さくらんぼの恋

碧 貴子

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第二章

19-5

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まあ、エーベルトの態度から考えて、きっとエーベルトもリディアーヌのことを好きだと思ってくれてはいると思うが、それでもやはり言葉にしてもらえないとわからない。
 こんなにも毎日体を繋げておきながら、さすがに好きではないなんてことはないと思うが、それでも男性は女性と違って、感情を伴わなくてもそういう行為をすることができるという。
 エーベルトに限っては違うと思いたいが、やけにそういうことをしたがるのは、リディアーヌが好きだからというわけではなくて、肉体的な快楽に溺れているから、という可能性もある。

 子供のころからずっと一緒で側にいることが当然であったため、これまで深く考える機会がなかったが、好きだと認識して以来、リディアーヌはエーベルトの気持ちが気になってしょうがなかった。

「……ふーん。ベルは、モテるのね」
「や、勝手に騒いでるだけだよ。いつもそんなもんだろ?」

 実際、社交界でもエーベルトは女性に人気がある。
 公爵家嫡男という身分もそうだが、文武に秀で、見目の良いエーベルトはモテるのだ。
 この前の夜会でもそうだったが、エーベルトは常に会場の注目の的だ。
 結婚前までは特に意識したことはなかったのだが、最近はなんだかそれが面白くない。

「そう。でも随分と親しいみたいじゃない」
「ノートンとな。それにモテると言ったって、彼女達が騒ぐのは、俺が裕福な商家の息子だと思ってるからだよ。所詮、俺の背後にある肩書で騒いでるに過ぎないさ。……でも、リディは違うだろ?」
 照れているのか、早口にそう言って、顔を逸らす。

 うっすらとエーベルトの耳が赤くなっているのを見て、リディアーヌは一気に嬉しくなった。
 自分でも単純だと思うが、さっきまでの胸がイガイガする感じがなくなっている。

「ねえ。じゃあそれって、私は特別ってこと?」
「は!? 今更何言ってんだよ!? 特別じゃなきゃ、結婚なんてしないだろ!?」

 赤い顔で言われて、ますます嬉しくなってしまう。
 すっかり機嫌が良くなったリディアーヌは、組んだ腕に力を込めて、ぴったりと体を寄せて笑顔になった。
 そんなリディアーヌに、エーベルトもはにかんだような笑みを浮かべて見つめてくる。
 何となくいい雰囲気になった二人だったが、再び声を掛けられたために、甘い空気はすぐに霧散してしまった。
 二人で揃って振り返ると、そこには16、7歳位の女の子達が目を丸くして立っていた。




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