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帰路
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一向に話す話題など見つからず、空を見上げてみる。
一日の役目を終えようとする太陽が最後のひと踏ん張りと言わんばかりに辺りを茜色に染め上げていた。
暫くして神崎さんが口を開いた。
「そういえば前にもこんなことありましたよね?入試の日。」
「そうだね。君と出会わなければ多分僕はここにはいないよ。ほんとに感謝してる。ありがとう。」
「いえいえ、そんなに畏まらなくても・・・・・
私はただ人としてすべきことをしただけですから。」
彼女は少しもじもじした様子でそう言った。
その様子を見て、彼女は身も心も綺麗な人だなとそう思う晴人であった。
そこからなかなか会話が続くことはなく、無言のまま2人で歩いた。
だが、意外にもその沈黙は心做しか心地よさと確かな幸せを晴人は噛み締めていた。
――――――
それから数分ほどして、前の方から恐らく大学生と思われる人が歩いてきた。
その女性はブンブンとこちらに手を降っている。近づく女性の顔を見ると心做しか神崎さんに少し似ているような気がした。
近づくにつれ、神崎さんの顔が徐々に赤くなって行くのに気がついた。
恐らく近づいてくるこの女性は神崎さんのお姉さんなのであろうと推測することが出来た。
近づいてきた女性は僕らのところまで来て
「どーも初めまして、七海の姉の十香です。彼氏さんですよね。妹がお世話になっています。 いやー、妹にやっと春が来たのかー。」
そう言って十香さんはニヤニヤを浮かべながら感慨深そうに泣き真似を始めた。
「いや、僕は…」
そういって慌てて否定しようとしたが、大丈夫わかってるよと言いたげな表情で十香さんに手で制された。
神崎さんは顔を熟れたリンゴのように真っ赤にしながら
「ちょっとお姉ちゃん、違うから!」
と必死に否定していた。
おそらく妹をからかいたかったのだろう
「あんなにいい雰囲気だったのに。そんなに隠そうとせんでも…彼氏さんが可哀想やろ」
「うるさい。お姉ちゃんのバカ。」
神崎さんはそう言って顔を真っ赤にしながら走ってどっかに行ってしまった。
僕は彼女の新しい一面が見れて嬉しく思った。
それにしても、からかわれて顔を真っ赤にして怒っている姿は控えめに言ってものすごく可愛かった。
そんなことを考えていると……
「ごめんね、妹が男の人と一緒に帰ってるとこなんてこれまで1回も見た事なかったから……つい」
十香さんがお茶目な顔をして謝って来た。悪気はないのだろう。
「ところで、君の名前は?」
「あのー、吉田 晴人って言います。えっと、妹さんとはクラスと委員会が一緒で仲良くさせてもらってます。」
「あら、そうなの妹がお世話になってます。」
そう言って彼女は大袈裟に笑って見せたかとかと思えば今度は神妙な顔つきになって
「あの子ねモテるのよ、中学生の頃ね、毎月のように告白されてたらしくてね…
まぁ結局誰とも付き合わなかったんだけど……
ある日、あの子に振られた男子がねー、逆上してあの子に暴力を振るおうとしてね…
たまたま居合わせた先生が止めて事なきを得たんだけど…その日からあの子、表には出さないんだけど男の子がちょっと苦手になっちゃってね。だから姉としては心配でね……
だからこうやって楽しそうにあの子が男の子と一緒に帰ってるの見てからかってみたくなっちゃった。まぁ、姉心ってやつ?
ごめんね。邪魔しちゃって」
彼女は申し訳なさそうにそう言った。
「いえいえ、全然」
先程までの表情とは打って変わってニヤニヤとした笑みを浮かべてそんなことを聞いてきた。
「話変わるんだけどさー、もしかして吉田くんは七海のこと好き?」
「えっ、それは人としてですか?」
「いーや、1人の女の子として」
僕は考える素振りをした後、
「まだわかんないです。」
と答えた。
十香さんはその答えに満足したのか、
「あの子、人から頼まれたら基本的に断れないタイプだからよろしくね。吉田くん。」
少し満足げな顔をしてそう言って去って行った。
「うす。」
誰も居なくなったその場で僕はそう呟くのだった。
空には薄明が広がっており、烏の鳴き声がこだましていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
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一日の役目を終えようとする太陽が最後のひと踏ん張りと言わんばかりに辺りを茜色に染め上げていた。
暫くして神崎さんが口を開いた。
「そういえば前にもこんなことありましたよね?入試の日。」
「そうだね。君と出会わなければ多分僕はここにはいないよ。ほんとに感謝してる。ありがとう。」
「いえいえ、そんなに畏まらなくても・・・・・
私はただ人としてすべきことをしただけですから。」
彼女は少しもじもじした様子でそう言った。
その様子を見て、彼女は身も心も綺麗な人だなとそう思う晴人であった。
そこからなかなか会話が続くことはなく、無言のまま2人で歩いた。
だが、意外にもその沈黙は心做しか心地よさと確かな幸せを晴人は噛み締めていた。
――――――
それから数分ほどして、前の方から恐らく大学生と思われる人が歩いてきた。
その女性はブンブンとこちらに手を降っている。近づく女性の顔を見ると心做しか神崎さんに少し似ているような気がした。
近づくにつれ、神崎さんの顔が徐々に赤くなって行くのに気がついた。
恐らく近づいてくるこの女性は神崎さんのお姉さんなのであろうと推測することが出来た。
近づいてきた女性は僕らのところまで来て
「どーも初めまして、七海の姉の十香です。彼氏さんですよね。妹がお世話になっています。 いやー、妹にやっと春が来たのかー。」
そう言って十香さんはニヤニヤを浮かべながら感慨深そうに泣き真似を始めた。
「いや、僕は…」
そういって慌てて否定しようとしたが、大丈夫わかってるよと言いたげな表情で十香さんに手で制された。
神崎さんは顔を熟れたリンゴのように真っ赤にしながら
「ちょっとお姉ちゃん、違うから!」
と必死に否定していた。
おそらく妹をからかいたかったのだろう
「あんなにいい雰囲気だったのに。そんなに隠そうとせんでも…彼氏さんが可哀想やろ」
「うるさい。お姉ちゃんのバカ。」
神崎さんはそう言って顔を真っ赤にしながら走ってどっかに行ってしまった。
僕は彼女の新しい一面が見れて嬉しく思った。
それにしても、からかわれて顔を真っ赤にして怒っている姿は控えめに言ってものすごく可愛かった。
そんなことを考えていると……
「ごめんね、妹が男の人と一緒に帰ってるとこなんてこれまで1回も見た事なかったから……つい」
十香さんがお茶目な顔をして謝って来た。悪気はないのだろう。
「ところで、君の名前は?」
「あのー、吉田 晴人って言います。えっと、妹さんとはクラスと委員会が一緒で仲良くさせてもらってます。」
「あら、そうなの妹がお世話になってます。」
そう言って彼女は大袈裟に笑って見せたかとかと思えば今度は神妙な顔つきになって
「あの子ねモテるのよ、中学生の頃ね、毎月のように告白されてたらしくてね…
まぁ結局誰とも付き合わなかったんだけど……
ある日、あの子に振られた男子がねー、逆上してあの子に暴力を振るおうとしてね…
たまたま居合わせた先生が止めて事なきを得たんだけど…その日からあの子、表には出さないんだけど男の子がちょっと苦手になっちゃってね。だから姉としては心配でね……
だからこうやって楽しそうにあの子が男の子と一緒に帰ってるの見てからかってみたくなっちゃった。まぁ、姉心ってやつ?
ごめんね。邪魔しちゃって」
彼女は申し訳なさそうにそう言った。
「いえいえ、全然」
先程までの表情とは打って変わってニヤニヤとした笑みを浮かべてそんなことを聞いてきた。
「話変わるんだけどさー、もしかして吉田くんは七海のこと好き?」
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僕は考える素振りをした後、
「まだわかんないです。」
と答えた。
十香さんはその答えに満足したのか、
「あの子、人から頼まれたら基本的に断れないタイプだからよろしくね。吉田くん。」
少し満足げな顔をしてそう言って去って行った。
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誰も居なくなったその場で僕はそう呟くのだった。
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