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第四章
第五十五話 見え隠れする本音
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「この国初の精霊使いっていうなら、冒険者なんかよりも教会に保護されるべきではないんですか?」
「まぁ、チェリー嬢。いくらご自分の姉だからといって、そのような優遇を申し出るなんて」
「そうですわ。少し図々しいのではないんですの?」
「でもぉ、精霊ってようは神の使いですよね。他国では、精霊使いは神の遣いとされるところもあるってグレン様から聞きましたよ~」
「そ、それはそうかもしれませんが」
「皆さまは神をないがしろになさるんですのぉ? わたしはそんなのバチが当たりそうで怖いですわぁ」
畳みかけるようなチェリーの言葉に、令嬢たちは黙り込む。
言っていることが正論なだけに、言い返すことは出来ないだろう。
精霊使いと、魔法使いとでも一緒にしようと令嬢たちは思っていたのかな。
冒険者に~なあたりから、無理なこじつけしようとするから、言い返されるのよ。
「でも、でもだからといって、精霊使いだからキース様の婚約者にだなんて」
王妃に一番近い令嬢は、自分の言葉を言い放った後に固まった。
そして自分の口を抑え、真っ青になりながらゆっくりと王妃の顔色を伺う。
眉間にシワをよせ、王妃は不機嫌さを隠そうとはしない。
「あ、あの。王妃様、わたしは……その」
「姉が、キース様の婚約者に決定したわけではありませんわ」
「そうね、まだ、報告はされていないものね」
チェリーの言葉に、王妃はやや不満そうに答えた。
「いいのではないかしら、教会に保護してもらえば」
「そ、そうですね。王妃様の言う通りですね」
令嬢たちが王妃を持ち上げる姿は、滑稽に思える。
王妃が右と言えば、右。
たとえそれが間違っていたとしても。
そんな風に思えて仕方ない。
彼女たちはそれで楽しいのかな。
ううん。それよりも王妃様こそ、イエスしか言わない者たちに囲まれてそれで幸せなのかしら。
自分が間違ってても、誰も正してくれないなんて。
私なら虚しくなりそう。
「でも例え教会に保護されたところで、お妃教育も受けていないようなぽっと出の令嬢がなれるようなモノではないわ。王妃という立場は、ね」
「ええ、本当ですわ。次期王妃が精霊使いだなんて、聞いたことないですわ」
「王妃という者は、威厳と博識があり、尚且つ全ての令嬢たちの見本となれるような方でないと」
「今の王妃様のような方はこの国にはいらっしゃらないですわ」
私がキースから婚約を打診されているから。
だから次期王妃には向かない。
そう釘を刺したいがための、このお茶会だったのね。
初めから、これを言いたくて呼んだってことか。
精霊使いを馬鹿にしするのも、冒険者を馬鹿にするのも全部、このため。
次期王妃にはなれやしない。
それこそが王妃の本音なのだろう。
あの謁見の時から感じてた嫌な感じはこれだったのね。
王が退位し、王妃と仲睦まじくという話かと思ってたら、全然違うじゃない。
王妃は王の退位に納得してないっていうか、自分の地位を譲る気はなさそう。
「そうですね。私では次期王妃という立場は重いかもしれません。今までそういった教育を受けてきてはいませんし」
「では、お断りするのかしら」
私の返答に、王妃は急にご機嫌を取り戻す。
露骨すぎるでしょう。
仮にも一国の王妃のする態度ではないわね。
「ただ、でしたら王妃様は誰は次期王妃にと思いになりますか? 私ではなくとも、他にお妃教育を受けてきた者などいなかったはずですが」
そう。この国に、未婚の公女はいない。
身分としては、今侯爵家が一番王族に近い。
しかし退位の話は私たちにとっても寝耳に水だったから、お妃教育など受けてきた者はいないはずなのだ。
王妃はそのことも知っている上で、誰を押すというのだろう。
「まぁ、チェリー嬢。いくらご自分の姉だからといって、そのような優遇を申し出るなんて」
「そうですわ。少し図々しいのではないんですの?」
「でもぉ、精霊ってようは神の使いですよね。他国では、精霊使いは神の遣いとされるところもあるってグレン様から聞きましたよ~」
「そ、それはそうかもしれませんが」
「皆さまは神をないがしろになさるんですのぉ? わたしはそんなのバチが当たりそうで怖いですわぁ」
畳みかけるようなチェリーの言葉に、令嬢たちは黙り込む。
言っていることが正論なだけに、言い返すことは出来ないだろう。
精霊使いと、魔法使いとでも一緒にしようと令嬢たちは思っていたのかな。
冒険者に~なあたりから、無理なこじつけしようとするから、言い返されるのよ。
「でも、でもだからといって、精霊使いだからキース様の婚約者にだなんて」
王妃に一番近い令嬢は、自分の言葉を言い放った後に固まった。
そして自分の口を抑え、真っ青になりながらゆっくりと王妃の顔色を伺う。
眉間にシワをよせ、王妃は不機嫌さを隠そうとはしない。
「あ、あの。王妃様、わたしは……その」
「姉が、キース様の婚約者に決定したわけではありませんわ」
「そうね、まだ、報告はされていないものね」
チェリーの言葉に、王妃はやや不満そうに答えた。
「いいのではないかしら、教会に保護してもらえば」
「そ、そうですね。王妃様の言う通りですね」
令嬢たちが王妃を持ち上げる姿は、滑稽に思える。
王妃が右と言えば、右。
たとえそれが間違っていたとしても。
そんな風に思えて仕方ない。
彼女たちはそれで楽しいのかな。
ううん。それよりも王妃様こそ、イエスしか言わない者たちに囲まれてそれで幸せなのかしら。
自分が間違ってても、誰も正してくれないなんて。
私なら虚しくなりそう。
「でも例え教会に保護されたところで、お妃教育も受けていないようなぽっと出の令嬢がなれるようなモノではないわ。王妃という立場は、ね」
「ええ、本当ですわ。次期王妃が精霊使いだなんて、聞いたことないですわ」
「王妃という者は、威厳と博識があり、尚且つ全ての令嬢たちの見本となれるような方でないと」
「今の王妃様のような方はこの国にはいらっしゃらないですわ」
私がキースから婚約を打診されているから。
だから次期王妃には向かない。
そう釘を刺したいがための、このお茶会だったのね。
初めから、これを言いたくて呼んだってことか。
精霊使いを馬鹿にしするのも、冒険者を馬鹿にするのも全部、このため。
次期王妃にはなれやしない。
それこそが王妃の本音なのだろう。
あの謁見の時から感じてた嫌な感じはこれだったのね。
王が退位し、王妃と仲睦まじくという話かと思ってたら、全然違うじゃない。
王妃は王の退位に納得してないっていうか、自分の地位を譲る気はなさそう。
「そうですね。私では次期王妃という立場は重いかもしれません。今までそういった教育を受けてきてはいませんし」
「では、お断りするのかしら」
私の返答に、王妃は急にご機嫌を取り戻す。
露骨すぎるでしょう。
仮にも一国の王妃のする態度ではないわね。
「ただ、でしたら王妃様は誰は次期王妃にと思いになりますか? 私ではなくとも、他にお妃教育を受けてきた者などいなかったはずですが」
そう。この国に、未婚の公女はいない。
身分としては、今侯爵家が一番王族に近い。
しかし退位の話は私たちにとっても寝耳に水だったから、お妃教育など受けてきた者はいないはずなのだ。
王妃はそのことも知っている上で、誰を押すというのだろう。
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