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第二章
25-4
しおりを挟む驚いて見れば、何故か近くの壁に深々とナイフが刺さっている。
「やあ、ハニー。お待たせ」
爽やかな声に振り返れば、そこにはにこやかな笑みを浮かべたクロードが居た。
や、待ってないし。しかも、ハニーて……。
というか、目が怖いんですけど。
ナイフ投げるとか、どんだけよ!?
「はは、ダメじゃないか。君の相手は、俺がするんだから」
言いながら肩を抱き寄せてくる。
「ああ、ティム」
「はっ、はいっ!」
にっこりと笑いながら見据えるクロードに、ティムと呼ばれた護衛が焦ったように返事をした。
傍目にも分かるほど彼の顔色は悪い。
「……次は、無いぞ?」
「は、はいっ! 申し訳ありませんでしたっ!!」
慌てて立ち去るティムの背中を見送って、クロードが笑顔はそのままに凍える雰囲気で私を見おろしてきた。
「アンヌ。浮気は、いけないな」
や、浮気じゃないし。手合わせだし。
「それに。昨日、待ってたのに」
「……行くって、約束はしてない」
「そうか。…………そんなに、俺が嫌か?」
昏く陰った瞳でのぞき込んでくる。
何か、非常~に、まずい雰囲気だ。
本能的に後ずさった私を、クロードがあっという間に壁際に追い詰めた。
すでに、壁とクロードの体に挟まれて、身動きは取れない。
脚の間に片脚を割り入れられ、下半身もぴったりとくっついている。
ちょっと、さすがにこれはまずくないですかね。
訓練場の隅といっても一応、人目もあることですし。
「……ク、クロード、さすがにこれは、……ひゃあっ!」
肩口に顔を埋めたクロードに、首筋を吸われて、思わず変な声が出る。
「ちょ、ちょっとっ!! クロードっ!! やっ、やめ……っ!!」
思い切り胸を押すも、ビクともしない。
くそう。こういう時、力では勝てないのよ。
しかも腕を体の間で挟まれる形だから、力が入らないのだ。
それに、なんだかんだいって、クロードは強い。
エーベルト様の護衛を任されているだけはある。
まあ、切り抜けられないわけじゃないけど、さすがに刃を向けるわけにもいかない。
それは私も不本意だ。
それでも真っ赤になりながら抵抗していると、呆れたような声が掛った。
「……おい、クロード。それぐらいにしといてやれ」
ハッとして声のしたほうを見ると、呆れた顔のエーベルト様と、口元を手で押さえて真っ赤な顔のお嬢様が並んで立っていた。
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