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第二章
25-3
しおりを挟むその夜、結局私はクロードの部屋には行かなかった。
だって。
行ったら絶対、そういう展開になるだろうし。
そして多分、私はそれを抗えない。
とはいっても、さすがに連チャンはキツい。
何より、まずは一人でゆっくり考える時間が必要だ。
と、思っていたが。
相当疲れていたのか、その日は自分の部屋に戻るなり私はすぐに眠ってしまった。
色々ありすぎて、体だけでなく、精神的にも疲れていたのだろう。
翌日、いつもより早い時間に起きた私は、気持ちも体もスッキリしていた。
ぐっすり寝たのが良かったのだろう。
そして、驚くほどすんなりと、クロードとのことを受け入れていた。
まあ、今更この状況で結婚を覆すことはできないし。
それに。
やっちゃったもんは仕方がない。
あれから徐々にあの夜の出来事を思い出したのだが、確かに、私を好きだと掻き口説くクロードの態度からは真摯な思いを感じられた。
その後の行為も、非常に丁寧で優しいものだったし。
そして何より、私はクロードが嫌いではない。
むしろ好きだろう。
まあ、あの豹変ぶりには驚いたが、それでも10年以上の付き合いなのだ、彼の為人は知っている。
だからこそ、私だって彼を受け入れたのだ。
いくら酔っていたといえども、さすがに誰彼構わずそんなことはしない。
……と、思う。多分。
ただ。
それでもやっぱり、クロードの策略に嵌められたことには違いなく、どうしても素直には顔を合わせづらい。
そんなこんなで、いつもはクロードと一緒に訓練場で手合わせをしていたのだが、今日は時間をずらして目立たないよう隅で一人鍛錬をしていた。
仮想の敵を想定して、一人で組手の型を取る。
すると、いつもは遠巻きに見ていた公爵家の護衛の一人が声を掛けてきた。
きっと、一人組手をする私を気遣ってくれたのだろう。
「もしよければ、相手をしようか?」
「あ、……はい。ありがとうございます」
「はは、よろしく。それにしても、君、強いよね」
「そうですか?」
「やっぱ、あのニヴルヘイム侯爵家で鍛えられていただけあって、技にキレがあるもんな。結構前から、ずっと声を掛けたかったんだけど、ほら、いつもはクロードさんといるから」
「あ、ええ、……そう、ですね」
「それじゃあ、やろうか?」
「はい。では、よろしくお願いし--------」
次の瞬間、ヒュンッと風を切る音とともに、何かが高速で私と護衛の間を通り抜けた。
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