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第一章
5-3
しおりを挟む15の歳に貴族男子の性教育の慣習として、とある貴族の未亡人のもとに父親に連れて行かれたが、エーベルトは酷い嫌悪感を覚えて全くその気にはなれなかった。
そんなエーベルトに父親は苦笑し、それ以降はそういったところに連れて行かれるようなことはなかったが、さすがにこの歳になれば周りから誘いを受けることは何度もある。やんごとない令嬢から既婚の御婦人まで様々な女性からあからさまなお誘いを受けたが、そんな誘いに乗ったら後が大変だということもあって、エーベルトは全くその気にはなれなかった。
もちろん男同士でいれば娼館に行かないかと誘われることもあるし行ったこともあるが、金で女を買うという行為に抵抗を感じて、結局飲み食いだけして帰っていたのだ。
そんなエーベルトだったが、リディアーヌという婚約者の存在を周りも知っている為、エーベルトはリディアーヌに操立てしているのだと苦笑されるだけで、特にそれ以上面倒なことにもならずにここまできたのだった。まあ、それで余計に、二人が相思相愛だと噂されることになったのだが。
もちろんエーベルトも年頃の男だしそういった欲求はあるけれども、日々の鍛練や乗馬で発散させてしまえばそれで事足りていたのだ。
しかしあの夜会の一件から、どんなに剣の稽古をしても、馬と共に疲れきるまで走っても、一向に欲求がはれないのだ。
それに何より、さすがにキスひとつまともにできないこの状況はまずい。
そこでエーベルトが色々と自分の気持ちを誤魔化しつつ出した答えが、リディアーヌとキスの練習をするというものだった。
まあ結局、リディアーヌを酷く傷つけてしまい、最終的にただリディアーヌとキスがしたかっただけだと認める羽目になったのだが。
何より、キスがしたくて大人げもなく本気で全力疾走したとは、リディアーヌには絶対言えない。それに、リディアーヌの乗馬の腕前はかなりものだ、こちらが気を抜けばあっという間に抜き去られていただろう。
リディアーヌと湖の畔でキスをしてから、二人の関係が少し変わった。
嫌味を言い合うのはいつものことなのだが、以前ほどそれが気にならなくなったのだ。それに気のせいかもしれないが、嫌味の頻度も減ったように思える。
何より一番変わったのは、あれから時々キスをするようになったことだ。
ただ、完全に二人きりになれる瞬間というものは意外に少なく、お目付け役のアンヌやクロードの目を盗んでの行為なので、キスといっても唇を合わせるだけのものだが、それでもエーベルトは何故か非常に満たされた心持ちになれるのだった。
まあ、物足りないことは否めないが、それ以上のことをしてしまったら自制できる自信が無い。
とりあえずエーベルトは現状に満足していた。
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