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第三章

第五十話 深夜の秘め事

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 目が覚めてから、さらに数日、結局私は一週間ほどベッド生活を余儀なくされた。

 もう起き上がっても大丈夫だとは言っても、この後控える国王様たちとの謁見を考えゆっくりするよう皆に口々言われたのだ。

 ただチェリーだけは、相変わらずいつもの感じだったなぁ。

 たかが偶然子どもを助けられただけで、国王様からの褒美などあり得ないと。

 そんな風に憤慨するチェリーに、人の命を助けることにかたがはないと、父がお説教してたんだけど。

 でも、あながちチェリーの言ってることも間違ってないのよね。

 元々、あそこで頑張っていたのは冒険者の人たちなわけだし。

 私はたまたま、リンの力で子どもを助けられたにすぎない。

 私の力で~とか、褒美が~とか、なんかそういうのは違うと思うのよね。


「まーだ、そんなコト言ってるリンか?」

「あら、口に出てた?」
 

 小さなブローチになったままのリンが声をかけてきた。

 チェリーの凸を恐れて、この数日リンにはずっと外に出ないようにしてもらっていた。


「リン、こんな夜中だし元のサイズに戻っても大丈夫よ。ごめんね、窮屈な思いをさせちゃって」

「大丈夫リン。それよりご主人サマこそ、こんな時間に起きても大丈夫リン?」


 窓の外はすっかり夜も更け、空には小さな星が浮かんでいる。

 屋敷の中もすっかり音はなく静かで、みんな寝静まっている頃だろう。


「だってこのところずっとベッド生活なんだもん。さすがにもう眠れないわ」

「いきなり力を使ったから、ま、それも仕方ないリン」


 ぼわんという音を立てながら、リンが大きくなる。

 これだけは、なんかいつ見てもアニメの世界なのよね。

 昔あったような、少女戦隊ものの変身シーンみたいな。

 でも、あの濁流に入ったのに汚れなくてよかったわ。

 洗濯しないとと思ってたぐらいだもの。


「あ、またご主人サマ変なコト考えてたでしょ」

「変なコトって。洗濯しないとリンが汚れてしまったんじゃないかなって。あ、でも今は生きてるからお風呂入れないと、かな」


 精霊ってお風呂入る生き物ではないことは、なんとなく分かるんだけど。

 でも普通は入った方が綺麗よね。


「精霊はお風呂入らないリン。だって汚れないリンもん」

「どういう仕組みになってるの?」

「ん-。仕組みって言われても。基本的な造りが人とは違うリン。ボクの着ている服や姿かたちも、ご主人サマが想像した形になっているだけで本物ではないリン」

「本物ではない?」

「なんて言ったらいいリンかねぇ。服すら、魂そのもので形成されてるって感じリンかね」


 服や形すらも、魂の一部。

 確かに、リンの姿を想像して今の綺麗な形になったのは私がそう想像したから。

 
「ん、あれ。でも待って。もしそうなら、リンが他の形になることも出来るってこと?」

「もちろんリン」


 リンは腰に手を当て、えへんと言わんばかりに胸を張った。
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