異世界転移してすぐ奴隷とか聞いてないよ

雨水

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4話

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 周りを観察していたらあっという間に日が暮れてしまった。日が暮れると通りは電気とは違う黄緑っぽい明かりがついて、昼間とは違った雰囲気になった。

 僕と一緒に並んでいた奴隷たちも何人かは売れて、代わりに違う人が連れてこられていた。僕がずっといた部屋は商品の在庫部屋だったんだな。ここの奴隷が売れれば、僕みたいに連れてこられる。

 店の前を通る人の流れを眺めていると、視線を感じて気配を探る。ちょうど僕のいる店の反対側から立ち止まって僕の方を見ているガタイの良い男の人と目が合った。男が目を見開いてこちらに近づいてくる。

 僕が何か不快に思われるようなことをしたのかも!目を逸らしてさらに縮こまる。こっちに来ませんように。

「おいお前そこの兄ちゃんが買ってくれるってよ。お前のご主人様だ。さっさと挨拶しろ!」

 僕の願いはかなわず、僕のことを見ていた男の人に買われたみたいだ。顔を上げて視界に入れる。熊っぽい人だっだ。それは比喩でもなく熊みたいな耳が頭の上に生えていて。体格も細マッチョではなく、それはもう圧倒的筋肉。身長も2mくらいあるじゃないかな。

「早く立つんだ!」

 じっと見上げているだけの僕にしびれを切らしたお店の男が声を上げる。

 僕は急いで立とうとするけど、ずっと座ってたからかふらふらする。もたもたしている僕を目の前の熊の男の人が手を伸ばしてきて僕を抱き上げた。

 抱き上げられ...た。いわゆるお姫様抱っこだ。

「早くいくぞ」

 混乱している僕をよそに人の流れに混じり歩き始めた。待ってこんなあっさりあの場所を離れるなんて考えてもなかった。えっとこの人が僕のご主人様になった人だから、ご主人様って呼べばいいのかな?

「あ、あの。ご主人様?僕歩けるので、その...おろしてもらえませんか?」

 とりあえずこのお姫様抱っこの状態が恥ずかしくて、知らない男の人の腕の中に居るのも落ち着かなくて下ろしてもらえないか聞いてみる。

「話は俺の家に着いてからだ」

 少し渋くてお腹に響いてくるようなイケボだ。じゃなくて下ろしてくれる気配はない。この人の家まで僕はこの状態なのか。よくよく考えたら僕は裸なわけで、確かにこのほうが裸で歩き回るよりはマシかも知れない。裸で男の腕の中に居るという事は一旦忘れよう。

 話しかけれる空気ではないので、この人の家に着くまで黙って観察をする。

 顔を見た感じ、まだオッサンとまではいかないけどお兄さんよりは年が上な気がする。30歳くらいに見える。頭の上の耳はこの位置から見えないので少し残念に思う。この後僕がどう扱われるのかはわからないけど、どうせならモフモフした耳を拝みたかった。

 僕を抱えてる腕は背中越しだけどすごい筋肉を感じる。硬いだけじゃなくて、ええっと少し弾力がある感じだ。しっかり僕を支えてくれている力強さや久しぶりに感じる人肌を意識してしまい、こんな状況なのに気持ちが落ち着いてしまう。ヤバいちょっと眠くなってきた。

 必死に眠気に耐えていると、男が立ち止まってドアを開けた。初めてあたりを見渡すと、さっきまで居た治安の悪い雰囲気の通りより建物が規則的に並んでいて、ちょっと空気も綺麗な感じがする。男が開けたドアの建物はレンガでつくった温かみのある一軒家だ。ここが男の家なのかな?

「ついたぞ」

 そう言われて入って直ぐのリビングみたいな場所のイスに下ろされる。

「ありがとう、ございます。ご主人様」

 お礼を言ってから、さっきまで忘れていた緊張が僕を襲う。僕はこの後どうなってしまうのか。

 男の動きを見逃さない様にじっと見つめる。
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