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第一章
7-2
しおりを挟むその日から、リディアーヌは思いもよらない自分の欲求に悩むことになってしまった。
ふとした時に、自分を覗き込んでいたエーベルトの光る青灰色の瞳や、自分を抱きしめていた腕の感触が蘇り、その度に胸の奥が甘く疼くのだ。
それと同時に、エーベルトに会いたい、会ってもう一度キスをしたいという思いに駆られて、そんな自分にリディアーヌは戸惑っていた。しかし、今エーベルトは忙しい時期だ、そうそう会いに行くわけにもいかない。
(そうね! こういう時は、これに限るわ!)
悶々とした思いを抱えて毎日を過ごしていたリディアーヌは、その日は思い立って王宮にある騎士団の訓練場を訪れていた。
そう、気持ちがもやもやするときは、体を動かすに限る。
長い髪を一つに纏めてズボン姿の動き易い格好になったリディアーヌは、自分の得物であるレイピアを片手に、訓練場の片隅で騎士に交じって訓練を始めたのだった。
ニヴルヘイム侯爵家は、騎士団を取り纏めて国の国防を担っている。
その為ニヴルヘイム家の人間は、皆幼い頃から騎士並みの訓練を受けてひとかどの武人に育てられる。女であるリディアーヌも例外でなく、子供の頃から王宮の騎士団に出入りして、護身術や剣の鍛練を積んできていた。
一通り全ての武器の扱いを学んでいるが、リディアーヌの得意とする武器はレイピアだ。どうしても男に比べて体力や腕力が劣る自分は、身の軽さを活かした素早い身のこなしと剣の技と鋭さで勝負するしかない。そうなると剣としては細身で比較的軽いレイピアが、一番リディアーヌに合っているのだ。
軽く汗を掻くまで素振りを終えて一息入れていると、それまで遠巻きにリディアーヌを見ていた騎士の一人が側までやってきた。
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