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第二章
20-3
しおりを挟む咄嗟にリディアーヌをひき止めようと腕を伸ばしたエーベルトだったが、それはするりと躱されてしまった。
そのまますぐに人ごみに紛れて、リディアーヌの姿が見えなくなる。
エーベルトは慌てた。
というか、何故リディアーヌの機嫌がいきなり悪くなったのかがわからない。
やはり、先程女の子達に囲まれたのが嫌だったのだろうか。
とはいっても、夜会などであんな風に女の子に騒がれるのはいつものことだし、第一さして親しくもない子達だ。
名前すら碌に知らないが、初めて一緒にお忍びで町に来たリディアーヌにしてみたら、嫌だったのかもしれない。
必死になってリディアーヌを追い掛けるも、すっかり見失ってしまってどこに行ったのか分からない。
帰る、と言っていたが、ここは下町だ。辻馬車を拾おうにも、もっと町の中心まで出なくてなならない。
初めてここ訪れたリディアーヌでは分からないだろう。
それに何より、路地裏などに迷い込んでしまったら非常にまずい。
市から外れた路地裏は治安の悪い場所なのだ。
護身術を叩きこまれているとはいえ、それでもリディアーヌは女性だ。複数人でかかってこられたら、ひとたまりもないだろう。
人攫いだっている。パッと見、裕福な商家のお嬢さんに見えるリディアーヌは、格好の的だろう。
冷や汗を掻く思いで探すも、一向に見つからない。
一応護衛の為に一緒に来ていたアンヌとクロードに至っては、真青な顔になっている。
どうやら彼等が一瞬目を離したタイミングで、リディアーヌが居なくなったらしい。しかし、この人ごみの中では、それも仕方がないだろう。
それに、何といっても様々な訓練を受けているリディアーヌがその気になれば、彼等を巻くことなど容易いことだ。
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