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第四章
第五十六話 共闘
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「そうなのよね。いないから、困ったものだわ。しばらくはキースが王政を一人で支えなくてはいけなくなってしまうもの」
そう言いながらも、王妃は上機嫌だ。
でも父が話してくれた内容とは、明らかに違う。
混乱を招かないためにも、国王の退位とキースの即位は同時。
そしてその時に、婚約又は王妃も決まるという話だったハズ。
この言い分だと、王妃未定のままキース一人が王政を背負うことになってしまうじゃない。
「でもそれでは……」
「そぅなのよ。やはり一人というのは何かと大変でしょう? それにキースは今まで国政に携わってきていないわけだし」
「……」
そうか。表向きは、まだ携わってないことになってるのね。
もう十分すぎるほど、キースもグレンも仕事しているのに。
まぁ、仕事の領域が違うから王妃様が知らないのも無理はないだろうけど。
ああ、でもなんとなく、この人の魂胆が分かってしまうのが嫌な感じね。
全然聞いていた王妃像と違うっていうか、なんというか。
話、まとまってないんじゃないの。
「だからわたくしがココに残ってキースを支えようと思ってるのょ」
満面の笑み。
それも本当に女性らしい、笑みを王妃は浮かべた。
なんていうのかな。ああ、恋する乙女みたいな?
でも勘違いも甚だしいでしょう。
この方は現王妃であって、次期王妃にはもちろんなれはしない。
今このタイミングでその身分を明け渡さないにしても、いつかというものはやってくる。
それなのに、そんなモノにしがみついて何になるんだろう。
そんなにまでして、権力を維持したいものなのかな。
私には、ある意味まったく理解できない世界だわ。
「チェリー難しいことは良く分からないのですがぁ、グレン様が他国の王女も視野に入れてとは言ってましたけどね。王妃さまと国王様を引き離してしまうなんて、そんな忍びないこと。きっと誰もさせないと思いますよぉ」
チェリーが小首をかしげながら、王妃に微笑みかける。
直訳しなくても、嫌味だということはこの場の全員が分かっているはず。
周りの令嬢たちも、どう反応していいか困ったような表情で顔を見合わせていた。
でも今回ばかりは、チェリーの言い分の方が正しいだろう。
前王妃だけが国政に残るなど聞いたこともないし、小姑が居座るってなんだかなぁ。
「でもそうですね。さすがに王妃様にご迷惑をおかけするなど、宰相たちには頑張っていただかないと」
「なに、姉さま、もしかしてグレン様のこと悪く言うつもりなんですの」
「だって仕事が出来ないから、こんな王妃様に気苦労をかけてしまっているんじゃない。本来ならば、きっと国王様と退位されて静かにご養生が出来るはずなのに。それを駆り出そうだなんて」
「でもそれって、キース様が今まで真面目に婚約者を決めて来なかったことがいけないんではないですの?」
「結局、どっちどっちで殿方は宛にならないということですよね、王妃様」
私たちの言葉に、まるで苦虫を嚙み潰したような顔を王妃はしていた。
まぁわざと言っているんだから、それはそうでしょうね。
グレンたちにその罪をなすりつけながらも、王妃の出番などないと言ってるのだから。
チェリーと共闘する気などさらさらないけど、さすがにこの思惑だけは通したくなどなかった。
なんていうのか、王妃様の思惑はもっと違う方向を向いている気がするから。
そう言いながらも、王妃は上機嫌だ。
でも父が話してくれた内容とは、明らかに違う。
混乱を招かないためにも、国王の退位とキースの即位は同時。
そしてその時に、婚約又は王妃も決まるという話だったハズ。
この言い分だと、王妃未定のままキース一人が王政を背負うことになってしまうじゃない。
「でもそれでは……」
「そぅなのよ。やはり一人というのは何かと大変でしょう? それにキースは今まで国政に携わってきていないわけだし」
「……」
そうか。表向きは、まだ携わってないことになってるのね。
もう十分すぎるほど、キースもグレンも仕事しているのに。
まぁ、仕事の領域が違うから王妃様が知らないのも無理はないだろうけど。
ああ、でもなんとなく、この人の魂胆が分かってしまうのが嫌な感じね。
全然聞いていた王妃像と違うっていうか、なんというか。
話、まとまってないんじゃないの。
「だからわたくしがココに残ってキースを支えようと思ってるのょ」
満面の笑み。
それも本当に女性らしい、笑みを王妃は浮かべた。
なんていうのかな。ああ、恋する乙女みたいな?
でも勘違いも甚だしいでしょう。
この方は現王妃であって、次期王妃にはもちろんなれはしない。
今このタイミングでその身分を明け渡さないにしても、いつかというものはやってくる。
それなのに、そんなモノにしがみついて何になるんだろう。
そんなにまでして、権力を維持したいものなのかな。
私には、ある意味まったく理解できない世界だわ。
「チェリー難しいことは良く分からないのですがぁ、グレン様が他国の王女も視野に入れてとは言ってましたけどね。王妃さまと国王様を引き離してしまうなんて、そんな忍びないこと。きっと誰もさせないと思いますよぉ」
チェリーが小首をかしげながら、王妃に微笑みかける。
直訳しなくても、嫌味だということはこの場の全員が分かっているはず。
周りの令嬢たちも、どう反応していいか困ったような表情で顔を見合わせていた。
でも今回ばかりは、チェリーの言い分の方が正しいだろう。
前王妃だけが国政に残るなど聞いたこともないし、小姑が居座るってなんだかなぁ。
「でもそうですね。さすがに王妃様にご迷惑をおかけするなど、宰相たちには頑張っていただかないと」
「なに、姉さま、もしかしてグレン様のこと悪く言うつもりなんですの」
「だって仕事が出来ないから、こんな王妃様に気苦労をかけてしまっているんじゃない。本来ならば、きっと国王様と退位されて静かにご養生が出来るはずなのに。それを駆り出そうだなんて」
「でもそれって、キース様が今まで真面目に婚約者を決めて来なかったことがいけないんではないですの?」
「結局、どっちどっちで殿方は宛にならないということですよね、王妃様」
私たちの言葉に、まるで苦虫を嚙み潰したような顔を王妃はしていた。
まぁわざと言っているんだから、それはそうでしょうね。
グレンたちにその罪をなすりつけながらも、王妃の出番などないと言ってるのだから。
チェリーと共闘する気などさらさらないけど、さすがにこの思惑だけは通したくなどなかった。
なんていうのか、王妃様の思惑はもっと違う方向を向いている気がするから。
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