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しおりを挟むそれ以降、ラインハルトはちょくちょく現れるようになった。
二、三日おきくらいに現れて、会話をしてパッと消える。
お陰で、最近は大分ラインハルトのことがわかってきた。
「……ふーん。それで、ティナ、何だっけ? そっちの国の名前」
「ティナワ=アンヴェジェスだ」
「本当、覚え辛い名前よね」
「君が覚えないだけだろう?」
胡坐でソファーに座る岬を、ラインハルトが呆れたように見てくる。
ちなみにラインハルトは、靴を脱いでリビングのラグに座っている。
最近は、この家の中では靴を脱ぐということを覚えたのだ。
「で。そのティナ何とか国には、魔法使いが居るんでしょ? そういう人たちに相談してみたら?」
驚くことにラインハルトの世界には、魔法が存在するらしい。
実際、靴を脱いだ時の臭いに閉口した岬が文句を言ったところ、目の前で浄化の魔法を使われて、腰を抜かすほど驚いたのだ。
どうやらこちらの世界でも、魔法は使えるらしい。
というわけで、本物の異世界トリップであると、今では岬も認めていた。
「したさ」
「それで?」
「どうしてこんな現象が起きているのか、今、文献を調べてくれている」
ラインハルトの話では、邂逅の森はこれまでも、人がいなくなったり、逆にどうみても違う世界から来たとしか思えないような人間が現れたりすることがあったそうだ。
地元の伝承では、神がその人間の運命の相手と出会わせてくれる森と言われているらしい。
というのも、森に入っていなくなったと思った人間が、しばしば違う世界の人間を連れて戻り、そのまま結婚しているからだ。
そのため、魔物が出るにもかかわらず、運命の相手を求めて森に入る人間が後を絶たないという。
となると、岬はラインハルトの運命の相手ということになってしまうが、そこに関してはお互い違うと思っている。
所詮、伝承は伝承だ。
ただ、森が異世界と通じている、というのは本当なのだろう。
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