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第一章
9-5
しおりを挟む「……あと、指を入れたくらいで純潔は散らないから」
「で、でもっ! 膜ってっ!」
「指一本くらいじゃ、破れない。だから安心していい、君はまだ純潔だ」
安心させるよう、はっきりという。
しかし、未だそのことには納得できないのか、リディアーヌが瞳を曇らせて眉を寄せた。
「純潔じゃないわ……」
「や、だから……」
「だって、指を受け入れてしまったもの」
辛そうに呟かれて、エーベルトは罪悪感に襲われた。
確かに、処女膜のあるなしではなく秘所に何かを受け入れるという観点からすると、完璧な純潔とは言えないのかもしれない。侯爵令嬢として徹底した淑女教育を受けてきたリディアーヌにしてみれば、そんなところに触れられたということだけで汚れてしまったと思うのだろう。
「本来そこは、男性器を入れるところで、指を入れるところじゃないのよ? 習わなかったの?」
「いや、リディそれは……」
「そういうとこに指を入れるだなんて変態的な行為は、そういう性的なことを生業にしているような女性にするようなことよ? ……それを、あなたは私にしたのよ……」
「や、それは違うぞ!」
エーベルトはびっくりしてしまった。
いったいどこをどう解釈したらそんな考えになるのだ。というか、行為前に女性の体を解すために指を入れるということをリディアーヌは知らないのか。そもそも指を入れるくらい、誰でもやっていることなのではないのか。
慌ててその説明をしようとしたが、すっかり自分は弄ばれたのだと思い込んで、落ち込んでいるリディアーヌの耳には届かなかった。
「……ベルは、私のことはそういう風に見ていたのね……」
「違う!! そんなことない!!」
「じゃあどうして、普通にしなかったの?」
「ふ、普通って何だよ?」
「だから普通の性行為のことよ。指を入れるなんて、普通じゃないでしょう?」
「だからリディ! それは誤解だって!」
「誤解じゃないわよ! 指なんか入れられるくらいだったら、普通に男性器を入れられていたほうがよっぽどましだったわ!」
話を聞こうとしないリディアーヌに困り切っていたエーベルトだったが、リディアーヌの放ったその一言で、ふと魔が差した。
だったら、やってしまったらいいのではないか、と。
リディアーヌもそう言っていることだし、わざわざ我慢することもないんじゃないだろうか。
非常に魅惑的な悪魔のその囁きを受けて、エーベルトは恐る恐るリディアーヌに提案した。
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