105 / 123
第二章
21-4
しおりを挟むとりあえず今のところ変な動きはないが、それでもまだまだ油断はできない。
しかし、警戒するリディアーヌに、ロキがリラックスした様子で話し掛けてきた。
「あんた、連れは? まさか一人で来たわけじゃねえだろ?」
「……そうね」
「大方、はぐれて迷子になったってとこか?」
「まあ、そんなとこよ」
本当は自分からわざわざはぐれてこんなところに来たわけだが、リディアーヌは素直に頷いて答えた。
「連れは男か」
「そうよ」
「喧嘩でもしたか?」
どうしてわかるのか。
黙ったまま、ピクリと片眉を上げたリディアーヌを見て、ロキが楽しそうに笑った。
「何でわかったのかって、顔だな? そりゃあそんなの、少し考えればわかることさ」
「……そう」
「じゃあ、俺にも少しはチャンスがあるのかな?」
いたずらっぽく笑い掛けてくる。
リディアーヌは、小さく肩をすくめた。
「ないわね」
「つれねえなあ。こんな親切にしてやってんのに」
「それとこれとは別だわ」
そっけなく答えたリディアーヌに、ロキがクツクツと笑う。
どうも、読めない男だ。
「で。喧嘩の原因は?」
「……」
「女か」
「違うわ」
「じゃあ、分かんねえな。でもどうせ、くだらねえ理由だろ」
「くだらなくなんかないわよ!」
「ふーん? じゃあ、言ってみろよ。くだらないかどうか、判断してやるぜ」
そう言って、ニヤニヤと笑う。
溜息を吐いたリディアーヌは、ロキの挑発に乗ることにした。
どうせ話した所で、ロキに会うことは二度とないのだ。
それに、気詰まりなまま歩くよりかは、こうやって話していた方がいい。
「……聞いても、馬鹿にしないでよ?」
「わかった」
「……ベルは、私のこと、好きっていうわけじゃないんだわ」
言葉にした途端、胸が軋む。
苦しそうに顔を曇らせたリディアーヌを、いつの間にか隣に来ていたロキが、ちらりと見てきたのがわかった。
3
お気に入りに追加
751
あなたにおすすめの小説

王太子の愚行
よーこ
恋愛
学園に入学してきたばかりの男爵令嬢がいる。
彼女は何人もの高位貴族子息たちを誑かし、手玉にとっているという。
婚約者を男爵令嬢に奪われた伯爵令嬢から相談を受けた公爵令嬢アリアンヌは、このまま放ってはおけないと自分の婚約者である王太子に男爵令嬢のことを相談することにした。
さて、男爵令嬢をどうするか。
王太子の判断は?

初めから離婚ありきの結婚ですよ
ひとみん
恋愛
シュルファ国の王女でもあった、私ベアトリス・シュルファが、ほぼ脅迫同然でアルンゼン国王に嫁いできたのが、半年前。
嫁いできたは良いが、宰相を筆頭に嫌がらせされるものの、やられっぱなしではないのが、私。
ようやく入手した離縁届を手に、反撃を開始するわよ!
ご都合主義のザル設定ですが、どうぞ寛大なお心でお読み下さいマセ。
私のドレスを奪った異母妹に、もう大事なものは奪わせない
文野多咲
恋愛
優月(ゆづき)が自宅屋敷に帰ると、異母妹が優月のウェディングドレスを試着していた。その日縫い上がったばかりで、優月もまだ袖を通していなかった。
使用人たちが「まるで、異母妹のためにあつらえたドレスのよう」と褒め称えており、優月の婚約者まで「異母妹の方が似合う」と褒めている。
優月が異母妹に「どうして勝手に着たの?」と訊けば「ちょっと着てみただけよ」と言う。
婚約者は「異母妹なんだから、ちょっとくらいいじゃないか」と言う。
「ちょっとじゃないわ。私はドレスを盗られたも同じよ!」と言えば、父の後妻は「悪気があったわけじゃないのに、心が狭い」と優月の頬をぶった。
優月は父親に婚約解消を願い出た。婚約者は父親が決めた相手で、優月にはもう彼を信頼できない。
父親に事情を説明すると、「大げさだなあ」と取り合わず、「優月は異母妹に嫉妬しているだけだ、婚約者には異母妹を褒めないように言っておく」と言われる。
嫉妬じゃないのに、どうしてわかってくれないの?
優月は父親をも信頼できなくなる。
婚約者は優月を手に入れるために、優月を襲おうとした。絶体絶命の優月の前に現れたのは、叔父だった。

アルバートの屈辱
プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。
『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

出生の秘密は墓場まで
しゃーりん
恋愛
20歳で公爵になったエスメラルダには13歳離れた弟ザフィーロがいる。
だが実はザフィーロはエスメラルダが産んだ子。この事実を知っている者は墓場まで口を噤むことになっている。
ザフィーロに跡を継がせるつもりだったが、特殊な性癖があるのではないかという恐れから、もう一人子供を産むためにエスメラルダは25歳で結婚する。
3年後、出産したばかりのエスメラルダに自分の出生についてザフィーロが確認するというお話です。

白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。

私が、良いと言ってくれるので結婚します
あべ鈴峰
恋愛
幼馴染のクリスと比較されて悲しい思いをしていたロアンヌだったが、突然現れたレグール様のプロポーズに 初対面なのに結婚を決意する。
しかし、その事を良く思わないクリスが・・。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる