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第一章
11-6
しおりを挟む「……ご、ごめん……」
「え……?」
申し訳なさそうに謝られて、思わず戸惑ってしまう。
何が起こったのかわからないまま見つめるリディアーヌに、無言で体を起こしたエーベルトが、手をかざして浄化魔法を掛けた。魔力持ちのエーベルトは簡単な魔法が使えるのだ。ちなみにリディアーヌも魔力持ちだ。
そのままがっくりと肩を落として座り込んでしまう。
その様子を見ている内に、リディアーヌは徐々に何が起きたのかを理解し始めた。
先程体にかかった温かい液体がきっと子種だったのだろう。つまり、リディアーヌの中に入る前に出てしまったわけだ。
でもそれはエーベルトの責任ではない。自分が痛みを我慢できずに動いてしまったのがいけないのだ。
途端にリディアーヌは申し訳なくなってきてしまった。
「……ベル、ごめんなさい」
シーツを手繰り寄せて、前を隠しながら体を起こす。
そっと腕に手を添えると、エーベルトがリディアーヌを抱き寄せてきた。
「や、リディは悪くないよ」
「……だ、だって、私が動いたから……」
「違う。……俺が、堪え性がないから……」
辛そうに言われて、リディアーヌは胸が苦しくなってしまった。
エーベルトがこんなに責任を感じる必要はないのだ。それに、一度や二度の失敗が何だというのだ。
お互い初めてなのだから、うまくいかなくても当然だろう。
そう思い直したリディアーヌは、腕に力を込めてエーベルトをギュッと抱きしめた。
「……ベル、お互い謝るのはやめましょ?」
「しかし……」
「だって私達、お互い初めてなんだもの。うまくいかなくてもしょうがないわよ」
「リディ……」
「それに、もう一度やりなおせばいいだけじゃない」
「……そ、そうか。……そうだな」
ギュッと抱きしめ返されて、リディアーヌはホッとしてしまった。
どうやらエーベルトも気を取り直したらしい。
それに、今日上手くいかなかったからといっても、また別に日にチャレンジすればいいだけの話だ。
「……じゃあ、もう一度いいか?」
しかしそのまま押し倒されそうになって、リディアーヌは慌てて身体を離した。
さすがに今からもう一度やるには、ちょっと時間がないだろう。そろそろ戻らねば、付き人のアンヌ達が自分達を探しに来てしまう。
それを伝えると、非常に残念そうな顔になったエーベルトが渋々といった様子で頷いた。
とりあえず、当初の予定通り明後日に公爵家の別邸で改めてもう一度、ということでリディアーヌはエーベルトと約束したのだった。
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