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第二章
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しおりを挟む「……一応お嬢様も、お兄様のトール様に連れられて何度かお忍びで町にいらしたことはあるので、大体の位置関係はわかっていらっしゃると思いますが……」
真青になりながらも、アンヌの眼は鋭く辺りを見回している。
武門のニヴルヘイム侯爵家でリディアーヌの側仕えをしていたアンヌは、侍女でありながらかなりの手練れだ。ニヴルヘイム侯爵家の侍女、侍従は、アンヌのようにほとんどが体技を習得した手練れの人間ばかりだ。
どうでもいいが、毎朝の彼等の訓練風景は、ニヴルヘイム侯爵家の名物でもある。
リディアーヌの輿入れとともにアルシュガルド公爵家にやってきたアンヌは、今は毎朝クロードと訓練をしているらしい。そんなアンヌに、我が家の侍女、侍従で逆らうものはいない。
三方に分かれて、隈なくリディアーヌを探す。
次第に焦りが募るエーベルトだったが、そんな時、声を掛けられて振り向くと、そこには先程会ったノートンが居た。
「ベルト、どうしたんだ?」
「ノートン……」
「あれ? さっきの美人の奥さんは? 一緒じゃないのか?」
「……はぐれてしまって……」
エーベルトから事情を聞いたノートンが、心配そうに眉を顰めた。
町に不慣れなリディアーヌを心配してくれているのだろう。この青年は、気のいい人間なのだ。
「そりゃあ心配だな。この辺りは変な連中もいることだし。……よしっ! 他の奴等にも言って、一緒に探してやるよ!」
「助かる! ありがとう!」
「おう! 任せとけ!」
下町に詳しい彼等が一緒に探してくれれば、百人力だ。
お礼を言ったエーベルトに、ノートンがニカッと笑った。
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