聞いているうちに、どこかその話がおかしなことに気付く。
同じとは、何を指すのだろう。
アイリスとチェリーでは髪の色も瞳の色も全く違う。
声も多少は似てはいても、同じではないのだ。
そして何より、チェリーはアイリスが通っていた王立の学園には通っていない。
一つのことがおかしいと思うと、その話全てがおかしく思えてくる。
侯爵夫人はとても子煩悩だと有名で、学園に入りたいと行ったアイリスの後押しをしたと聞いたことがある。
それに前にカフェに来ていた時も、とても仲の良い親子そのものだった。
侯爵は確かに仕事人間で職業柄、家に帰る時間は少ないかもしれない。
しかし娘のことは溺愛していて、相手が王族であっても俺の求婚を断るくらいの人だ。
「どうしてあの子は、いつでも私が欲しいと思うものを奪っていくの……。私がいけないの? いけなかったの? ちゃんと欲しいものは欲しいと……言わなかったから」
悲痛なアイリスの叫び。
その内容が分からなくても、今まで彼女がどれだけ傷ついてきたのかは想像がつく。
「違う。そんなことない。アイリスは何にも悪くない。そんな寂しい思いをしているアイリスのことを思ってやらなかった奴やが悪いんだ。どうして家族なのに、君が一人で悲しい思いをしなければいけないんだ。そんなのおかしいだろう」
思わす反論すると、アイリスは今まで見たどの笑顔よりも、幸せそうに笑った。
「キースは私のために怒ってくれるのね」
「俺だけじゃなくても、グレンだってそんなこと聞いたら、怒るさ。さあ、もう少し眠るんだ。俺はどこにも行かないよ。ずっとアイリスの側にいる。俺はアイリスだけのものだよ」
「ふふふ。最後の最後に、ずいぶん都合の良い夢だわ。でもそうね、それならきっと私は今度こそ幸せね」
開いているもう片方の手でアイリスの頬に触れた。
アイリスは目を細め、視線を一度こちらに向けた後、再び眠りについた。
先ほどの苦しそうに歪む顔とは違い、その顔はとても穏やかで小さな寝息を立てている。
「グレン、さっきのアイリスの話どう思う?」
「過去の話でしょう。おそらく、アイリスになる以前の」
「お前の言う、前世というやつか」
「ええ、おそらくは」
「どれだけお前の話を聞いてもずっと半信半疑だったんだけどな。でもアイリスの口から言われると、いよいよ現実なんだと思い知らされるよ」
前世の記憶があるというのは、一体どんな感覚なのか想像も付かないが、その過去が悲しみに溢れていたことだけはよく分かった。
それならば、今俺がアイリスにしてあげられることは何だろう。
アイリスがもう二度と、悲しみに泣き暮れないように出来ることは。
「それにしてもアイリスの言葉の中に何度か出てきた、同じというのは何だと思う?」
「先ほどから僕もそれを考えていたんですよ。これはまだ憶測でしかないのですが、双子という可能性はないですかね」
「そうか、同じ顔に同じ声。前世ではアイリスは双子だったということか。それなら確かに、先ほどの話の意味が通じるな」
「ええ。そしておそらく、その双子の片割れは……」
「もしかして、それがチェリー嬢か。まさか、そんな偶然があるのか」
だが、もしグレンの言うことが当たっているとしたら、神のいたずらにしては質が悪すぎるだろう。
ただ、なんとなく漠然としていたものがパズルのピースのように当てはまっていく気がした。
「最悪だな」
アイリスがそんな風に思っている相手と買い物をし、それをアイリスに渡してしまうなど。
本当に最悪で、最低な行為だ。
状況を考えもせず、そしてアイリスの気持ちを考えることもなく。
俺はなんて浅慮だったのだろう。
ただ彼女が喜ぶ顔が見たかった。
そのためにも妹から好みを聞いて、彼女が喜ぶものが贈りたかったというのに。
逆効果どころか、彼女をこんな風に追い詰めて苦しめてしまった。
どうすれば許されるのだろう。
謝罪だけではなく、彼女の望むすべてを叶えよう。
たとえそれが、俺にとっては望まない結果だとしても。
そう一人、心に決めた。
5
お気に入りに追加
873
あなたにおすすめの小説
オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか〜
ひろのひまり
恋愛
生まれ変わったらそこは異世界だった。
沢山の魔力に助けられ生まれてこれた主人公リリィ。彼女がこれから生きる世界は所謂乙女ゲームと呼ばれるファンタジーな世界である。
だが、彼女はそんな情報を知るよしもなく、ただ普通に過ごしているだけだった。が、何故か無関係なはずなのに乙女ゲーム関係者達、攻略対象者、悪役令嬢等を無自覚に誑かせて関わってしまうというお話です。
モブなのに魔法チート。
転生者なのにモブのド素人。
ゲームの始まりまでに時間がかかると思います。
異世界転生書いてみたくて書いてみました。
投稿はゆっくりになると思います。
本当のタイトルは
乙女ゲームに転生したらしい私の人生は全くの無関係な筈なのに何故か無自覚に巻き込まれる運命らしい〜乙女ゲーやった事ないんですが大丈夫でしょうか?〜
文字数オーバーで少しだけ変えています。
なろう様、ツギクル様にも掲載しています。
【完結】アラサー喪女が転生したら悪役令嬢だった件。断罪からはじまる悪役令嬢は、回避不能なヤンデレ様に溺愛を確約されても困ります!
美杉。節約令嬢、書籍化進行中
恋愛
『ルド様……あなたが愛した人は私ですか? それともこの体のアーシエなのですか?』
そんな風に簡単に聞くことが出来たら、どれだけ良かっただろう。
目が覚めた瞬間、私は今置かれた現状に絶望した。
なにせ牢屋に繋がれた金髪縦ロールの令嬢になっていたのだから。
元々は社畜で喪女。挙句にオタクで、恋をすることもないままの死亡エンドだったようで、この世界に転生をしてきてしあったらしい。
ただまったく転生前のこの令嬢の記憶がなく、ただ状況から断罪シーンと私は推測した。
いきなり生き返って死亡エンドはないでしょう。さすがにこれは神様恨みますとばかりに、私はその場で断罪を行おうとする王太子ルドと対峙する。
なんとしても回避したい。そう思い行動をした私は、なぜか回避するどころか王太子であるルドとのヤンデレルートに突入してしまう。
このままヤンデレルートでの死亡エンドなんて絶対に嫌だ。なんとしても、ヤンデレルートを溺愛ルートへ移行させようと模索する。
悪役令嬢は誰なのか。私は誰なのか。
ルドの溺愛が加速するごとに、彼の愛する人が本当は誰なのかと、だんだん苦しくなっていく――
婚約破棄されたので歴代最高の悪役令嬢になりました
Ryo-k
ファンタジー
『悪役令嬢』
それすなわち、最高の貴族令嬢の資格。
最高の貴族令嬢の資格であるがゆえに、取得難易度もはるかに高く、10年に1人取得できるかどうか。
そして王子から婚約破棄を宣言された公爵令嬢は、最高の『悪役令嬢』となりました。
さらに明らかになる王子の馬鹿っぷりとその末路――
モブ令嬢ですが、悪役令嬢の妹です。
霜月零
恋愛
私は、ある日思い出した。
ヒロインに、悪役令嬢たるお姉様が言った一言で。
「どうして、このお茶会に平民がまぎれているのかしら」
その瞬間、私はこの世界が、前世やってた乙女ゲームに酷似した世界だと気が付いた。
思い出した私がとった行動は、ヒロインをこの場から逃がさない事。
だってここで走り出されたら、婚約者のいる攻略対象とヒロインのフラグが立っちゃうんだもの!!!
略奪愛ダメ絶対。
そんなことをしたら国が滅ぶのよ。
バッドエンド回避の為に、クリスティーナ=ローエンガルデ。
悪役令嬢の妹だけど、前世の知識総動員で、破滅の運命回避して見せます。
※他サイト様にも掲載中です。
婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから
ひじり
恋愛
「エナ、僕は真実の愛を見つけたんだ。その相手はもちろん、きみじゃない。だから僕が何を言いたいのか分かるよね?」
男爵令嬢のエナ・ローリアは、幼い頃にリック・ティーレンスからのプロポーズを受けた。
将来を誓い合った二人は両家公認の仲になったが、ティーレンス家が子爵に陞爵した日を境に、すれ違う日が増えていった。
そして結婚式を前日に控えたある日、エナはリックから婚約を一方的に破棄されてしまう。
リックの新しい相手――カルデ・リスタは伯爵令嬢だ。しかし注目すべきはそこじゃない。カルデは異世界転生者であった。地位や名誉はもちろんのこと、財産や魔力の差においても、男爵令嬢のエナとは格が違う。
エナはリックの気持ちを尊重するつもりだったが、追い打ちをかける出来事がローリア家を襲う。
カルデからリックを横取りしようとした背信行為で、ローリア家は爵位を剥奪されることになったのだ。
事実無根だと訴えるが、王国は聞く耳を持たず。異世界転生者と男爵家の人間では、言葉の重みが違う。貴族の地位を失った父――ロド・ローリアは投獄され、エナ自身は国外追放処分となった。
「悪いわね~、エナ? あんたが持ってたもの、ぜーんぶあたしが貰っちゃった♪」
荷物をまとめて王都を発つ日、リックとカルデが見送りにくる。リックに婚約破棄されたことも、爵位剥奪されたことも、全てはこいつのしわざか、と確信する。
だからエナは宣言することにした。
「婚約破棄の次は爵位剥奪ですか? 構いませんよ、金の力で取り戻しますから」
※異世界転生者有り、魔法有りの世界観になります。
悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?
りーさん
恋愛
気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?
こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。
他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。
もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!
そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……?
※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。
1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる