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第二章
22-4
しおりを挟むしばらくそのまま抱き合った後、ようやく体を離した二人に、再び周囲から盛大な冷やかしが飛んだ。
「まったく、お熱いことで」
呆れたようなその声に、リディアーヌが振り返ると、にやにやと笑うロキが居た。
「ま、でも、良かったな。それにしても、良いもん見させてもらったぜ」
「ロキ……」
「なかなかできるこんじゃないぜ? あんたのダンナ、いい男じゃねえか」
「そうね」
素直に頷く。
何だかんだいってエーベルトは、やるときはやるのだ。
子供の頃からそうだ。
「……そういえばリディ、大丈夫だったのか?」
「え? 何が?」
「なんかヤバい連中に囲まれてたって、聞いたけど……」
心配そうに覗き込んでくる。
眉を顰めたエーベルトに、リディアーヌは安心させるように微笑んだ。
「ああ、大丈夫よ。別に大した人達じゃなかったから。それに、そこのロキが助けてくれたの」
実際囲まれただけで、何もされていない。
というか、あの程度の連中であれば、ロキが来なくてもリディアーヌは瞬殺していただろう。
それでも、リディアーヌの実力を知っていてなお心配してくれることが、なんだかくすぐったくも嬉しい。
いつもだったら、自分の力を認めてくれないのかと憤るところだが、今は純粋にエーベルトが心配してくれることが嬉しかった。
気持ちが通じ合うとこうまで違うのだと、リディアーヌはしみじみ感じ入った。
「そうか、ならよかったよ。……妻がお世話になったようで、ありがとうございました」
ロキに向き直ったエーベルトがお礼を言う。
そんなエーベルトに、ロキが楽しそうな顔になった。
「別にいいぜ。大したことはしちゃねえし。そもそもおたくの奥さん、俺が助けなくても余裕で倒してただろうし」
「いえ、助かりました」
「ははは! そうかい! ……ロキだ」
「ベルトだ」
互いに手を差し出し、握り合う。
ロキの手を握ったエーベルトが一瞬だけ訝し気な顔になるも、すぐに笑顔になった。
「じゃあな、お二人さん! お幸せに!」
そう言って、踵を返して去って行く。
その背中を見送って、エーベルトがリディアーヌを引き寄せてきた。
「じゃあ、俺達も帰ろう」
「ええ」
微笑むエーベルトを見上げて、リディアーヌも微笑んで頷いた。
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