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第一章
1-4
しおりを挟む「本当、お嬢様はエーベルト様と仲がよろしゅうございますねえ」
部屋に戻るなり、リディアーヌ付きの侍女アンヌが笑いながら言った。
先程のエーベルトとのお茶の場に、アンヌも一緒に居たのだ。
「ちょっと、アンヌ。あの会話を聞いていて、どこをどうしたらその発言になるのよ?」
「だって、お二人とも息がピッタリじゃございませんか」
ムッとして抗議するリディアーヌを見て、アンヌはクスクス笑っている。
そうサッパリわからないのだが、アンヌもリディアーヌとエーベルトがお似合いだと思っているのだ。こんなにもリディアーヌと一緒に居て、一番リディアーヌを知っているはずのアンヌでさえこれだ。
「息がピッタリも何も、今日だって嫌味ばっかり言って! 本当、嫌な奴!」
「まあ、お二人とも素直じゃございませんからねえ」
「それに! 私は、レイノルド様みたいな優しくて大人な雰囲気の男性の方が好みだもの!」
「ダンドゥール侯爵家の御嫡子様ですよね。そういえば、レイノルド様はその御身分にしては珍しく御婚約者様はいらっしゃらないんですね」
「そうなのよ! あそこの侯爵家は代々恋愛結婚らしくて、それでレイノルド様も慣例通りご結婚相手はご自分でお探しになってらっしゃるのよ!」
その為、レイノルド狙いの令嬢は非常に多い。
侯爵家の嫡子という身分はもちろんのこと、理知的で男らしいその容姿に明晰な頭脳を持ち合わせ、その将来を嘱望されているのだ、モテないわけがない。
ちなみに一応レイノルドと同様エーベルトも将来を嘱望されている若者の一人だ。彼も幼いころから執務に携わり公爵家嫡子として厳しく育てられてきたこともあって、エーベルトは非常に優秀な若者として評価されている。次代の国を支える国の重鎮たる次期公爵として、エーベルトの担う責任は大きい。
「でも、お嬢様にはエーベルト様がいらっしゃるではありませんか」
「何を言ってるのよ。こんなに仲が悪いのに、結婚してうまくいくわけないじゃない」
「そうは思えませんがねえ……」
そう言って溜息を吐くアンヌには、とてもではないがリディアーヌとエーベルトの計画の協力は頼めそうにもない。
(……ま、でも、レイノルド様はベルのお友達だし、アデーレは私の親友だもの。二人で協力すれば、なんとかなるわよね)
さしあたってはアデーレにエーベルトを好きになってもらうよう、リディアーヌが二人を引き合わせればいいわけだ。
レイノルドとリディアーヌに関しても、そこはきっとエーベルトが何とかしてくれるだろう。
となると、俄然次の夜会が楽しみになってきたリディアーヌであった。
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