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第一章
12-4
しおりを挟む「それに、俺だって少しは男らしいところをリディに見せたいし、頼って欲しいとも思う」
さすがにこれを言うのは少し気恥ずかしくて、早口になってしまう。
自分でも顔が熱くなっているのがわかるし、顔を逸らせてしまったのも仕方がないだろう。
でもこういう時でなければ言う機会はない。それに多分、自分たちはもっとお互いの気持ちを話さなければならないとエーベルトは思っていた。
意地を張って、またリディアーヌとすれ違ってしまうのは、嫌だ。
珍しく素直な気持ちを吐露するエーベルトに、リディアーヌが驚いた様に目を見開いた。
「そうなの?」
「……そうだよ。……それに、会いに来てくれたのは、嬉しい」
そう言ってリディアーヌを抱き寄せる。
大人しく抱きしめられたリディアーヌの耳が真っ赤になっていることに気付いたエーベルトは、胸が熱くなるのを感じていた。おずおずと抱きしめ返されて、ますます胸が熱くなる。
このまま押し倒してしまいたいという強い思いに駆られたが、エーベルトは何とか耐えて身体を離した。
さすがに今の互いの状況で、不埒な行為をするわけにはいかない。
「それでリディ、どうして今日はここに?」
気を逸らすように、話を変える。
すると、一瞬言い淀んだリディアーヌが頬を染めて視線を逸らせた。
「……別にただ、……会いたかったから……」
照れているのだろう、俯いてボソボソとそう言うリディーヌの耳が真っ赤になっている。
もじもじと靴先で落ち着かなげに絨毯の毛足をいじるその仕草がとてつもなく可愛らしくて、エーベルトは堪らず再びリディアーヌを抱きしめた。
というか、いったい彼女はこんなに可愛かっただろうか。
抱きしめ返されて、頭の中が沸騰したようになる。
しかしリディアーヌの次の一言で、エーベルトはかろうじて理性を取り戻した。
「……それに、結婚式までベルと会うなとか、お父様はちょっと横暴だと思うもの」
その言葉で、エーベルトの脳裏にニヴルヘイム侯爵の顔がよぎる。
張り付いたような笑みを浮かべながら、射殺さんばかりに瞳を光らせて剣を打ち込んできた侯爵は、あれは絶対本気で殺す気だったんじゃないかと思われるほどだった。
その顔を思い出したエーベルトは、急速に頭が冷えた。
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