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第2章 ユガンダコイゴコロ
サイコーに歪んだカノジョ
しおりを挟む「よっ!」
大学へ着くと、早速ダチの遠藤(右)と浜田(左)に会った。
「なあなあ、昨日また61人目のスマイルが出たらしいぜ!」
早速その話題かよ!
「マジかよ。やべぇだろ、61人目って」
「………………………」
話を聞いていくうちにだんだん背筋が寒くなってくる。
「ん?どうした、武田?」
「え?」
「なんか顔、青いぞ?」
やべ。
顔に出てたか。
どうしよう。
話すか?
…いや、でもコイツらを巻き込むわけには…
………………………。
…でも殺人鬼からしてみれば俺はただの通りすがりの人だし、きっと覚えてねぇだろ。
「…いや、このことはオフレコで頼みたいんだけどさぁ…」
俺はコソコソと昨晩のことを話した。
「「はぁ?!犯人とバッタリ会った?!」」
うっせぇ!!
声でけぇっつの!!
俺は慌てて周囲を見回す。
良かった。
誰にも聞かれてないようだ。
俺はホッと胸を撫で下ろした。
「お…おいおい?じ、冗談はエイプリルフールだけにしろよ?」
めっちゃ声震えてるんですけど?!
「…で、でさ…そのぉ…犯人ってどんな特徴してた?」
「あ?あー…んと、確か灰色のフード被ってて…それと…」
俺は昨晩の記憶を掘り返す。
「なんか…へんなニコちゃんマークの仮面被ってたな…」
付け加えるなら怪我してたケド。
「なぁ…それ警察に話したほうよくね?」
「あぁ、それならもう話した」
ってか、実際 署まで連れてかれた。
「悪い。あとこの話はよしてくんね?なんか思い出すだけで気持ち悪くなんだよ」
「あぁ、すまん。でもくれぐれも気をつけろよ?なんせ第一発見者は1番殺されやすいのがミステリーの基本だしな」
遠藤は軽口でそう言ったが、俺にはとても深い意味があるような気がした。
殺される?
誰が?
俺が?
心臓の鼓動が早くなっていき、体から汗が滲み出る。
そして吐き気までしてきた。
尋常じゃないくらいの恐怖心が全身を襲う。
殺される?
誰が?
俺が?
また同じ問いを心の中で繰り返す。
何度も。
何度も。
「おい?武田」
浜田に俺の名前を呼ばれて我に返った。
「大丈夫か?お前、汗すごいぞ?」
「あ…ああ…」
俺は気持ちを落ち着かせると、ふと腕時計を見た。
そろそろ時間だ。
「そろそろ行こーぜ。講義に遅れちまう」
「だな」
俺は教室へと向かった。
そしてそこでは既に、数多くの学生たちが所々に席を占めていた。
俺は空いている椅子を見つけ、座る。
するとタイミング良く、今日の講師がやってきた。
大半の学生たちが延々と教授の話を聞く中で、俺は重要そうなところだけを聞き、キャンパスノートにメモを取り続けた。
なんでここまで勉学に励むかって?
知りたいか?(笑)
ただの点数稼ぎさ。
俺、実は今 就活してる真っ最中。
もう6件の会社に面接を受けに行ったんだけどよぉ…
それがさぁ、面接に全然受からないんだよなぁ。
まったくもって泣けてくるぜ。
「御社が第一希望です」なんてもう何回言ったかも分かんねぇよ。
んで、ふと思ったワケよ。
「ワンチャン成績が原因なんじゃねぇの?」ってな。
それで成績を振り返ってみたんだけど、言われてみればそこそこ悪かったような気がした。
だからこうして馬鹿真面目に勉強してるってことさ。
もし仮にそうじゃなかったとしても就職できる確率はアガるかも知んねぇしな。
…約1時間半経過
教室で講義を終える合図が響き渡った。
俺は大きく伸びをした。
気づいたときには既に落ち着きを取り戻していた。
一応、あの刑事さん…えっと確か…杉本さん…だっけ?
あの人の話だと第一発見者である俺を保護してくれるらしい。
警備まで厳重にしてくれている。
こう思い出してみるとさっきまで怯えていた俺が情けなくなってくるぜ。
…でもなんでこんなに保護してくれるんだろう?
…もしかして…俺が唯一の目撃者だったりして…
いやいや、監視カメラとかあるだろ。
きっと一般市民として守ってくれてるだけだろう。
自意識過剰すぎるぜ、俺。
そんなとき、ポケットでスマホがヴーと唸るように震えてんのを感じた。
1件の通知が届いたみたいだ。
なんだ?
こんなときに。
それはLIMEからの通知だった。
その送り主は浜田だった。
文脈はこう。
『大丈夫か?これでシコって元気出せよ?(笑)』ってな。
そしてその下にはご丁寧にエロサイトのURLが貼ってあったぜ、畜生!
生憎こっちはオナニーできる余裕はねぇっつーのに!
ってかぜってーわざとだろ、あの野郎!
言い返してやるぜ、まったく!
『余計なお世話だよ』と打ち込んで送信してやった。
するとこんな返信が来た。
つーかもうこっからは文書くのめんどいしスクショした奴見てくれよ。
まぁどーでもいい内容ばっかだけど。
同時刻…警視庁…
一方、杉本は街灯に設置されていた防犯カメラの映像を同じ箇所を何度も見直しては、苦悩していた。
(なんで犯人が映るところだけが綺麗になくなっているんだ?)
防犯カメラの時間帯に視線を移す。
6月7日の午後11時48分…
そこで毎回映像が途切れている。
そして映像が再開した頃には午後11時57分…
杉本とあの青年が映っていた。
(…まさか警察側の隠蔽工作か?!)
一瞬そんな考えが浮かんだが、問題発言だとすぐに気づき取り消した。
「あの…先輩?」
「?」
警視庁捜査一課巡査長の篠塚だ。
彼は杉本の後輩刑事である。
「お前、今日も遅刻かよ」
「すみまん、妹がわがまま言ってまして…」
「いや知らんがな」
(まったくこのシスコンめ)
篠塚は必ず遅れてやって来る。
逆に時間どおりに来たときが滅多にない。
「先輩、これどうぞ」
篠塚はなにかの資料を手渡した。
「なんだ、これ?」
「これは一連の事件の被害者の身元をまとめた奴っす」
「ほう?」
(コイツは遅刻する分、仕事はデキるんだよなぁ…)
彼をクビにできないのはこれが理由である。
篠塚はこう見えても警察学校を主席で卒業したエリート刑事なのだ。
「やっぱ接点はなかったようですね」
「そうか…」
ん?
やっぱり?
(篠塚でも結果は分かっていたのか…まったく大したものだ)
「じゃあ事件の捜査を続けるぞ」
「うっす」
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