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第一章
15-1
しおりを挟む瞼の裏に感じる朝の光に、深い眠りから徐々にリディアーヌの意識が浮上した。
何か非常に温かくて、弾力のあるものに自分の体が包まれている。その温もりと感触が何とも心地よい。
もぞもぞと体を動かして擦り寄ると、ギュッと強く抱きしめられる。
抱きしめられたことでリディアーヌがぼんやり瞼を開けると、目の前に裸の鎖骨があった。
「……え? あ……」
一瞬訳が分からず混乱するも、すぐに昨夜の記憶が戻ってくる。
それと同時に、リディアーヌはじわじわと恥ずかしさが込み上げてきた。
「リディ、起きた?」
「あ、ベ、ベル……。お、おはよう……」
「おはよう」
言いながら、更に抱きしめてくる。どうやらエーベルトは先に起きていたらしい。
おはようと挨拶を交わして、唐突にリディアーヌは、自分たちが結婚して夫婦になったのだということを実感した。
これからは、こうやってエーベルトと毎朝挨拶を交わすのだ。
一緒に寝て、起きて、生活をする、漠然と頭ではわかっていたことが、実際に経験して初めて実感を伴ってくる。
これまでリディアーヌは、結婚については、二人がずっと一緒に居るための形式のようなものとしてしか考えていなかったのだ。どこか、子供の頃から続く関係の、延長線上にあるもののように捉えていたのかもしれない。
しかし、実際夫婦になってみて、それが決して子供の頃と一緒のものではないということに、リディアーヌは気付いたのだった。
今更ながら、自分たちは結ばれて夫婦になったのだという実感が押し寄せてくる。
何だかそのことが気恥ずかしい。
赤くなった顔を見られたくなくて、隠すように胸に埋めると、エーベルトがリディアーヌの髪を優しく撫でてきた。
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