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「ライ……?」
「……いや、……ミサキには、苦労をかけてしまうな、と……」
困ったように笑って見詰めてくる。
こちらの世界と自身の世界を比べ、文明の水準が余りにも異なる世界に岬を連れて行かざるを得ないことを申し訳なく思っているのだろう。
ラインハルトの話を聞く限り、そちらの世界は魔法が使えるということ以外は、こちらの世界でいう中世ヨーロッパの様な生活水準らしい。
某RPGのような世界、と岬は認識している。
さすがに魔王や勇者はいないらしいが。
しかし、そんなラインハルトに岬はからかうような笑みを向けた。
「本当ね」
「……すまない」
岬の一言に、ラインハルトが視線を落とす。
だが、嘘を言ってもしょうがない。
「確かに色々不便そうだし、考えも随分古いみたいだから苦労はしそうよね」
「……」
「ま、でも、それでも一緒に居たいと思っちゃったんだから、しょうがないわね」
ラインハルトは苦しそうな、困ったような顔で見詰めている。
「それに、どっかの少数民族にお嫁に行くと思えば、全然ましでしょ。危険な紛争地帯に行くわけじゃなし、ちょーっとレトロな、魔法とファンタジーの世界に行くわけでしょ? むしろ、ワクワクするわね!」
「ミサキ……」
「第一、絶対幸せにしてくれるんでしょ? だったら、よろしく頼むわよ? 旦那様?」
ニカッと笑ってラインハルトを見る。
すると、泣きそうな顔になったラインハルトが、ガバリと岬を抱きしめてきた。
「ああ! 必ず幸せにする! ミサキ、ありがとう! 愛してる……っ!」
思いの丈を込めて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
そんなラインハルトの背中を、なだめる様にポンポンと軽くたたいた岬は、明るい声で言葉を続けた。
「よしっ! じゃあ、アイスを食べよう!」
既にアイスは、カップの周りから溶けてきてしまっている。
「これっくらい溶けた頃がまた、美味しいのよね~」
元気にアイスを食べ始めた岬につられるように、ラインハルトもアイスを食べ始める。
その顔が、再び明るくなったのを見て、岬は内心ホッとため息を吐いた。
「……いや、……ミサキには、苦労をかけてしまうな、と……」
困ったように笑って見詰めてくる。
こちらの世界と自身の世界を比べ、文明の水準が余りにも異なる世界に岬を連れて行かざるを得ないことを申し訳なく思っているのだろう。
ラインハルトの話を聞く限り、そちらの世界は魔法が使えるということ以外は、こちらの世界でいう中世ヨーロッパの様な生活水準らしい。
某RPGのような世界、と岬は認識している。
さすがに魔王や勇者はいないらしいが。
しかし、そんなラインハルトに岬はからかうような笑みを向けた。
「本当ね」
「……すまない」
岬の一言に、ラインハルトが視線を落とす。
だが、嘘を言ってもしょうがない。
「確かに色々不便そうだし、考えも随分古いみたいだから苦労はしそうよね」
「……」
「ま、でも、それでも一緒に居たいと思っちゃったんだから、しょうがないわね」
ラインハルトは苦しそうな、困ったような顔で見詰めている。
「それに、どっかの少数民族にお嫁に行くと思えば、全然ましでしょ。危険な紛争地帯に行くわけじゃなし、ちょーっとレトロな、魔法とファンタジーの世界に行くわけでしょ? むしろ、ワクワクするわね!」
「ミサキ……」
「第一、絶対幸せにしてくれるんでしょ? だったら、よろしく頼むわよ? 旦那様?」
ニカッと笑ってラインハルトを見る。
すると、泣きそうな顔になったラインハルトが、ガバリと岬を抱きしめてきた。
「ああ! 必ず幸せにする! ミサキ、ありがとう! 愛してる……っ!」
思いの丈を込めて、ぎゅうぎゅうと抱きしめてくる。
そんなラインハルトの背中を、なだめる様にポンポンと軽くたたいた岬は、明るい声で言葉を続けた。
「よしっ! じゃあ、アイスを食べよう!」
既にアイスは、カップの周りから溶けてきてしまっている。
「これっくらい溶けた頃がまた、美味しいのよね~」
元気にアイスを食べ始めた岬につられるように、ラインハルトもアイスを食べ始める。
その顔が、再び明るくなったのを見て、岬は内心ホッとため息を吐いた。
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