さくらんぼの恋

碧 貴子

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第二章

20-1

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「やだっ! 本当にベルトが女の子と一緒に居る!!」
「キャーっ!! うそっ!! ショック!!」
「えー!? ちょっと、本当に結婚しちゃったの!?」

 姦しく騒ぎ立てられて、リディアーヌは呆気にとられてしまった。
 どうやら先程会ったノートンが、彼女達にエーベルトとリディアーヌの話をしたらしい。
 本気でエーベルトが結婚したことを残念がっているらしいその様子に、リディアーヌの一旦上向いた気持ちが、すぐにまた下がってしまった。

「それにしても、ノートンが言ってた通り、本当に綺麗な子ね!」
「本当!! 見て、肌がすっごく綺麗!! どこの化粧品を使ってるのかしら!?」
「ねえ! あなた、名前は!?」
「あ、リ、リディよ」
「その様子からして、あなたも良いところのお嬢さんってとこ!?」
「そ、そうね……」

 今度は矛先がリディアーヌに向けられる。リディアーヌに興味津々といった様子だ。
 取り囲まれ、矢継ぎ早に質問をされて、リディアーヌはすっかりたじたじとなった。

「で!? ベルトとはどういった関係だったの!?」
「子供の頃からの知り合いなんでしょ!?」
「どうやって結婚を申し込まれたの!?」

 初対面だというのに、庶民の女性は中々に遠慮がない。ぐいぐいとくる勢いが凄い。

「ベ、ベルとは、幼馴染で……」
「キャーっ!! 幼馴染!! いいわねえっ!!」
「じゃあ、子供の頃から結婚の約束をしてたって感じ!?」
「そ、そうね……」
「いいなー!! うらやましい!!」
「幼馴染同士の結婚って、なんかお話にでてきそうよね!!」
「それじゃあ、子供の頃から二人とも好きだったの!?」

 瞳を輝かせ、わくわくとした様子で聞かれて、リディアーヌは困ってしまった。
 好きだ、と意識したのは、つい最近だ。
 まあ今なら、近くに居すぎて気付かなかっただけで、自分は子供の頃からエーベルトが好きだったのだとわかる。
 あれ程エーベルトに張り合って意地になっていたのも、今にして思えば、好きだという気持ちの裏返しだったのだろう。
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