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第一章
9-1
しおりを挟むリディアーヌが泣いていることに気付いたエーベルトは、慌ててそれまで壁に押さえつけるようにしていたリディアーヌの体から離れた。
体が解放された途端、その場に崩れ落ちるようにして泣きじゃくるリディアーヌを抱きとめて、エーベルトは自分がやりすぎてしまったことを悟った。
「リ、リディ! ごめん!」
「ううううぅっ! わあああああっ!」
「ごめんっ! 本当にごめんっ!」
気の強いリディアーヌがこんなに泣きじゃくることなど滅多にあることではない。
エーベルトは冷や汗を掻きながら、リディアーヌの背中を撫でてひたすら謝り続けた。
「ごめんっ! 謝って済むことじゃないけど、本当、途中から意識が飛んでしまって……」
キスが余りにも気持ち良すぎて、途中からかなり理性が危うかったのだ。
互いに一緒に居たいと思っているという気持ちを確認したうえでの触れ合いは、かつて経験したことがない程気持ちが良く、蕩けてしまいそうに幸福だった。それとともに、このままリディアーヌを押し倒して本懐を遂げてしまいたいという強い欲求が沸き起こり、理性と欲望のせめぎ合いにどうにかなってしまいそうだった。
それでも、こんなところでリディアーヌの初めてを奪うわけにはいかないという思いで、エーベルトは必死に耐えた。それに何より、先程リディアーヌとキス以上の行為はしないと約束したばかりである。約束したからには守らねばなるまい。
様々な葛藤に必死になって耐えていたところ、そんな時、突然リディアーヌが自分の股間のものを触ったのだ。
既に硬くいきり立ち、今にも爆発しそうなそれをいきなり掴まれて、理性が飛ばないわけがない。
むしろ理性が飛ばない男が居たら教えて欲しいくらいだ。
リディアーヌは自分がしたことをよくわかっていない様子だったが、そんなことはもうどうでもよかった。
この柔らかくて温かい体に己を埋め込みたい、全てを貪りつくしたいという思いに支配されて、気付けばリディアーヌの下着の中に手を差し入れていた。
初めて触れるそこは、想像していたよりも温かく、柔らかくて、そして濡れていた。
リディアーヌも自分と同じように興奮してくれているということが気が遠くなりそうな程嬉しくて、そっと指先で閉じられた蕾に触れると、殆ど抵抗なく指が中に沈み込んでいく。
濡れているとはいえさすがに中は狭くてきつかったが、己の指を柔らかく締め付ける襞の感触に意識が飛びそうな程エーベルトは興奮していた。
そんな時、リディアーヌの体から一気に力が抜け、自分の頬に感じる冷たく濡れた感触で、ようやくリディアーヌが泣いていることに気が付いたのだ。
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