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「はは。……それでもミサキと一緒に居たいと、全てを投げ打っても、ミサキと共に在りたいと思ってしまったからな」
笑いながらそう告げるラインハルトの目には、後悔は一切見られない。
「……昨夜は、色々気が逸ってしまって、ミサキにきちんと話ができなくて申し訳なかった。本当、今更かもしれないが、もう一度言わせて欲しい」
言いながら、岬の両手を握ってくる。
「ミサキ。もう二度とミサキを一人にしないし、ずっと一緒に居ると約束する。だから私を、ラインハルト・スティフタフを、有月岬の伴侶として選んでくれないか?」
ひたむきに、真摯に見詰められて、岬は胸が苦しくなるほど一杯になった。
ここまでの決意を見せられて、これ以上何を求めるというのだ。
何より、岬の答えはとっくに決まっている。
「はい、喜んで!」
「ミサキ……」
思わず泣き笑いの様な顔になった岬を、ラインハルトが感極まったように抱きしめた。
岬がその背中に腕を回すと、更に強く抱きしめてくる。
ラインハルトの広い胸にすっぽりと包み込まれて、岬は全てがぴったりと合わさるような心地よさを感じていた。
やはり、自分たちはこうなるべくして出会ったのだろう。
運命の相手であると、素直にそう思える。
そして岬は、驚くほどすんなりと決意が固まるのがわかった。
一旦体を離して、ラインハルトを見上げる。
何かを決断したかのような岬の瞳に、ラインハルトが無言で岬の言葉を待った。
「……ライ。……私、そっちの世界に、行くわ」
「ミサキ、それは……」
「まあ、ライがそこまでの覚悟を見せてくれたんだし、私もそれに応えなきゃっしょ」
にかっと笑ってそう言う。
「それにどう考えても、ライがこっちで暮らすより、私がそっちに行く方が現実的だしね」
実は今日一日、岬はずっと考えていたのだ。
朝は色々突然すぎて何も考えられなかったが、仕事に行き、日常に戻って冷静になってから、岬はこれからどうしたらいいのか、自分がどうしたいのかを色々考えたのだ。
それに、岬がラインハルトの世界に行くという決意は、昨日今日で決めたことではない。
この一か月、岬はずっと後悔をしていた。
ラインハルトを失うくらいなら、そちらの世界に行ってもいいと、どうして自分はあのとき決断しなかったのだという後悔だ。
ラインハルトを失ってみて初めて岬は、こちらの世界を捨ててでも、それでもラインハルトと一緒に居たいのだと、自分にとってラインハルトは、何を引き換えにしてもいいほど大事な存在になっているのだということを思い知らされたのだ。
だからこの一カ月、岬はずっと思っていた。
もしまたラインハルトに会うことが出来たのなら、そのときは今度こそ一緒に行くと。
笑いながらそう告げるラインハルトの目には、後悔は一切見られない。
「……昨夜は、色々気が逸ってしまって、ミサキにきちんと話ができなくて申し訳なかった。本当、今更かもしれないが、もう一度言わせて欲しい」
言いながら、岬の両手を握ってくる。
「ミサキ。もう二度とミサキを一人にしないし、ずっと一緒に居ると約束する。だから私を、ラインハルト・スティフタフを、有月岬の伴侶として選んでくれないか?」
ひたむきに、真摯に見詰められて、岬は胸が苦しくなるほど一杯になった。
ここまでの決意を見せられて、これ以上何を求めるというのだ。
何より、岬の答えはとっくに決まっている。
「はい、喜んで!」
「ミサキ……」
思わず泣き笑いの様な顔になった岬を、ラインハルトが感極まったように抱きしめた。
岬がその背中に腕を回すと、更に強く抱きしめてくる。
ラインハルトの広い胸にすっぽりと包み込まれて、岬は全てがぴったりと合わさるような心地よさを感じていた。
やはり、自分たちはこうなるべくして出会ったのだろう。
運命の相手であると、素直にそう思える。
そして岬は、驚くほどすんなりと決意が固まるのがわかった。
一旦体を離して、ラインハルトを見上げる。
何かを決断したかのような岬の瞳に、ラインハルトが無言で岬の言葉を待った。
「……ライ。……私、そっちの世界に、行くわ」
「ミサキ、それは……」
「まあ、ライがそこまでの覚悟を見せてくれたんだし、私もそれに応えなきゃっしょ」
にかっと笑ってそう言う。
「それにどう考えても、ライがこっちで暮らすより、私がそっちに行く方が現実的だしね」
実は今日一日、岬はずっと考えていたのだ。
朝は色々突然すぎて何も考えられなかったが、仕事に行き、日常に戻って冷静になってから、岬はこれからどうしたらいいのか、自分がどうしたいのかを色々考えたのだ。
それに、岬がラインハルトの世界に行くという決意は、昨日今日で決めたことではない。
この一か月、岬はずっと後悔をしていた。
ラインハルトを失うくらいなら、そちらの世界に行ってもいいと、どうして自分はあのとき決断しなかったのだという後悔だ。
ラインハルトを失ってみて初めて岬は、こちらの世界を捨ててでも、それでもラインハルトと一緒に居たいのだと、自分にとってラインハルトは、何を引き換えにしてもいいほど大事な存在になっているのだということを思い知らされたのだ。
だからこの一カ月、岬はずっと思っていた。
もしまたラインハルトに会うことが出来たのなら、そのときは今度こそ一緒に行くと。
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