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第一章
10-1
しおりを挟むその日、リディアーヌはエーベルトと共にダンドゥール侯爵家を訪れていた。
今日はリディアーヌの親友アデーレと、エーベルトの友人レイノルドの婚約発表の夜会なのだ。
実は少し前に、アデーレの思い人がレイノルドであり、婚約をするという旨を聞かされていたのだが、ちょうどその話を聞いた時はエーベルトと色々あった時期であったため、リディアーヌはそちらに気を回す余裕がなかったのだった。
それにアデーレとレイノルドは、どこからどう見てもお似合いの二人だ。
二人が婚約すると知って、リディアーヌは素直に嬉しかった。
非常に幸せそうな二人の姿に、思わず笑みがこぼれる。
エーベルトと共にお祝いを述べたリディアーヌに、アデーレがふんわりと嬉しそうな笑顔を向けた。
「ふふふ。実は、リディとエーベルト様のおかげなの」
「え? それは……?」
戸惑うリディアーヌとエーベルトに、アデーレが笑みを深めた。
アデーレの隣のレイノルドも、楽しそうに笑っている。
「ほら、リディがやたらとエーベルト様と私をくっつけようとしていた時があったでしょ? お二人とも素直じゃないから色々明後日の方向に考えが行ってしまわれてたんだと思うけど、そのことをレイノルド様に相談したのが切っ掛けなの」
「私も、ベルに何度言ってもわかってもらえなくて苦労しましたからね。本当、色んな意味でお二人は似た者同士だと思いますよ? や、お似合いという意味ですがね」
婚約破棄の為に、お互いが恋人を作ろうとしていた時のことを言っているのだろう。
当時の自分の間抜けさを思い出して、リディアーヌは恥ずかしくなってしまった。
今思えば、レイノルドのことが好きだというのも、ただ単に好ましいというだけで、本当の意味で好きだったわけではないのだ。実は当時も薄々そのことに気付いていたのだが、敢えて気付かないふりをしていたのだ。結局はエーベルトに対する当てつけでしかなかったのだろう。
「ところでエーベルト様、リディを少しお借りしても?」
「あ、ええ。もちろんです」
戸惑いつつも笑顔で返事をしたエーベルトに微笑みを向けてから、アデーレがリディアーヌの手を取って会場の隅まで連れて行った。ここなら人目を気にせず二人で話ができるだろう。
「ふふふ、リディ。何か私に言うことがあるんじゃなくて?」
「え?」
意味深に微笑まれて戸惑ってしまう。
婚約のお祝いは伝えたし、まだ何か言うべきことがあっただろうかとリディアーヌが考えていると、アデーレがピッタリと体を寄せて見つめてきた。
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