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第二章
21-1
しおりを挟むエーベルトのもとを離れたリディアーヌは、とにかく一人になりたくて、人ごみに紛れて路地裏へと抜けた。
今はエーベルトとは一緒に居たくない。
見つかりたくない一心で、狭い路地裏を闇雲に走る。
気付いた時には、リディアーヌはすっかり道に迷っていた。
(……ここ、どこかしら……)
兄に連れられて、何度かお忍びで町に来たことはあるが、下町のこの辺りは初めてだ。
それに薄暗いこの通りは、一見して治安が悪いことがわかる。
誰かに道を聞きたくとも、昼間だというのに酔っ払った男や、ガラの悪そうな連中ばかりだ。
リディアーヌは、自分が場違いな場所に来てしまったことに気が付いた。
ただ幸いなことに、リディアーヌの方向感覚はしっかりしている。
太陽の位置と、自分の来た方向から、大体の場所はわかっている。それに大概こういう道は、大通りに抜けられるようにできているはずだ。
最悪、リディアーヌは魔力持ちであるため、伝書魔法か何かでアンヌ達に場所を知らせればいいだろう。
開き直ったリディアーヌは、とりあえず今来た道を戻ることにした。
それにしても、先程からやたらと視線を感じる。
ひやかすように口笛を吹かれたり、ニヤニヤと笑いながら卑猥な言葉を掛けられるが、毅然とした態度で無視をして先を急ぐ。
こういう手合いは、隙を見せたらいけないのだ。
丹田に力を込め、全身に気を張り巡らして、油断なく歩く。
何本目かの路地の角を曲がったリディアーヌは、しかしその先が行き止まりになっていることに気が付いて、ため息を吐いた。
「おい、姉ちゃん。こんなとこでお散歩かい?」
「へへ、ちいっとばかし、俺達に付き合ってくれよ?」
尾けられていることには気が付いていた。
焦る様子もなく、泰然と振り返ったリディアーヌを見て、男たちが驚いた様に目を見開いた。
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