捕らえた捕虜に屈辱をあたえるつもりがどうしてこうなった！？～チンペチが取り持つ数奇な縁～

4

　


　赤い稲妻の顔を自分のナニでペチペチ叩いた夜以来、レントンは悩んでいた。
　非常に、非常に、悩んでいた。

　あの夜、赤い稲妻に自分のナニに口付けられて、はからずもレントンは欲情してしまった。
　それだけならまだしも、可愛いとさえ思ってしまった。
　だが。

　赤い稲妻はれっきとした男だ。
　しかも、歴戦の覇者だ。
　戦場で彼の名を知らない者はいない。
　なのにあろうことか自分は、あの赤い稲妻を可愛いと思い、なんならトキメキさえ覚えてしまったのだ。
　きっとあの時、あの場から逃げ出さなかったら、自分は彼を無理矢理押し倒していたことだろう。

　それでもやっぱり赤い稲妻は男なわけで。

　けれどもあれから、上気した顔に潤んだ瞳でレントンを見上げてきた赤い稲妻の顔が、瞼に焼き付いて離れない。
　何度もあの時のことを思い出し、その都度体は反応してしまう。

　それでも、最近ご無沙汰だったから欲求不満でそんなことになっているのではと、自己処理もした。
　しかし、それでも駄目なのだ。
　なんなら自己処理の時に、赤い稲妻を組み敷く妄想をしている自分が居る。
　彼は男だというにも関わらず、だ。

　自分、男もいける口だったのかと首を捻るも、赤い稲妻以外ではそんな反応は起こらない。
　なんなら部隊のアイドル的存在の兵士で妄想してみても、レントンのナニは無反応だ。
　むしろ、萎える。
　そうなると、認めざるを得ないわけで。
　つまり自分は、赤い稲妻、彼に、欲望を抱いているのだと。

　そんなこんなでレントンは、赤い稲妻に屈辱をあたえるとは言ったものの、結局実行できないままでいた。


　とはいえ、やはり部隊の指揮官として面子というものがある。
　捕虜の頼みを聞いてやって、そのまま、というわけにもいかない。
　それに、赤い稲妻を捕らえたと報告を受けた軍の上層部から、彼を拷問するなりなんなりしてこちらに寝返らせろとの命令もきている。
　何より、仲間を何人も屠ってきた彼をそのままにしておくことは、部隊の士気にも関わるわけで。

　しかし、レントンは気が進まなかった。
　もともと、尋問や拷問といった人を痛めつけることが苦手だということもある。
　それに、あの赤い稲妻が苦しみに悶える様を見たくないという気持ちが強い。
　何よりレントンは、彼に会う勇気を出せないでいた。

　会って、また赤い稲妻に欲情してしまったら、今度こそ自分は戻っては来れない気がする。
　それこそ足を踏み入れてはいけない沼に嵌りに行くようなものだ。
　そうなったら自分は。

　けれども、レントンがやらなかったら、他の誰かがそれをしなければならないわけで。
　それだけは嫌だ。
　赤い稲妻を拷問するにしても、屈辱をあたえるにしても、自分以外の誰かがそれを行うと考えるだけで、腹の底から怒りが込み上げてくる。
　他の人間にさせるくらいなら、それならまだ自分がやった方がマシだ。
　それに寝返らせるだけなら、わざわざ拷問などしなくとも、他にも方法はあるはずだ。
　あの赤い稲妻の様子であれば、話を聞いてくれそうな気がしないでもない。

　そんなこんなで、悩みに悩んだレントンが再び赤い稲妻の下を訪れたのは、彼の顔をナニでペチペチして以来、3日目の夜だった。