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第二章
20-2
しおりを挟むしかし、エーベルトはいったいどうなのか。
未だ、好きの一言も聞けていない。
窺うように隣を見上げると、そこには苦笑するエーベルトが居た。
「はは、相変わらず君達は元気だね」
「ねえベルト! ベルトもリディさんが子供の頃から好きだったの!?」
女の子の一人の質問に、思わずリディアーヌまで固唾を飲んでエーベルトの返答を待ってしまう。
しかし、エーベルトの答えはあっさりしたものだった。
「そうだね。まあ、小さい頃からずっと一緒だしね」
「ふーん、そうなんだ!」
「二人、雰囲気もそっくりだしね!」
「そうね! ベルトが結婚したのは残念だけど、確かにリディさんとはお似合いだわね!」
「本当ね! ベルト、リディさん、おめでとう! お幸せに!」
口々にお祝いを述べ、来た時同様騒々しく去って行く。
すっかり呆気にとられてしまったリディアーヌだったが、内心、酷くがっかりしていた。
「……ねえ、ベル」
「ん? 何だ?」
「……ベルは、どうして私と一緒に居たいと、思ったの?」
思い切って聞いてみる。
「子供の頃からずっと一緒だったから、だから、結婚しようと思ったの?」
実はリディアーヌは、先程のエーベルトの返答に傷ついていた。
あの言い方では、まるで惰性で一緒になったかのような言い方ではないか。
リディアーヌは、どうしてもエーベルトの口からハッキリと気持ちを聞きたかった。
「ベルは私のことを、どう、思ってるの?」
「はあ!? それこそ今更だろ!? そりゃあ、大事に思ってるに決まってるじゃないか!?」
エーベルトは、呆れたような顔だ。
何を言ってるんだとばかりの口調に、リディアーヌは何だか辛くなってきてしまった。
「……大事って、それは“妻”だから?」
「それはそうだろ」
「そう……」
それは、リディアーヌが好きだから、ではなくて、妻だから大事ということなのか。
そう思った途端、リディアーヌの胸が軋んだ。
苦しくなったリディアーヌが、スッと組んでいた腕をほどくと、エーベルトが慌てたようにリディアーヌの顔を覗きこんできた。
「え!? リディ!?」
「…………私、帰る」
「は!? ちょっ、リディっ!!」
慌てて引き止めようとしたしたエーベルトの腕をするりと躱して、リディアーヌは人ごみに紛れてその場を離れた。
胸が苦しくてたまらなかった。
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