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第一章
6-5
しおりを挟む「……本当に、いいのか?」
「ええ。じゃなかったら言わないわ」
「そうか……」
赤い顔のまま咳払いしたエーベルトが、覚悟を決めたようにリディアーヌに向き合った。
頬に手を添えられて、途端にリディアーヌはドキドキしてきた。少し伏せられた青灰色の瞳がリディアーヌの口元を見つめている。
そっと目を閉じると、唇に柔らかい感触があり、得もいわれぬ甘い感覚が広がった。
いつもはそこで終わりなのだが、今日はこの先があるのだ。
期待に高鳴る胸が、ぬるりと唇を舐められて、鼓動が一気に跳ね上がった。
驚いて開いた口の隙間からすかさず舌が差し込まれる。固まって縮こまっていた舌に触れられた瞬間、リディアーヌは頭が痺れるような快感を感じた。
最初は遠慮がちだった舌の動きが、すぐに大胆なものに変わる。撫でられ、擽るように絡められて、リディアーヌの口から甘い声が漏れた。
「……んっ」
舌が絡まり合う度、ぞくぞくするような快感が背筋を走る。
いつの間にか後ろに回された手に頭を預けて、リディアーヌは気付いたら自らも舌を絡めて夢中になって吸い合っていた。
互いに深く口付け合っているその時間は非常に幸せで、今まで感じたことのない充足感で心が満たされていく。いつまでもそのままでいたいと縋り付くようにエーベルトの服を掴むと、それまでリディアーヌの腕を掴んでいたエーベルトの手がすっと前に回されて、リディアーヌの胸のふくらみに触れた。
その時、部屋の扉をノックする音が響き渡り、二人はビクッとして咄嗟に離れた。
考える間もなく一瞬で互いに反対方向の部屋の隅へと移動する。
咳払いをしてエーベルトが応えをすると同時に、公爵家のメイドがお茶の準備をしに部屋へと入ってくる。
赤く上気した顔を隠すように、リディアーヌはメイドたちに背を向けて無心になって窓の外を見つめた。
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