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第一章
13-1
しおりを挟む結婚式まで一カ月を切ったその日、リディアーヌは再び兄嫁の部屋を訪れていた。
先日、エーベルトに忍んで会いに行ったリディアーヌは、一つの決意を固めていた。
結婚初夜は、必ず成功させたい。その為にも、それまでにリディアーヌが出来ることがあるのであればやっておこうと思ったのだ。
さしあたっては、圧倒的に知識不足である自分のこの状況をなんとかせねばならないだろう。
初めての性交は破瓜にともなう痛みがあると聞いてはいたが、まさかあれ程痛いものだとはリディアーヌは知らなかった。それに、自分の体だというにもかかわらず、当の入り口すらわからなかったのだ。
閨事については、基本的な解剖と、夫となる男性に全てを任せればよいとだけしかリディアーヌは教わっていない。
しかし、物馴れた男性であれば全てを任せきりでよいかもしれないが、夫となるエーベルトもリディアーヌと一緒で初めてなのだ。であれば、これはリディアーヌも頑張らねばなるまい。
となれば、ここは経験者にアドバイスを貰うのが一番手っ取り早いだろう。
そういうわけで、こういう時一番頼りになる兄嫁のもとをリディアーヌは訪ねたのだった。
「ふふふ、リディ。今日はどうしたのかしら?」
兄嫁の薄水色の瞳が好奇心を含んでキラキラと輝いている。
人払いをお願いした時点で、きっと何の話か察したのだろう。
「お義姉様。……実は、以前いただいた本の続きに関係することでお聞きしたいのです」
「まあっ! 私でわかるかしら」
明らかにワクワクした顔の兄嫁に、リディアーヌは真剣な顔で続けた。
「初めての性交時、破瓜の痛みはどうやったら軽減できるのですか?」
「…………え?」
リディアーヌの質問に、兄嫁がぽかんとした顔になった。
「え? リディはもう、初めては済ませたんじゃ……」
「いえ、まだです」
そう、アデーレ達の婚約発表の夜に、リディアーヌとエーベルトが結ばれたと皆思っているのだ。
あの後、解いた髪を纏め、エーベルトに手伝ってもらいコルセットを付け直してドレスを着たのだが、やはりアンヌの目は誤魔化せなかった。それでも気付いたのがアンヌだけならまだ良かったのだが、どうやらドレスを着直したことが一目でわかる状態だったらしく、結局皆に二人の間で何かがあったことを知られてしまう結果となったのだ。
そのおかげで翌日、父である侯爵に延々と説教、……というか泣かれて、結婚式までエーベルトに会ってはいけないと言われてしまったのだった。
母はむしろ喜んでいたので良かったのだが、父がどうやら使用人達に言い含めたらしく、どこに行くにも監視付きになってしまい、さすがに表立ってエーベルトに会いに行けるような状況ではなくなってしまったのだ。
そしてエーベルトには、王宮で父と兄が何やらリディアーヌとは結婚式まで会わないようにと約束させたらしい。
そのせいでエーベルトが侯爵家を訪れることもなく、会えない日々が続いていたことに業を煮やしたリディアーヌが、先日公爵家に忍んで会いに行ったのだった。
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