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「……随分、他人事みたいに言うんだな」
「は? 他人事じゃないわよ。帰れなくなったら、誰があなたの面倒を見ると思ってんのよ? いい? こっちの世界はね、異世界から来ましたって言って、そのまま通用するような甘い世界じゃないの!」

 文化どころか、常識も何もかもが違う身元不明の人間が、こちらの世界で一人で暮らしていけるとは思えない。
 となると、必然、岬が面倒を見なくてはならないだろう。
 さすがにそれは無理だ。

「……私がここに来るのは、迷惑だと、言いたいのか?」
 拗ねたようにそう言う。
 子供みたいなその態度が可笑しくて、岬は笑ってしまった。

「違うわよ。ここに来る分にはいいけど、帰れなくなったら困るでしょ?」
「……じゃあ、私がここに来るのは、迷惑じゃない、と?」
「そうね。こうやって違う世界の話を色々聞けるのも、楽しいし」
「そうか!」
 途端に笑顔になる。

「実は、私もミサキと話をするのは楽しいんだ」
「そ、そう。ならよかったわね」

 邪気のない、キラキラとした笑顔を向けられて、岬は思わず戸惑ってしまった。
 イケメンの無防備な笑顔は、意外に心臓に悪い。

(……本当、綺麗な子よね。絵本に出てくる王子さまって感じ)

 宝石のような青い瞳に、スッと通った鼻筋。
 貴族であるということを差し引いても、きっとモテるに違いない。

「……ねえ。そういえば、あなたって歳はいくつなの?」
「ああ。今年で21になる」
「わっかいわねー! じゃあ、成人したてってことじゃない」
「何を言う! 私の国では、18歳で成人だ! 第一若いと言ったって、君とそう大差ないだろう?」
「……」

 岬はスッと視線を逸らせた。
 何となく、実年齢より若く思われているのは知っていたが、敢えてこれまで黙っていたのだ。

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