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しおりを挟む「……どうして、こうなるのよ……」
はあっと、深いため息吐けば、広い浴室にその声が反響する。
湯を張った浴槽の中でぐったりと項垂れてぼやく岬に、背後から抱きしめるラインハルトの腕に力が込められたのがわかった。
あれから結局、散々ラインハルトに喘がされる羽目になったのだ。
執拗に体を弄られ、貪られて、もうすっかりくたくたである。
というか、嫉妬に駆られて押し倒したのは岬のはずなのに、これでは逆ではないか。
翻弄しようと思って、逆に翻弄される羽目になるなんて。
それにしても、ラインハルトが嫉妬深いのは知っていたが、まさかここれほどとは。
まったく、とんだ藪蛇になってしまったわけだ。
とはいえ結果的に、最初のざらつく嫉妬の苛立ちは綺麗に消えたわけなのだが。
「ミサキがいけない……」
そう言って、ラインハルトが甘えるように肩口に顔を埋めてくるも、その口調は何とも恨みがましい。
「……折角ミサキが嫉妬してくれて、嬉しかったのに……」
まだ岬の過去の恋人とのことを気にしているのだろう。
あれだけ人を好き放題したのだというのに、まだ足りないのか。
背後からぎゅうぎゅうと抱きしめてくるラインハルトに、岬は呆れて振り返った。
「ライ、さすがにいい加減にしなさいよ? まだ足りないわけ?」
「……」
「過去は過去でしょ? それに今、こうして私を好きにできるのはライだけなんだから、いいじゃない」
それでもまだ、ラインハルトは不服そうだ。
岬を抱き締めたまま、肩に埋めた顔を上げようとしない。
そんなラインハルトに岬が再びため息をつくと、ややあって小さな呟きが漏らされた。
「……じゃあミサキは……?」
「……」
「ミサキは、もし私が過去に他の女性とそういうことをしていたとしても、気にならないのか……?」
言われて、岬は黙り込んだ。
もしラインハルトが、過去に他の女と岬にしたようなことをしていたとしたら。
途端、ザラリとした感情が胸に広がっていくのがわかる。
先程見せたようなラインハルトの姿を他の女も知っていると思うだけで、コールタールのようなドロドロとした黒い感情に胸が塗りつぶされていくかのようだ。
強烈な忌避感に襲われて、知らず体が硬くなる。
すると、そんな岬の心情を知ってか知らずか、ラインハルトが強く抱きしめてきた。
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