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第三章
第四十四話 急な報せ
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片付けも終わり、入口へ戻ると冒険者たちはすっかり宴会を堪能していた。
アンジーさんすら呆れているところを見ると、普段はあまりこんなことにはならないのだろう。
でも、少しでも喜んでもらえてよかった。
私もお祭りに参加しているようで楽しかったし。
そう考えると、誰かと何かを一緒に楽しむこともしてなかったんだなぁ。
最後に夏祭りに行ったのすら、いつだったかしら。
「アンジーさん、みなさんのこと頼んでもいいですか?」
「何とかするから大丈夫よ。今日は疲れたでしょう。気を付けて帰るのよ」
「はい。疲れたけど、すごく楽しかったです。またお邪魔してもいいですか?」
「こっちは全然かまわないけど、大丈夫なの?」
アンジーさんは少し心配そうな表情を浮べる。
大丈夫というのは、暇が~ってことかな。
「ん-。暇してますから」
「ああ、そっちじゃなくて。親御さんとか、貴族としてこんなトコに出入りして怒られないかってことよ」
「そっちはたぶん大丈夫かと思いますけど。あー。もしかするとお父様が娘が冒険者にならないか心配するかも」
「貴族からの冒険者。あ、それも案外アリかもしれないわね。もし就職先で困ったら、ここの受付嬢でもすれないいのよ」
「えー、いいんですか。それはうれしい」
まさか、魔物料理をしただけで就職先までゲット出来るなんて。
ふふふ。これでもしこの先、何かあっても問題なさそうね。
「もう。アイリスちゃんはホントに変わってるわ。冒険者ギルドの受付嬢でよろこぶなんて」
「そうですか~? だって貴族の女性は結婚出来なければ全く活用方法ないんですよ」
「あははは! 活用方法って。やだそれ」
私の言葉に、アンジーさんは体をくの字に曲げて笑い出す。
そんなにツボかなぁ。
だってホントのことなのに。
「アイリスちゃん、ホントに最高ね。貴族の概念覆るわ。ホントに、絶対何かあったら来なさいよ」
「ふふふ。何もなくても、きちゃいます」
「あ、お嬢様。馬車が来たみたいですよ」
外を見ていたルカが声を上げる。
先ほど出した遣いが馬車を呼んできてくれたらしい。
では、と別れの挨拶を済まし、私たちはギルドの出口へと向かう。
ルカがドアに手をかけようとした時、反対側、つまり入ってくる方からドアが勢いよく開いた。
「きゃぁ」
ルカが驚いた拍子に、その場に尻もちをつく。
「ルカ、大丈夫?」
私は入ってきた大柄な冒険者を横目に、ルカに手を貸した。
「すまない! みんな大変だ。鉄砲水で人が流された! 手が空いてる奴はすぐ来てくれ」
「なんだって!」
「すぐ行く!」
「みんなロープなど持って行くぞ」
先ほどまでの平和な宴会の雰囲気が一瞬で消え、みんなの顔つきが変わる。
昨晩、王都ではない地域で雨が降っていたとは使用人たちが話しているのは聞いた。
でもだからといって、鉄砲水だなんて。
少なくとも、ココでの記憶があるうちでは初めてな気がする。
冒険者たちは手際よく、いろいろな装備を身に着けると、急いでギルドから出ていく。
「急にこんなことになるなんて、一体どうしたんでしょう」
「アイリスちゃん、せっかくいい雰囲気だったのにごめんね。あたしも行かないと」
人が流された。
でも私が行ったところで……。
だけど、もしかしたら何か少しでも手伝えるかもしれない。
「私も行きます!」
「アイリスちゃん、これは遊びでは……。って、だめと言ってもついてくる気でしょう」
私の顔を見たアンジーさんが大きくため息をつく。
「いい、ついても絶対に危ないことはしない。これがあたしとの約束よ」
「はい!」
「お嬢様! 危険すぎます」
「分かってる。でもこのまま何もなかったように帰ることなんて出来ないもの」
「……分かりました。ルカも同行します。お嬢様を守るのが役目ですから」
「そうと決まれば、走るわよ!」
「「はい」」
そう言って走り出すアンジーさんの後ろに、私たちは続いた。
この時は、この先の惨状など私たちには思いつくわけもなかった。
アンジーさんすら呆れているところを見ると、普段はあまりこんなことにはならないのだろう。
でも、少しでも喜んでもらえてよかった。
私もお祭りに参加しているようで楽しかったし。
そう考えると、誰かと何かを一緒に楽しむこともしてなかったんだなぁ。
最後に夏祭りに行ったのすら、いつだったかしら。
「アンジーさん、みなさんのこと頼んでもいいですか?」
「何とかするから大丈夫よ。今日は疲れたでしょう。気を付けて帰るのよ」
「はい。疲れたけど、すごく楽しかったです。またお邪魔してもいいですか?」
「こっちは全然かまわないけど、大丈夫なの?」
アンジーさんは少し心配そうな表情を浮べる。
大丈夫というのは、暇が~ってことかな。
「ん-。暇してますから」
「ああ、そっちじゃなくて。親御さんとか、貴族としてこんなトコに出入りして怒られないかってことよ」
「そっちはたぶん大丈夫かと思いますけど。あー。もしかするとお父様が娘が冒険者にならないか心配するかも」
「貴族からの冒険者。あ、それも案外アリかもしれないわね。もし就職先で困ったら、ここの受付嬢でもすれないいのよ」
「えー、いいんですか。それはうれしい」
まさか、魔物料理をしただけで就職先までゲット出来るなんて。
ふふふ。これでもしこの先、何かあっても問題なさそうね。
「もう。アイリスちゃんはホントに変わってるわ。冒険者ギルドの受付嬢でよろこぶなんて」
「そうですか~? だって貴族の女性は結婚出来なければ全く活用方法ないんですよ」
「あははは! 活用方法って。やだそれ」
私の言葉に、アンジーさんは体をくの字に曲げて笑い出す。
そんなにツボかなぁ。
だってホントのことなのに。
「アイリスちゃん、ホントに最高ね。貴族の概念覆るわ。ホントに、絶対何かあったら来なさいよ」
「ふふふ。何もなくても、きちゃいます」
「あ、お嬢様。馬車が来たみたいですよ」
外を見ていたルカが声を上げる。
先ほど出した遣いが馬車を呼んできてくれたらしい。
では、と別れの挨拶を済まし、私たちはギルドの出口へと向かう。
ルカがドアに手をかけようとした時、反対側、つまり入ってくる方からドアが勢いよく開いた。
「きゃぁ」
ルカが驚いた拍子に、その場に尻もちをつく。
「ルカ、大丈夫?」
私は入ってきた大柄な冒険者を横目に、ルカに手を貸した。
「すまない! みんな大変だ。鉄砲水で人が流された! 手が空いてる奴はすぐ来てくれ」
「なんだって!」
「すぐ行く!」
「みんなロープなど持って行くぞ」
先ほどまでの平和な宴会の雰囲気が一瞬で消え、みんなの顔つきが変わる。
昨晩、王都ではない地域で雨が降っていたとは使用人たちが話しているのは聞いた。
でもだからといって、鉄砲水だなんて。
少なくとも、ココでの記憶があるうちでは初めてな気がする。
冒険者たちは手際よく、いろいろな装備を身に着けると、急いでギルドから出ていく。
「急にこんなことになるなんて、一体どうしたんでしょう」
「アイリスちゃん、せっかくいい雰囲気だったのにごめんね。あたしも行かないと」
人が流された。
でも私が行ったところで……。
だけど、もしかしたら何か少しでも手伝えるかもしれない。
「私も行きます!」
「アイリスちゃん、これは遊びでは……。って、だめと言ってもついてくる気でしょう」
私の顔を見たアンジーさんが大きくため息をつく。
「いい、ついても絶対に危ないことはしない。これがあたしとの約束よ」
「はい!」
「お嬢様! 危険すぎます」
「分かってる。でもこのまま何もなかったように帰ることなんて出来ないもの」
「……分かりました。ルカも同行します。お嬢様を守るのが役目ですから」
「そうと決まれば、走るわよ!」
「「はい」」
そう言って走り出すアンジーさんの後ろに、私たちは続いた。
この時は、この先の惨状など私たちには思いつくわけもなかった。
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