さくらんぼの恋

碧 貴子

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第二章

18-6

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「おいおい、本当だぞ?」
「はいはい」
「や、真面目な話、女性は結婚してからの方が狙われるからな」
 急に真面目な顔になる。

「リディアーヌ嬢はもともと綺麗だったが、結婚してから更に綺麗になったからな。それに、以前はなかった少し危うい感じが、そういう男共には格好の的だろ。まあ、次期公爵夫人に手を出そうなんてやつはそうそういないと思うが、とかく男女のことはわからんからな。後先考えない不埒な輩というのはどこにでもいることだし。……とにかく、変なのにつけ入る隙を与えない位、ガッチリ新妻の心を掴んでおくことだ」
 言いたい事だけ言って、去って行く。
 ひらひらと手を振る王太子の背中を見送って、エーベルトは途端に不安になってきた。

 実際、人妻を狙う不埒な輩は多い。未婚の令嬢は、手を出すと後が厄介だからだ。
 その点人妻は、要はバレなければいいのだと、男女ともに割り切って遊ぶ連中が多いのだ。
 政略結婚が多い貴族間の結婚では、冷えた夫婦生活を埋めるためにそういう火遊びを楽しむ傾向がある。
 さすがにリディアーヌがそういったことをするとは思えないが、彼女にちょっかいを掛けようとする輩が居てもおかしくはない。
 それに最近のリディアーヌは、女性らしい艶と色気が備わり、思わずハッとする程綺麗なのだ。
 今日も会場中の男共が注目していたのを、エーベルトは知っている。
 未来の公爵夫人においそれと手を出す者は居ないだろうが、それでもリスクを冒してでも手に入れたいという思いを抱きかねない程、今のリディアーヌは魅力的だ。
 厄介なことに、手に入りずらいとなればなるほど、躍起になるのが男のさがだ。

 そして何より、自分がリディアーヌを満足させているという自信は、全くない。
 最初の頃に比べれば、それでもましになったとはいえ、まだまだ自分には余裕がない。
 一応前戯ではリディアーヌをいかせられるようになったが、行為そのものではまだだ。
 まあ、女性が中で感じられるようになるには、ある程度の慣れが必要だと聞いていた為、そのうちに、等と思っていたが、もしかしたら自分は悠長だったのかもしれない。
 これは早々に、リディアーヌが身も心も自分から離れられないようにしておかねばならないだろう。
 とはいっても、つい最近まで童貞だった自分には、大分ハードルが高いが。

 これは何とかしなければならないと、真剣に悩むエーベルトだった。



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