大嫌いな双子の妹と転生したら、悪役令嬢に仕立て上げられました。

美杉。祝、サレ妻コミカライズ化

文字の大きさ
上 下
23 / 89
第一章

第二十話 ボクは精霊なんだリン

しおりを挟む
 あれからくまさんとは明け方までいろんなことを話した。

 過去、唯花だった時のコト。

 そして今置かれている現状。

 くまさんにならどんなことでも話すことが出来たし、弱い自分をさらけ出せた。


「そういえば、どうして今まで話しかけてくれなかったの?」

「だってご主人サマ、ご主人サマにはついこの前まで前世の記憶がなかったリンから~」


 ああ、確かに。

 私が記憶を取り戻したのはつい最近のこと。

 記憶を取り戻す前に語り掛けられても、まったく意味不明だっただろう。

 むしろいきなりくまの人形に話しかけられたら、ある意味ホラーよね。


「ごめんね、私全然気づかなくて」

「大丈夫リンょ。ご主人サマがたとえボクのことが分からなくたって、そばにいるだけでボクは幸せだったリン。でも、これでようやくご主人サマを守れると思うと、すごく嬉しいリン」

「そうだ、守るってどういうこと?」

「ボクは精霊なんだリン。だから、加護を与えた人間を守ることが出来るリン」

「精霊? 精霊ってあの本とかに出てくる精霊さんのこと?」

「そうだリン。その精霊さんがボクなんだリン」

「すごーーーい。私初めて見たわ」

「まぁ、そうだリンね。この世界にもいるはいるけど、契約や加護をもらえる人間が少ないリン」


 確かに、精霊なんて神に近い存在。

 おいそれと加護や契約なんてしてはもらえないわよね。

 それにまず、精霊を見る能力がないとだめそうだし。

 ある意味、チートみないなものかしら。

「てへん。精霊はすごいんだリン。そしてボクはこう見えても水の精霊なんだリン。


「水の精霊さん」


「そうだリン。水を自由に操ったり、癒しを与えるコトが出来るリン。もっとも、攻撃とかは得意じゃないけど、ご主人サマがボクと契約してくれればこの世界でもっとたくさんの力が使えるようになるリン」

「力? んと、それは魔法みたいなモノが使えるってこと? でも私、魔力とかないよ」

「ん-。まったくないワケでもないんだリン。ただご主人サマが一人で使えるほどの魔力がないっていうことと、操作が出来ないってだけリン」


 ん-。一人で使えないのに、くまさんと契約したら使えるようになるってことかな。

 ああ、でも使うのは私じゃなくてくまさんてことか。

 もしかすると契約をしないと、精霊もこの世界に直接は干渉出来ないとかそんな感じなのかもしれないわね。

 今まで精霊とか魔法とか、そういうモノとは無縁で生きてきた。

 その挙句、婚約破棄された上に夜会も上手くいかなかった。

 きっとこのままなら田舎に戻されるわ。

 そうしたら時間もたっぷりあることだし、精霊について調べるのもいいわね。

 精霊使いとか大それた者にはなれなくても、一人でこの世界で生きていくためにきっと役立つと思うもの。

 ああ、でもそうね。

 もう一人じゃないんだった。


「契約っていうのは今すぐココででも出来るの?」

「もちろんだリン。いいんだリン? 本当にこんなに簡単に契約しても」

「なんでそんなコト聞くの~? 私にはくまさんが唯一の味方なのに。むしろこちからかお願いしたいぐらいよ」


 ふわふわ浮いているくまさんの手を、私は掴む。


「精霊は人と契約して初めて、力を得るリン。ボクはこの世界に来て、ご主人サマが初めての契約人なんだリン。だから……加護も力も、そんなには強くないリン。それでも契約してくれるリン?」

 リンの顔には不安が浮かぶ。

 私が初めての契約人。

 くまさんは私のコト、ずっと待っていてくれたのかな。

 それだけでも、なんがか胸が温かくなってくる。


「それでもよ。私にはくまさんしかいないから。他の誰でもない、くまさんと契約したいの。私じゃダメ、かな」

「ううん。ダメじゃないリン。ありがとう、ご主人サマ。本当にうれしいリン」

「それは私も、よ。ありがとう。ずっとずっと待っていてくれて」
しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】引きこもり令嬢は迷い込んできた猫達を愛でることにしました

かな
恋愛
乙女ゲームのモブですらない公爵令嬢に転生してしまった主人公は訳あって絶賛引きこもり中! そんな主人公の生活はとある2匹の猫を保護したことによって一変してしまい……? 可愛い猫達を可愛がっていたら、とんでもないことに巻き込まれてしまった主人公の無自覚無双の幕開けです! そしていつのまにか溺愛ルートにまで突入していて……!? イケメンからの溺愛なんて、元引きこもりの私には刺激が強すぎます!! 毎日17時と19時に更新します。 全12話完結+番外編 「小説家になろう」でも掲載しています。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

「殿下、人違いです」どうぞヒロインのところへ行って下さい

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームを元にした人気のライトノベルの世界でした。  しかも、定番の悪役令嬢。 いえ、別にざまあされるヒロインにはなりたくないですし、婚約者のいる相手にすり寄るビッチなヒロインにもなりたくないです。  ですから婚約者の王子様。 私はいつでも婚約破棄を受け入れますので、どうぞヒロインのところに行って下さい。

悪役令嬢に転生したので、すべて無視することにしたのですが……?

りーさん
恋愛
 気がついたら、生まれ変わっていた。自分が死んだ記憶もない。どうやら、悪役令嬢に生まれ変わったみたい。しかも、生まれ変わったタイミングが、学園の入学式の前日で、攻略対象からも嫌われまくってる!?  こうなったら、破滅回避は諦めよう。だって、悪役令嬢は、悪口しか言ってなかったんだから。それだけで、公の場で断罪するような婚約者など、こっちから願い下げだ。  他の攻略対象も、別にお前らは関係ないだろ!って感じなのに、一緒に断罪に参加するんだから!そんな奴らのご機嫌をとるだけ無駄なのよ。 もう攻略対象もヒロインもシナリオも全部無視!やりたいことをやらせてもらうわ!  そうやって無視していたら、なんでか攻略対象がこっちに来るんだけど……? ※恋愛はのんびりになります。タグにあるように、主人公が恋をし出すのは後半です。 1/31 タイトル変更 破滅寸前→ゲーム開始直前

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...