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第一章
12-2
しおりを挟むまあ、良く考えればバレないわけがないのだ。
あの後、一応簡単にリディアーヌの髪を纏め、慣れないながらにコルセットを締め直してドレスを着せたのだが、明らかに一度解いたとわかる髪型と着崩れたドレスに、侯爵家の侍女が気付かないわけがない。というか、誰が見ても一見してすぐにわかる状態だったらしい。
そういうわけで、溺愛する一人娘に手を出されたことを知ったニヴルヘイム侯爵が、結婚式までエーベルトに会うことをリディアーヌに禁じたのだ。
更には夜会の翌日、王宮で待ち伏せていた侯爵とリディアーヌの兄にその場で拉致されたエーベルトは、鍛練と称して足腰が立たなくなるまで八つ当たりという訓練に付き合わされたのだった。まあ、大概であればエーベルトに敵う者はいないのだが、さすがに筋肉馬鹿2人の相手はきつい。しかも侯爵はエーベルトの剣の師でもある。それでも色々と後ろめたいエーベルトが文句も言わず侯爵達の剣の相手を務めるうちに、どうやら彼等の気もおさまったらしいので良かったのだが。
ただ幸いというか、既成事実があったと思われたおかげで、二人の結婚式は延期されることなく、予定通りリディアーヌの誕生日に行われることが確定した。
さらにはリディアーヌを王太子妃にという声も沈静化したことに、エーベルトはとりあえずホッとしていた。
ちなみにエーベルトの両親である公爵夫妻は、今回のことを聞いてよくやったと小躍りして喜んでいる。
なので、結果的に良かったといえば良かったのだが、さすがに会えないのは辛い。
何より失敗したまま、というのが精神上よろしくない。しかも、今では触れ合う喜びと快感を知ってしまっている。知る以前はそれ程でもなかった欲求が、今では狂おしい程だ。
窓の外の灰色の景色を眺めて、エーベルトは再び重苦しいため息を吐いた。
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