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第二章
21-2
しおりを挟む「ヒューウっ! 凄え上玉だな!?」
「あんた、貴族のお忍びか何かか?」
「それにしちゃあ、やけに肝が据わってんな?」
相手は大人の男3人だが、素早く状況を把握したリディアーヌは、落ち着いて声を出した。
「どいて下さるかしら?」
にっこりと笑い、場を圧するように良く通る声で話し掛ける。
リディアーヌの余裕の態度に、一瞬男達が気圧されたように一歩下がった。
しかし、すぐに数で勝っていること思い出したのだろう、互いに顔を見合わせた後で、再びニヤニヤとした笑いを浮かべてリディアーヌに近付いてきた。
「……あんた、凄えな。どんだけ肝っ玉が太いんだよ?」
「それとも、世間知らずなだけか?」
「それにしても、本当、良い女だな」
男達は舌舐めずりせんばかりの様子だ。
リディアーヌは覚悟を決めた。
幸いここなら、周りに気付かれることなく男達を倒すことが出来るだろう。
先手必勝と、腰を落とし、後ろ足で踏み切ろうとしたその瞬間、男たちの背後からやってきた人物が声を掛けてきた為に、リディアーヌは寸でのところで動きを止めた。
「おいおい。その女は俺の獲物だぜ?」
「ロ、ロキ!?」
男達が慌てたように振り返る。
気勢を削がれたリディアーヌだったが、油断なく体勢を整え、再び警戒した。
「……でもよ、ロキ……」
「あんだよ? 文句あんのか?」
「い、いや……、そいうわけじゃ……」
どう見ても、ロキと呼ばれた男は男達よりも歳下のはずだが、どうやら男たちは頭が上がらないらしい。
20代前半位のその男は、サラリとした指通りの良さそうな栗色の髪に、スッと鼻筋の通った整った顔立ちをしている。細身の体だが、しなやかに筋肉がついていることは、服の上からもわかる。
何らかの体術を会得した者特有の雰囲気だ。
顔を見合わせた後で、男たちは諦めたようにその場を去って行った。
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